小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~

藤なごみ

第百二十八話 山小屋風の宿に泊まります

 カラカラカラ。


 馬車は、何事もなく街道を進んで行きます。

 天気も良くて風も気持ちよく、絶好の旅日和です。


「しかし、レオ君はやっぱり凄いね。アマード子爵の街の人が、あんなにもレオ君に声をかけてくれるなんて」

「そうそう、私も思わずビックリしちゃったよ。それだけ、レオ君が街の人に愛されていたんだね」


 馬車の中では、ユリアさんとイリアさんが僕に話しかけてくれました。

 僕も、多くの街の人に話しかけられてビックリしていたんだよ。

 でも、それだけ僕も街の人の役に立てたって事だから、何だか嬉しいなあ。

 すると、他の冒険者が僕に話しかけてきました。


「そういえば工房の親方がレオにミスリルのダガーを渡していたが、ミスリル製って事は黙っていた方が良いぞ。まあ、見た目は普通のダガーだから問題ないがな」

「ミスリルってだけで、レオの事を殺してでも奪う馬鹿がいる。まあレオなら負ける事はないが、用心した事はないな」


 うん、確かにゴルゴン男爵の件もあるし、不用意にミスリル製って言わない方が良いね。

 僕も充分気を付けよう。


「あ、そういえば、どのくらいの日程でアマード子爵領からコバルトブルーレイク直轄領に到着しますか?」

「うーん、順調に進めば五日もあれば到着するよ」

「この時期は晴れる事が多いし、たぶん予定通りに進むわ」


 ユリアさんとイリアさんの言葉に、僕は思わずホッとしました。

 セルカーク直轄領からアマード子爵領に行く時も順調にいったから、今度も何事もなく進んで欲しいなあ。

 

「今夜は、確かアマード子爵領内の村に泊まるはずだよ。とってもオシャレな街だったよ」

「そうそう、街道の宿場町だけど山小屋風のペンションが立ち並んでいるの」


 おお、とっても期待が膨らむ情報ですね。

 因みに今日は昼食を食べる村とかが無いので、休憩場所に使用されている街道沿いの開けた場所で昼食を食べます。

 ここは歩きで街道を進んでいる人の為に、テントとかを設営できる場所でもあるんだって。

 僕は、街のパン屋さんで購入したパンを魔法袋から取り出しました。


「モグモグ、特に街道で何も出なかったですね」

「そうね。普段だとツノウサギとか出て来てもおかしくないけど、何にも出てこないね」

「あっ、確か子爵領の兵がこの前訓練を兼ねて街道に出ていたよ。もしかしたら、レオ君が安全に旅が出来る様にしてくれたのかもね」


 確かセルカーク直轄領でも、守備隊の人が街道に現れる動物や魔物を狩っていたっけ。

 あれ?

 僕は動物や魔物を狩った事がないけど、何か違いがあるんだっけ?


「動物はどこにでも生息しているぞ。ツノウサギやオオカミとかもそうだな」

「魔物は森などにある魔力の影響を受けている。最大の違いは、体内に魔石を持っている事だ。体も力も、動物よりも大きいぞ」


 冒険者の人が教えてくれたけど、そんな違いがあったんだね。

 僕も、もうそろそろ狩りの依頼を受けるタイミングかもね。


「確か四日目に通る森で、動物や魔物が出やすいんだよな。この時期は冬眠から目覚めるのもいるから、十分に気をつけないと」


 となると、四日目は本当に厳重警戒なんだね。

 僕も気をつけないと。

 因みに、他の人は固そうなパンに干し肉を食べていました。

 冒険者っぽい食事で、ちょっと憧れなんだよね。

 さて、皆食べ終えたのでまた馬車の旅が再開します。


 カラカラカラ。


「あっ、見えてきた。本当に面白いお家だ!」

「あれが山小屋タイプの宿よ」

「街の雰囲気と合っていて、とっても素敵よね」


 夕方前には、今夜泊まる宿場町に到着です。

 とっても個性的な建物が並んでいて、僕は思わず驚きの声を上げてしまいました。


「じゃあ、また明日朝な」


 冒険者の人達は僕とユリアさんとイリアさんとは別の宿に泊まるそうなので、僕達は手を繋いで山小屋みたいな宿に向かいます。


「いらっしゃい。一泊で良いかい?」

「はい、宜しくお願いします」


 カウンターには、おひげがもじゃもじゃの主人が座っていたよ。

 すると、主人はユリアさんにちょっと困った表情で話しかけてきました。


「悪いが、ダブルベッドの部屋しか空いて無いが、それで良いかい?」

「ええ、問題ないですよ」

「悪いね。食事はこの後食堂で取ってくれや」


 この宿はお風呂がないらしく、希望者はお湯を貰えるそうです。

 でも、僕は生活魔法が使えるので全く問題ありません。

 部屋に案内されたら、早速僕はユリアさんとイリアさんに生活魔法を使いました。


 ぴかー。


「レオ君、ありがとうね。この時期は、濡れたタオルで体を拭いたりしていたのよ」

「レオ君の生活魔法があると、本当に便利よね」


 僕の生活魔法は、とっても喜ばれたみたいですね。

 僕にも生活魔法をかけて、食堂に向かいます。


「あら、可愛らしいお客様ね。いっぱい食べてね」


 皆で食堂に向かうと、ちょっとふくよかなおかみさんが夕食を持ってきてくれました。

 シカ肉を使った焼き肉と、山菜の料理だそうです。


「おお、初めてシカ肉を食べたけど、とっても美味しいですね」

「シカ肉は臭みがないから食べやすいよね」

「レオ君も、いっぱい食べてね」


 僕だけでなく、ユリアさんとイリアさんも大満足の夕食でした。

 初めてのシカ肉だったけど、とっても美味しかったなあ。


「明日も朝早くに出発だよ」

「今夜は、疲れを残さない様に早く寝ましょうね」


 そして、僕はユリアさんとイリアさんに挟まれる形でベッドに入りました。

 とても良い匂いがしたのと疲れもあってか、僕はユリアさんとイリアさんの温もりに包まれてあっという間に寝ちゃいました。

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