第三百十九話 あっという間の撃退劇
手分けして男の子の家に潜んでいると、男の子が家に帰ってきたよ。
すると、直ぐに荒海一家の構成員五人が家の前に現れたぞ。
「おい、今日は派手にやったみたいだな。くくく、領内が大騒ぎだったぞ」
お家の玄関からこっそりと外の様子を伺っていたけど、何だか今日の騒ぎの事を喜んでいるみたいだよ。
もうこの時点で、職人さんと守備隊の人の顔に怒りの表情が現れていたよ。
「さて、軍の造船所にもう一通連絡を寄越してやるか。うーん、そうだな。これ以上造船所内を破壊されたくなかったら、黒髪の魔術師の持っている財産を寄越せってな」
「おっ、それはいいな。俺達も大金持ちになれるってわけだな」
今度は、僕の持っているお金を差し出せって言っているよ。
この話には、僕も怒ったよ。
すると、男の子が予想外の行動に出てきたよ。
「もう、僕はこんなことをしたくない! お母さんは、僕の稼いだお金で薬を買うんだ!」
「おい、何を言っているんだ? お前はもう悪事を働いたから、俺達と一緒に行動するしかないんだよ!」
「ガキがいきがるな。少し、痛い目にあわないと分からないみたいだな」
おお、男の子が荒海一家の構成員に立ち向かったよ。
この行動に、職人さんと守備隊の人がうんうんと満足そうに頷いたよ。
そして、みんなでお家の中から出ていきました。
「おい、随分と勝手な事を言っているな。そろそろ、お前たちの方が痛い目に合わないと分からないみたいだな」
「貧民を上手く利用して、自分たちの構成員を増やしていたのか。しかも子ども相手に何とも卑劣な行動だ」
「わわっ」
僕と職人さんと守備隊の人が、男の子三人を守る様に前に出ました。
僕も含めて、全員ぷんぷん怒っていますよ。
「僕のお金は、僕が一生懸命に働いた結果です。あなた達には、少しもお金をあげません!」
「黒髪のガキが、何をいきがっていやがるんだ!」
「どうせお前なんて、本当は大した事がないんだろうが!」
荒海一家の構成員は、多くの職人さんと守備隊の人に囲まれて逃げ場がないのに、何だか強気でいますね。
こっそりと周囲を検索しても僕達を伺っている人はいないし、何でこんなにも強気なんだろうか?
すると、その理由を別の人が教えてくれました。
「もしかして、別隊がいて俺達を挟み撃ちにするって事か? そいつらは、俺とモゾロフによってお休み中だ」
「あっ、だから周囲を調べてもお家にいる人だけだったんですね」
「ふふふ、そういう事だ。いやあ、雑魚だったから手ごたえが全くなかったぞ」
「「「「「なっ!」」」」」
ザンギエフさんとモゾロフさんが、ドヤ顔で荒海一家にニヤリとしていた。
ザンギエフさんとモゾロフさんは、男の子を尾行しつつ隠れていた荒海一家の構成員をノックアウトしていたんだ。
だから、探索で周囲を調べても誰もいなかったんだ。
荒海一家の構成員の表情がどんどんと青くなっていったけど、きっと僕達には関係ないことですね。
「あとね、僕は別の事でも怒っているんだよ。薬って渡していたのが、実は毒だったなんて!」
「「「えっ! 薬が毒だった?」」」
「毒は治療したけど、僕一人では完治できなかったんだ。毒を飲ませていたなんて、僕は許せないよ」
「黒髪の魔術師が治せない程の状態にさせていたんだ。守備隊としても許せる事ではないぞ」
毒の話が出て来て、男の子たちはかなりビックリしちゃったよ。
薬じゃなかったって事は、この事でも荒海一家に騙されていたって事だもんね。
さてさて、もうお話はこの位で良いでしょう。
荒海一家の構成員が滝の様な汗を流しているけど、僕達には関係ない事だもんね。
ぽきぽき、ぽきぽき。
「さて、そろそろお前らもおねんねの時間だな」
「俺達の街で散々暴れてくれたな」
「なあに、殺しはしないさ。守備隊がお前らとお話したいだろうし。まあ、五体満足とはいかないだろうな」
「「「「「ひ、ひいいいい……」」」」」
怒気を隠さない職人さんを見た荒海一家の構成員は、お互いに抱き合って震えています。
反撃するくらいの事はするかと思ったけど、もうそんな勇気はないみたいですね。
シュイーン、ガキン!
「なっ、なんだこの檻は?」
「万が一逃げられない為に、僕達ごとダークケージで囲みました。もうこれで逃走は不可能ですよ」
男の子達を除いたみんなを囲むように、大きなダークケージを発動させました。
さてさて、それでは荒海一家の構成員のお休みタイム発動ですね。
ぽきぽき、ぽきぽき。
ぽきぽき、ぽきぽき。
拳を鳴らして、段々と荒海一家の構成員に近づいていきます。
荒海一家の構成員は尻もちをついて、縮こまって体を守っていました。
でも、そんな事はもう関係ないですね。
「「「おらー! 覚悟しろ!」」」
そして、職人さんと守備隊の人のうっぷんが大爆発しました。
何とも言えない声が、辺りに響きました。
それでも、やり過ぎない辺りは流石ですね。
「「「「「う、うう……」」」」」
「よーし、縄で拘束して守備隊の詰め所に運んで行くぞ!」
「担架は不要だ。担いで行くぞ!」
こうして、ボロボロになった荒海一家の構成員は、縄で拘束されて職人さんに担がれていきました。
五人とも骨折や脱臼もないし打撲だけだから、治療は不要だって。
僕も、この五人の治療は嫌だもんね。
「お、お母さんに渡していた薬が毒だったなんて……」
「もしかしたら、お母さんの調子が悪くなったのも別の毒の影響なのかも」
「その可能性は高いな。それで、母親の命を使ってお前らを操っていたんだ。本当に酷い奴らだ」
「お前らは、何も気にせずにただいまって帰ればいい。ここから先は、大人の出番だ」
「「「はい!」」」
僕もザンギエフさんもモゾロフさんも、今回の件はとっても頭にきていました。
毒を使った事もだけど、ある意味お母さんを人質に取っていた事にもなるもんね。
そして、念の為に守備隊の人が三人のお家を含むスラム街の警備にあたってくれるそうです。
僕とザンギエフさんとモゾロフさんは、男の子がそれぞれのお家に入ったのを確認してから守備隊の詰め所へ歩き始めました。
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