第三百五十話 ライサさんが造船場に見学に来ました

 という事で、翌朝さっそくライサさんがセルゲイさんと一緒に造船場にやってきました。

 既に僕が職人さんにライサさんがセルゲイさんの婚約者だって説明しているし、朝一で各所に通知が出されました。

 多くの職人さんが見守る中、大きな馬車が造船場の中に入って来ました。

 そして、セルゲイさんとセルゲイさんに手を引かれながらライサさんが馬車から降りてきました。


「皆待たせて済まない。ブランフォード子爵家のライサだ。私の婚約者になる事が決定した。今日は、造船場を見学してもらう予定だ」

「ブランフォード子爵家のライサですわ。皆さん、よろしくお願いいたします」

「「「うおー、本当に婚約者だ!」」」


 僕が事前に説明しても職人さんはちょっと半信半疑だったけど、実際にライサさんが目の前に現れると物凄く興奮しています。

 中には、涙ぐんでいる人もいますね。


「こうして、領主様に無事に良い人が決まったんだ。少なくとも、シークレア子爵領は暫く安泰って事だよ」

「不幸な事故で前領主様が無くなったけど、今の領主様はとても良い人だしお似合いの人だよ」


 そっか、前にも別の領地で跡継ぎ問題があったけど、こうして無事に婚約が決まって職人さんも嬉しいんだ。

 職人さんにもライサさんを受け入れて貰った所で、さっそくお仕事開始です。


「じゃあ、この木材を切っちゃいますね」

「おう、やってくれ」


 シュイーン、シュパッ。


 僕とシロちゃんは、いつも通りに魔法で木材や鉄板を加工していきます。

 僕が魔法で切断した木材を、職人さんが次々と運び出していきます。


「おーいてて。レオ、ちょっと治してくれないか?」

「あらら、けっこう派手に腕をうっちゃいましたね。直ぐに治療しますね」


 シュイーン、ぴかー。


「ははは、ちょっと張り切り過ぎたわ。サンキューな」


 今日は職人さんも良い所を見せようとして怪我が多いから、僕もシロちゃんも気を付けないと駄目ですね。

 そんな事を思っていたら、ライサさんがビックリした表情で僕の事を見ていました。


「れ、レオ君の魔法は本当に凄いですわ。あっという間に木や鉄を寸分たがわず切り裂き、怪我人も即座に治してしまうなんて。実際にレオ君の魔法を見ると、黒髪の天使様の魔法が如何に凄いか実感しましたわ」

「うーん、僕としては普通にしているだけですよ。それに、本気を出したら地面まで切っちゃいますし、できるだけ最小限の魔力で木材や鉄板を切るようにしているんです」

「微細な魔力制御まで行なっているとは。レオ君は私の想像以上ですわ」


 ライサさんの反応に職人さんもうんうんと同意しているけど、僕もシロちゃんも微細な魔力を扱う良い訓練になっているんだよね。

 だから、この半年で僕もシロちゃんも結構パワーアップしていると思うよ。

 こうしてライサさんは一通り造船場を見学して、その後はお隣の海軍の施設に向かいました。

 職人さんもホッと一息ついたけど、意外なタイミングで再びライサさんが造船場に戻って来ました。


「うーん、とっても美味しいトマトパスタですわ。複数のトマトが使用されておりますわね」

「おっ、若奥様は舌が良いね。このシークレア子爵領は交易も盛んだから、トマトも複数種類使っているんだ」

「シークレア子爵領を経由して、王都にも沢山の品物を送っているんですよね。食物が豊富ってのは良い事ですわ」


 海軍の視察から戻ってくると、ちょうど昼食の時間になったのでライサさんはセルゲイさんと一緒に食堂で昼食を食べる事になりました。

 トマトの味を直ぐに当てる辺り、やっぱり貴族のお嬢様は舌が肥えているんですね。

 僕とシロちゃんは、大好きなトマトパスタを食べながらライサさんと食堂のおばちゃんのやり取りを眺めていました。


「因みに、レオ君も直ぐにトマトパスタの味の違いを当てたよ。ミートパスタも美味しそうに食べていたわ」

「今も、とっても美味しそうにトマトパスタを食べておりますわね。トマトパスタは、黒髪の天使様の大好物って言われておりますわよね」


 あっ、今度は食堂のおばちゃんとライサさんが僕の方を見てニヤニヤとしてきたよ。

 僕は思わず顔を下に向けちゃって、少し頬を赤くしながらトマトパスタを食べる事に集中しました。

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