第三百四十九話 セルゲイさんの婚約者
段々と暑い季節から秋に向かって行く中でも、僕とシロちゃんはどんどんと造船場での作業を進めて行きます。
最近は鉄板を加工する事も増えてきたので、僕もシロちゃんも中々忙しいです。
ダリアさんたちは、宿のお仕事と造船場での食堂のお仕事を半々で行っています。
そんな中、僕は仕事終わりにお屋敷に呼ばれました。
何だろうなと思いつつ、僕とシロちゃんは急いでお風呂に入って着替えてから迎えの馬車に乗り込みました。
因みに、ザンギエフさん達は遠慮をして馬車に同乗しませんでした。
お屋敷に着くと、直ぐに応接室に案内されました。
そして、セルゲイさんとアンジェラさんだけでなく、イレーナさんと初めて会うとっても綺麗な女性がソファーに座っていました。
まずは、セルゲイさんから僕へ封筒を渡してきました。
「レオ君、仕事終わりに急に呼び出してすまんな。実は、フランソワーズ公爵家から返信があった」
「わあ、ありがとうございます。後でじっくり見てみます」
「それが良いだろう。別の用事があるのでな」
フランソワーズ公爵家からわざわざシロちゃん宛の封筒もあったので、僕とシロちゃんはセルゲイさんから受け取った手紙を大事にしまいました。
そして、セルゲイさんがいう別の用事というのは、間違いなく同席している女性の件ですね。
「紹介しよう。私の婚約者になった、ブランフォード子爵家のライサだ。シークレア子爵領がどんな所か、王都からやってきたのだよ。因みに、結婚式は来年の夏前を予定している」
おお、とっても綺麗な女性はせいる芸さんの婚約者なんだね。
薄いグリーンのウェーブのかかったロングヘアで、とっても優しそうな温和な人です。
それに、とってもお胸が大きいですね。
「ライサさん、初めまして。僕はレオで、このスライムはシロちゃんです」
「ブランフォード子爵家のライサです。かの有名な黒髪の天使様にお会いできて、私こそ光栄ですわ」
僕はソファーを立ち上がって、ライサさんと握手をします。
ライサさんはにこやかにシロちゃんとも握手をしてくれて、やっぱり良い人だなって感じました。
「領民向けには、明日私が婚約したと周知する予定だ。だから、レオ君が宿に戻ってライサの事を話しても問題ない。まあ、今回のライサの滞在予定は二週間だけどな」
「えっ! ライサさんがすっとシークレア子爵領にいる訳じゃないんですね」
「結婚式の準備もあるから、ライサは一旦王都に戻る。次にライサがシークレア子爵領にやってくるのは、恐らく結婚式前になる」
ライサさんは、結婚式前で色々忙しいんだ。
こればっかりは仕方ないのかもしれないね。
「滞在期間中、ライサに領内の色々な所を案内する予定だ。さっそく、明日は軍港と造船場を案内する予定だ」
「シークレア子爵領は海軍との繋がりがとっても強いので、ライサさんに案内しないといけないですね」
僕も明日は造船場で働く予定だし、造船場は沢山の人がセルゲイさんとライサさんの婚約を祝福してくれるはずだよ。
それに、シークレア子爵領は良い所だとライサさんに見て貰う必要があるね。
すると、ライサさんが僕にニコニコしながら話しかけてきました。
「こうして、黒髪の天使様を目の前にする事ができるなんて。王都で、レオ君の逸話を数多く聞いておりましたわ」
「僕も、僕の事が王都で色々と噂になっていると聞いたことがあります」
「ええ、そうですわ。特に、フランソワーズ公爵家のご令嬢を颯爽と助けたところなんて、美談として貴族令嬢の間で言われております。こうして小さな冒険者がフランソワーズ公爵家より手紙をやりとりしている事が、クリスティーヌ様との繋がりの深さを示しておりますわ」
わわわ、な、なんだかライサさんがキラキラした目で僕にずずずって顔を近づけてきたよ。
ライサさんのあまりの迫力に、僕もシロちゃんも思わずビックリしちゃったよ。
「その他にも、教会で毒に冒された子どもをあっという間に治療したり、アマード子爵家の先代を治療したりと、これだけでも讃えられるべき逸話ですわ」
その後も、ライサさんは目を輝かせながら僕に色々と質問していました。
そんな僕とライサさんの様子を、シークレア子爵家の皆さんが苦笑しながら見つめていました。
僕とシロちゃんは、宿に戻る頃にはすっかり疲れてしまいました。
因みに宿に帰ってセルゲイさんとライサさんの婚約を話すと、全員とっても驚いていました。
ただ一人、オリガさんだけは何故かセルゲイさんとライサさんの婚約を知っていました。
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