第三百二十一話 少し平穏な朝
そして荒海一家を全滅させた翌朝、僕とシロちゃんとオリガさんは男の子のお家に向かっていました。
オリガさんも、お母さん達の様子を見に行くそうです。
「今日はザンちゃんが宿の当番の日ね。モゾちゃん達は、先に造船所で頑張るのよ。私が責任持って、レオ君を造船所に送るわ」
「「「「イエス、マム!」」」」
宿を出る時、ザンギエフさん達がオリガさんに綺麗な敬礼姿を披露していたっけ。
昨日のオリガさんを見れば、誰だってオリガさんに敬礼したくなっちゃうね。
宿から暫く歩いたら、目的地の男の子のお家に到着です。
「失礼します。宿を経営しておりますオリガと申します。いつもレオ君がお世話になっております」
「いえいえ、こちらこそレオ君にはお世話になりっぱなしで。昨日も治療して貰って、本当に助かりましたわ」
オリガさんは、朝食の支度をしていた男の子のお母さんと和やかに話をしていました。
一晩寝て、だいぶ調子も戻ったみたいですね。
ではでは、僕とシロちゃんの魔法で完治させないとね。
「じゃあ、もう一回回復魔法をかけますね」
「ええ、お願いするわ」
椅子に座った男の子のお母さんに、僕とシロちゃんは魔法をかけました。
シュイン、シュイン、きらー!
「す、凄い。昨日は本気じゃなかったんだ……」
僕とシロちゃんの魔法を見て、男の子はかなりビックリしていました。
でも、今日も全力じゃないんだよね。
さてさて、男の子のお母さんの体調はというと。
「うん、これで完治です」
「わざわざありがとうね。体が生まれ変わったみたいに、とても軽いわ」
無事に完治できて、男の子のお母さんも僕とシロちゃんの頭をニコリとしながら撫でていました。
すると、男の子も何だかもじもじしながらやってきたよ。
「昨日、治療してくれてありがとう。あと、かーちゃんを治療してくれてありがとう」
ちょっとそっぽを向いてぶっきらぼうな言い方だけど、それでも男の子はちゃんとお礼を言ってくれたよ。
オリガさんもニンマリとしながら男の子の頭を撫でていたし、僕とシロちゃんも思わず嬉しくなっちゃったよ。
他の二人の男の子のお母さんも無事に治療できたので、これでほっと一安心です。
男の子達は朝食を食べてから造船所に行くそうなので、僕とオリガさんは一緒に造船所に向かいます。
「お母さんが元気になって、本当に良かったですね。男の子も、とても明るくなりました」
「うん、そうね。やっぱりお母さんが元気になったのが大きいわ。でも、荒海一家の残党もいるかもしれないし、まだ警戒しないといけないわ」
そっか、殆どの荒海一家の構成員は捕まえたけど、まだ残党が残っている可能性もあるんだ。
暫くは警戒を続けないといけないね。
そんな話をしていたら、僕とオリガさんは無事に造船所に到着しました。
造船所に着いたら、何故か入口にモゾロフさんが立っていました。
「おっ、かーちゃんもレオも来たな。所長が話があるっていうから、ふたりとも来てくれだって」
「あらあら、大事そうなお話みたいね。もしかして、建物の入口に停まっている豪華な馬車が関係しているのかしら」
「かーちゃん、流石だよ……」
オリガさんの話を聞いたモゾロフさんは思わず項垂れちゃったけど、僕もシロちゃんも事務所に停まっている大きくて豪華な馬車が絶対に関係していると思ったよ。
中にいる人を待たせちゃいけないので、急いで所長室に向かいました。
ガチャ。
「セルゲイ様、アンジェラ様、お待たせして申し訳ありません」
「いやいや、オリガ殿とレオ君は例の男の子の家族をみてくれたのだ。こちらが礼を言わないとならない」
所長室にいたのは、やっぱりセルゲイさんとアンジェラさんでした。
所長と食堂のおばちゃんも一緒に座っているけど、間違いなく荒海一家の件だね。
という事で、僕たちもソファーに座って話を聞きます。
「まずは皆にお礼を言わないとならない。荒海一家の壊滅に協力頂き、本当に感謝している」
「特に、レオ君とオリガさんのお力はとても大きかったわ。感謝しか言いようがないわ」
「過分なお言葉、ありがとうございます。私たちは街に暮らすものとして、当然の事をしたまでですわ」
今回は職人さん達を始めとする街に住む多くの人が動いてくれたから、荒海一家の壊滅に繋がったんだもんね。
セルゲイさんとアンジェラさんも、この事はきっと良く分かっているだろうね。
「スラム街対策が不十分だったと、今回の件を受けて痛切した。母上とアンジェラと共に、早急にスラム街対策を推し進める事にした」
「被害に遭われた方の保証はもちろんとして、抜本的な改革を進めます。今更ながらで、大変申し訳なく思っておりますわ」
セルゲイさんとアンジェラさんが、少し俯きながらも力強く決意を表してくれたよ。
きっとこの街はもっと良くなると思うし、セルゲイさんとアンジェラさんならきっと出来るとみんなが思っていたよ。
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