第二百七十三話 シロちゃんとヒカリさんで治療を行います
三日目は、新たに大部屋に入院した人の治療を行います。
僕もシロちゃんも気合いたっぷりだったのですが、朝食の際にハルカさんからある提案を受けました。
「レオ君、今日は軽症者の治療だから昨日みたいに強力な魔法を使う必要はないでしょう?」
「あっ、はい。一昨日も、そこまでの魔法は使いませんでした」
「できれば、ヒカリに治療の経験をさせたくて。シロちゃんを、ヒカリと一緒に行動させて欲しいのよ」
シロちゃんなら治療はお手の物だし、きっとヒカリさんも良い経験になるよね。
ぴょーん。
「わあっ、ふふ。早速、私の所にシロちゃんがやってきたわ」
シロちゃんは、僕の頭からヒカリさんの頭の上にぴょーんと飛び乗りました。
シロちゃんも、とってもやる気満々だね。
朝食も食べ終えたし、早速治療院に行きます。
「うう、緊張しまふ……」
「大丈夫ですよ。シロちゃんなら治療はバッチリだし、大丈夫ですかと話をしてあげるほうが大切よ」
「ニコリとしてあげるのが、患者にとっても良い事です。私達のどちらかが、ヒカリ様につきますわ」
あっ、ヒカリさんは緊張しちゃって思わず噛んじゃったよ。
でも、フレアさんとミシャさんがついてくれるみたいだし、きっと大丈夫だよね。
という事で、今日の治療開始です。
ぴかー。
「はい、治療が終わりました。腕は痛くないですか?」
「おお、凄いぞ。全く痛くないぞ」
最初は僕が治療をして、どんなふうにしているのかをヒカリさんに見てもらいます。
「こんな感じで、話をしながら治療をしていきます。ニコニコ顔の方が、安心してくれますよ」
「や、やってみます!」
ヒカリさんはふんすって気合を入れて、フレアさんと一緒に入院している人の元に向かいました。
治療をするのは、腕を怪我している兵ですね。
「うわあ、とっても痛そうです。直ぐに治療しますね」
「あっ、ああ……」
ヒカリさんは、真剣な表情をして直ぐに治療を始めました。
一方で、兵は目の前に伯爵令嬢が現れてとても驚いています。
ぴかー!
「ち、治療が終わりました。痛いのは、良くなりましたか?」
「す、すげー。全然痛くないぞ。ヒカリ様、ありがとう!」
「わわわ!」
ヒカリさんは兵に恐る恐る治療の成果を聞いていたけど、兵は怪我が治って思わずヒカリさんの手を握りしめていました。
ヒカリさんはいきなりの事でビックリしていたけど、ハルカさんはうんうんと満足そうに頷いていました。
後は、どんどんとやっていけば経験も積めるね。
「じゃあ、この大部屋にいる人はヒカリが担当しましょうね」
「えー! いきなりですか?」
「大丈夫よ。どんどんとやっていきましょうね」
おお、ハルカさんは思っている以上にスパルタですね。
でも、入院している人もニコニコとハルカさんの事を見ているし、何よりもシロちゃんは凄腕の治癒師だから治療はバッチリです。
僕は、別の大部屋に移動して治療をする事にしました。
「ふう、これで終わりですね。風邪を引きやすい季節なので、気をつけて下さいね」
「おやおや、胸がすっかりと良くなったよ。流石は、黒髪の天使様じゃ」
僕が担当した大部屋に入院した人の治療は、このおばあさんで全て終了です。
早速退院手続きをしている人もいて、シスターさんも忙しそうに動いていました。
さてさて、ヒカリさんはどうしているかな?
僕は、ヒカリさんが治療している大部屋に向かいました。
「戻りました。わあ、ヒカリさんとっても頑張っていますね」
「あら、レオ君お帰りなさい。ヒカリも、とても良い表情をしているわ。間違いなく、今日の経験はヒカリの今後に役立つわ」
大部屋に戻ると、とっても嬉しそうなハルカさんが僕を出迎えてくれました。
ハルカさんの視線の先には、一生懸命に入院患者と話をするヒカリさんの姿がありました。
ヒカリさんも緊張が無くなってきたので、積極的に話をしていました。
こうして、昼食前までにヒカリさんは頑張って大部屋の一つの治療を終えました。
「はあ、とっても疲れました。でも、良い経験でしたわ」
僕達は、昼食を食べる為にお屋敷に戻ってきました。
食堂について開口一番、ヒカリさんから本音が聞かれました。
疲れたけど、とっても充実した表情です。
「我が家は男子が生まれなくて、将来はヒカリが婿を取る形になるわ。ディフェンダーズ伯爵領の事をもっと知って貰わないといけないのよ」
「そういう裏事情があったんですね」
「ええ、そうなのよ。幸いにして既にサンダーランド辺境伯様の次男との婚約が決まっているから、その点は安心なのよ」
ヒカリさんは将来のディフェンダーズ伯爵領を背負って立たないといけないから、ハルカさんも色々な事を考えているんだね。
因みに、マシューさんの弟さんは今王都にいるそうで、日々勉強をしているそうです。
マシューさんの弟さんなら、きっと良い人だよね。
「さあ、昼食を食べて休憩したら続きをやるわよ。ヒカリも、もうひと踏ん張りね」
「はい、頑張ります!」
ハルカさんも、上手くヒカリさんをやる気にさせていました。
この分なら、午後の治療もきっと上手くいきそうですね。
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