第二百六十二話 村から街に帰ります
翌朝、僕達は早めに起きてテントをしまいました。
うーん、今日はとっても良い天気ですね。
「さて、また炊き出しを行うわよ。レオ君、食材を出してね」
「肉は良いわよ。昨日のオーク肉の残りがあるわ」
早速という事で、女性陣が炊き出しを作り始めました。
僕も食材を魔法袋から取り出して、フレアさんとミシャさんに渡しました。
朝食が出来るまでの間、僕とシロちゃんはマシューさんに頼まれたお仕事をします。
「よーし、シロちゃん始めようね」
それはポーション作りです。
今日僕達は街に帰るけど、念の為に治療方法があればという事らしいです。
薬草は沢山あるし、僕もシロちゃんも全然問題ありません。
という事で、早速ポーション作りを開始しました。
ぐつぐつぐつ。
「うーん、僕とシロちゃんの二人分のポーション作りの道具があった方が良いね」
水は僕の魔法で作るけど、別に鍋は二つでも問題ないもんね。
僕とシロちゃんは薬草を煮込むベストのタイミングを知っているし、後は冷まして順に瓶に詰めていくだけだもんね。
確かミシャさんの商会にポーション作りの道具があったから、街に帰ったら買っておこう。
そんな事を考えながら、僕はシロちゃんと一緒に出来上がったポーションを瓶に詰めて行きました。
パカパカパカ。
朝食を食べ終えたら、街から馬車が来たよ。
馬車便に荷物を乗せた馬車に、あとはサンダーランド辺境伯家の馬車だよ。
ガチャ。
「ああ、皆大丈夫だったのね」
「チェルシーさん! 何で村に来たんですか?」
「勿論、村の様子を見に来たのよ。百頭以上のオークが現れるなんて、普通じゃありえないわ」
サンダーランド辺境伯家の馬車から降りてきたのは、いつもの綺麗なドレスではなくカッコいい騎士服に身を包んだチェルシーさんでした。
そして、更に馬車から降りてきた人がいました。
「ブラッドリーさんも、この村に来たんですね」
「そうじゃよ。この村は教会があるが今は教会関係者が不在でな、なので定期的に儂が来ていたんじゃよ」
そっか、ブラッドリーさんはたまに近くの村を巡回していると聞いたことがあるけど、こういう村を訪れていたんだね。
それに、オークの襲撃で亡くなった人の葬式もあるし、今日はとても忙しそうです。
僕達は、遺体が安置されている教会の中に入りました。
直ぐにチェルシーさんとブラッドリーさんが、祈りを捧げています。
「この者どもは、村を守り抜いたまさに勇者じゃ。亡くなった者の奮闘がなければレオ君達の到着までオークを食い止める事はできず、もっと多くの死者が出ただろう」
「僕もそう思います。実際に村の門は破られる寸前でしたし、残っていた人も重傷で立つのがやっとでした」
「まさに尊い犠牲じゃ。こうして丁寧に安置されておるし、我々も心を込めて、魂を天に送ってやらなければならない」
ブラッドリーさんは、早速一緒に着ていたシスターさんに葬儀準備の指示を出していました。
遺体を棺に入れたりするのは、村人が率先して行っています。
「今日は村人が主役だから、ドレスなどの豪華な衣装は控えたのよ。それに、調整事項とかやる事がいっぱいあるわ」
「すみません、僕も手伝えれば良かったんですけど……」
「レオ君は一番大変な仕事をしたんだから、気にしなくていいのよ。それに、これは辺境伯家がしないとならない事なのよ」
チェルシーさんは心配いらないわって感じで、僕の頭をポンポンとしてマシューさんの方に向かって行きました。
その間に主に女性冒険者が教会内を綺麗に掃除していたので、僕も雑巾を手にしてお手伝いします。
キュッキュ。
「ふう、綺麗になったね。わあ、シロちゃんあんな高い所も掃除しているよ」
シロちゃんはスライムの特性を生かして、壁や天井も綺麗にしていました。
教会がとっても綺麗になった所で、外で作業していた男性冒険者も教会内に入ってきました。
これから、亡くなった人の葬式が始まります。
「ここに集まった皆様、どうか村を守り抜いた勇者の魂が安らかに天に向かわれる様にお祈り下さいませ」
「うっ、うう……」
ブラッドリーさんが僕達に話しかける中、遺族と思われる人々のすすり泣きが聞こえてきました。
僕達も、目を閉じて手を組んで神に祈ります。
「我が父なる神よ、今神の元に勇者の魂が還ります。どうか、温かく出迎えて下さいませ」
ブラッドリーさんが、祈るような言葉を神様の像に捧げています。
誰もが言葉を発せずに、ただ目を閉じて冥福を祈っています。
僕達がもう少し早く着けばとも思ったけど、多分僕達が早く着いても間に合わなかった可能性が高いのかな。
そんな事も思ったりしました。
「皆の者、共に祈りを捧げて頂き感謝する。きっと、この者達の魂は今頃神の元に向かっているでしょう」
こうして、無事に葬儀は完了しました。
この後は村の墓地に埋葬するそうですが、それは村人の手によって行われるそうです。
「これで、ひとまず落ち着いた。手の空いたものから、順次街に戻ってくれ」
兵も交代部隊が来たので、これで帰るそうです。
僕達はミシャさんの商会の馬車で村に来たので、いつでも帰れます。
と、ここでマシューさんが僕に話しかけてきました。
「レオ君、この数のオークは辺境伯領の冒険者ギルドとはいえ一度に解体出来ないだろう。冒険者ギルドに戻ったら、ギルドマスターと話をしてくれ」
そっか、昨日一頭のオークを解体するだけでも何人もの冒険者で行っていたもんね。
こればっかりは仕方ないかなと思いつつ、僕達は街への帰路につきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます