第三百六話 シーフードパスタに大満足です

 今度は、マックスさんが口を開いた。


「荒海一家は、シークレア子爵領のスラム街にも顔が利く。今朝レオ君を襲った盗賊もどきも、スラム街でスカウトされた奴だった」

「やっぱりそうだったんですね。何だか、盗賊らしくないなって思ったんです」

「奴らは、簡単に金が稼げると言われていたらしいな。スカウトも、奴らに前金を渡して信用させていたみたいだ」


 中々手の込んだ事をする犯罪組織なんだ。

 どんな事をするか、分からない人達だなあ。


「なるほど、そこで俺達の出番か。俺達なら、朝から晩までレオを見ることができるな」

「僕の事を、ずっと見れるんですか?」

「おう。うちの家族は、宿を経営している。レオを宿に泊まらせて、行き帰りは交互に一緒にいれば良いな。不審な奴は、親父やお袋が叩き出しているぞ」


 ザンギエフさん達は、冒険者をしながら宿もやっているんだね。

 それにザンギエフさんの話を聞くと、お父さんとお母さんもとっても強そうだ。


「レオ君にお願いしたいのは、教会で行う治療と軍船作りの手伝いだ。できれば、盗賊団が捕まるまでは、薬草採取は控えてほしい」

「分かりました。他の人に迷惑をかけられないですね」

「レオ君は理解が早くて助かる。既に、教会にもこの件を頼んで担当を手配して貰った。明日から早速軍の造船所に行き、安息日前二日間を治療する日に充てよう」


 セルゲイさんが今後の事を話してくれたけど、まずはお願いされたお仕事をしっかりとやろう。


「ザンギエフさん達には、私達からレオ君の護衛依頼をします。もちろん、キチンと依頼料をお支払いしますので」

「アンジェラ様、任せてくれ。どのみち俺等も軍船作りを手伝うし、迷惑を被っている荒海一家を駆逐できるいいチャンスだ」


 アンジェラさんからのお願いに、ザンギエフさんは胸を叩いて応えていた。

 なんだか、色々と迷惑をかけちゃうね。


「迷惑をかけちゃってごめんなさい。こんな事になるなんて、思ってもなかったので」

「がはは、レオは気にするな。そもそも、レオはまだ幼い。大人がキチンとみてやらないとな」


 ザンギエフさんが、僕の頭を少し強めに撫でながらニカって笑っていました。

 皆さん、とっても良い人ばかりですね。


 ぐー。


「あっ……」

「ははは、良い音がしたなあ」

「ふふふ、そうですわね。では、皆さんも昼食にご案内しますわ」


 思わずお腹がなっちゃったので、僕は顔を真っ赤にしてうつむいちゃったよ。

 ザンギエフさんとアンジェラさんだけでなく、他の人も僕を見ながらクスクスと笑っていました。

 ワイアットさんとマックスさん、それにリュナさんは用事があるそうなので、僕とザンギエフさん達が昼食を頂く事になりました。

 みんなで食堂に移動します。

 実は、どんな料理が出てくるのかとっても楽しみにしています。


 ガチャ。


「あら、もう話は終わったのね」


 食堂に着くと、一人の淑女が席に座っていました。

 髪色はロングヘアの金髪で違うけど、お顔はセルゲイさんとアンジェラさんとそっくりだね。


「ふふ、皆さんいらっしゃい。小さなお客様もいるわね」

「初めまして、僕はレオです。このスライムはシロちゃんです」

「あらあら、丁寧な挨拶ありがとうね。私はイレーナ、セルゲイとアンジェラの母親よ。レオ君、よろしくね」


 イレーナさんは、とても物腰の柔らかい人だね。

 温和な笑顔がよく似合う人だよ。


「イレーナ様、昼食を頂く事になりすみません」

「良いのよ。それにしても、あのヤンチャだったザンギエフもすっかり大人になったわね」

「あはは……」


 凄いなあ。

 イレーナさんは、ザンギエフさんを完全に手玉に取っているよ。

 イレーナさんの笑顔に、ザンギエフさんだけでなく他の人もタジタジです。


「お母様に勝てるシークレアの人は、殆ど存在しないよ。でも、みんなに愛されているよ」

「お母様にとって、シークレアの人々はみんな子どもみたいなのよ。だから、強面な人も絶対にかなわないわ」

「あらあら、私だって勝てないものはきっとあるわ。レオ君に迫られたら、私でも勝てないかもよ」


 息子と娘の指摘に、イレーナさんは余裕の笑みを浮かべていた。

 うん、絶対に僕でもイレーナさんには勝てないね。


「お待たせしました」


 お喋りをしていたら、お料理が運ばれてきたよ。

 わあ、とっても良い匂いがするね。


「今日は、カニとエビが入ったトマトパスタよ。レオ君はトマトパスタが大好きって聞いたから、シークレア子爵領の海の幸を加えてみたのよ。ザンギエフ達の分は、大盛りにしてあるわ」


 イレーナさんは、僕の好物を知っていて尚且つアレンジまでしてきたんだ。

 しかも、体の大きなザンギエフさん達の配慮までしているよ。

 まさに、イレーナさんは貴族夫人って感じだね。


「わあ、エビがぷりぷりしているし、カニもとっても美味しいです。トマトソースからもエビとカニの味がします」

「ふふ、レオ君とっても良い笑顔ね。黒髪の天使様も満足してくれて良かったわ」


 トマトパスタなのに、シークレア子爵領の美味しいところがギュッと詰まっているよ。

 シロちゃんも、とっても満足しながら食べているね。 


「こうみると、黒髪の魔術師も年頃の男の子だな」

「ええ、とっても可愛いわね」


 セルゲイさんとアンジェラさんも僕の事を見て微笑んでいるけど、僕は目の前のパスタに夢中です。

 今までの中でもトップクラスに美味しいパスタだったので、あっという間に完食しちゃいました。

 付け合せのサラダも、とっても美味しかったよ。

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