第四百十四話 ブランフォード子爵家の屋敷に寄ります

 フランソワーズ公爵家の屋敷とブランフォード子爵家の屋敷は同じ方向にあるそうなので、このまま一緒に行くことになりました。

 フランソワーズ公爵家の方が、王城に近い位置にあるそうです。


「しかし、今回の盗賊の襲撃はあまりにもピンポイントすぎる。この後の盗賊の尋問結果如何では、少々面倒くさい事になりそうだ」

「もしかして、誰かが裏にいるということですか?」

「ああ、そういう事だ。軍の中でも権力争いはあるし、確かブランフォード子爵の娘はシークレア子爵家に嫁ぐという。そのあたりで、何かあるのかもしれない」


 うーん、ギルバートさんが腕を組んで考えちゃったけど、僕も護衛の人が突然襲われたって言っていたのが気にかかります。

 王都に近いから、比較的治安も良いはずです。

 きっと、軍の幹部が狙われたとあって、色々な捜査が行われるはずです。

 そんな事を考えながら、馬車の窓から王都の様子を眺めます。


「王都は本当に沢山の人が歩いていますね。サンダーランド辺境伯領の何倍もの人です!」

「王都は王国の中で一番人口が多い。沢山のものに溢れていて、各地から大量の荷物が届くぞ」


 市場も沢山のもので溢れていて、とても活気に満ちていました。

 冒険者っぽい姿の人も結構いて、どんな冒険者がいるかとっても楽しみです。

 そして、街に入って暫くしたら貴族の屋敷が建ち並ぶエリアに入りました。

 どの屋敷もそれなりの大きさだけど、庭はそこまで広くないですね。


「王都は沢山の貴族がいるから、その分敷地面積もかぎられる。それでも、かなりの広さを誇っているがな」


 ギルバートさん曰く、特に下級貴族と呼ばれる人たちはそんなに敷地面積は広くないそうです。

 でも、フランソワーズ公爵家は最上位の貴族だよなあって思っちゃいました。

 そして、ブランフォード子爵家の屋敷に到着したので、お茶だけ頂く事になりました。

 僕たちは、応接室に案内されました。

 ライサさんも、直ぐにやってくるそうです。


「改めて、皆さまにお礼を申し上げる。危ない所を救って頂き、誠にかたじけない」

「本当に、ありがとうございました」

「こちらも、良いタイミングで通りかかった。命があって何よりだ」


 いの一番で、ブランフォード子爵夫妻が僕たちにお礼を言ってきました。

 ギルバートさんが受け答えしてくれたので、お話はお任せしましょう。

 ギルバートさんは、馬車の中で気にしていた事を話し始めました。


「ブランフォード卿、やはり今回の盗賊の襲撃はタイミングがよすぎる。何か心当たりはないか?」

「幾つかある。今のところ、娘の結婚に関することかと。シークレア子爵領はとても裕福な領地なので、是非とも嫁にという勢力は複数いる」


 ブランフォード子爵が少し渋い顔をしながら話をしたけど、ライサさんとの関係が一番怪しいんだ。

 ブランフォード子爵夫人も、とても心配そうな表情をしていた。


「調査の結果次第だが、それまではライサ嬢の警護を強化した方が良さそうだな」

「私もその様に思っております。娘は安息日の奉仕作業を楽しみにしておりましたが、命には代えられないでしょう」


 ライサさんの行動が制限されるのは可哀想だけど、こればっかりは仕方ないのかもね。

 ここまで話したところで、応接室にライサさんが入ってきました。


 ガチャ。


「失礼します。皆さま、本当にありがとうございます。お父様、お母様、本当にご無事で何よりです」


 ライサさんは僕たちにペコリとお礼をすると、直ぐに両親の元に駆け寄った。

 きっと話を聞いてビックリしたのだろう、ライサさんの目には涙が浮かんでいました。

 親子の再会の抱擁を、僕たちは暫く見つめていました。


「も、申し訳ありません。目の前に無事な両親がいると知って、つい止まらなくなり……」

「いやいや、ライサ嬢の心配は私たちにもよくわかる。気にする事はない」

「ご配慮頂き、痛み入ります」


 ライサさんは、涙を拭いてからギルバートさんに謝罪していました。

 シークレア子爵領のライサさんはとても明るかったけど、今は子爵令嬢って喋り方ですね。


「私が狙われているのは、何となく感じておりました。ただ、両親が狙われたとなるととても心苦しく……」

「そなたのせいではない。しかし、暫くは身の安全を優先した方が良いだろう」


 ライサさんの表情はとても暗く、ニコニコしている表情しか知らない僕は結構ショックです。

 うーん、何かライサさんが元気になる方法はあるかな?

 あっ、これはどうだろうか。


「ライサさん、今度の安息日の奉仕作業は僕が代わりに出ます。ライサさんの代わりに頑張ります」

「うむ、それなら大丈夫だろう。教会の面々は、レオ君に手を出したらどうなるか良く分かって居るはずだからな。後は、ブランフォード子爵家でレオ君を招いてお茶会ができるように取り計らおう」

「レオ君、フランソワーズ公爵様、本当にありがとうございます」


 ライサさんは再び涙をこぼしていたけど、さっきよりも表情は明るくなっていた。

 これなら、僕も一安心です。

 ライサさんが笑顔になるように、僕も頑張ってお手伝いをしよう。

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