第百三十四話 到着した村で怪我人の治療をします

 その後は特に動物や魔物の襲撃などもなく、僕達は夕方前には目的地の村に到着しました。


「わあ、村だけど大きいね」

「ここは、コバルトブルーレイク直轄領に向かう前の村だからね」

「集まっている人も多いし、さっきみたいに守備隊もいるのよ」


 ユリアさんとイリアさんが村について教えてくれたけど、村じゃなくて街みたいな感じだね。

 僕達は、早速冒険者ギルドに向かいます。

 沢山の冒険者がギルドの中にいたけど、僕は最初に卸し担当の所に向かいます。


「おっちゃん、凄い量の獲物があるが大丈夫か?」

「あんだど? 凄い量だ? とりあえず出してみろ」


 冒険者が担当の職員に話しかけたので、とりあえず指定された所に今日の成果を出そう。


 ドサドサドサ。


「はっ? 何だこの量は!」

「今日一日の成果だよ。オオカミやツノウサギはともかくとして、ゴブリンが集団で襲ってきたから参ったよ」


 指定された場所には、大量のオオカミとツノウサギに加えて、百匹近くのゴブリンの耳が置かれました。

 トドメは、ゴブリンジェネラルです。

 職員の叫び声を聞いた多くの冒険者が、ワラワラと集まってきました。


「こりゃたまげた。あんたらには、凄腕の冒険者がいるのか?」

「おう、いるぞ。このレオがそうだ。小さな魔法使いや黒髪の魔導師と聞けば分かるな。魔法二発で、ゴブリンジェネラルが率いる四十匹のゴブリンの群れを倒したぞ。守備隊も確認している」


 ざわざわ。


 あわわ、冒険者が素直に全部話しちゃったから、僕達の周りに集まった人がざわめきだしたよ。


「へえ、こんなに小さいのに凄腕の魔法使いなんだな」

「とっても可愛いわ。本当に黒髪なんだね」

「あれ? 噂にはなかったけど、スライムを連れているぞ」

「本当だ。しかも、珍しいカラースライムだ」


 わ、悪い事は言われていないから、何とかセーフなのかな?

 すると、今度は冒険者ギルドの入り口付近がざわざわとしていたよ。

 何かあったのかな?


「こ、ここに黒髪の天使様がいらっしゃると聞きまして。馬車が襲撃を受けて、怪我人が出ているんです」


 冒険者ギルドに駆け込んで来たのは、教会のシスターさんでした。

 買取関係は冒険者に任せて、僕はユリアさんとイリアさんと一緒にシスターさんの後を追っていきます。


「う、うう……」

「く、くそ……」

「これは酷い怪我ですね。直ぐに治療します」


 案内されたのは教会で、手足に大怪我を追った二人が床に寝かされていました。

 一応ポーションによる治療はしてあるみたいだけど、それでも怪我が治りきっていないみたいだね。

 ここは、回復魔法と聖魔法の合体でやってみよう。

 僕は魔力を溜めると、合体魔法を使いました。


 ぴかー!


「こ、これは。す、凄い!」

「教会内に光が溢れている」


 冒険者ギルドから僕達の後をついてきた人もいたみたいで、教会内に広がる青っぽい回復魔法の光と黄色っぽい聖魔法の光にビックリしているみたいです。

 光が止むと、二人とも傷が治って顔色も良くなっていました。


「ふう、これで大丈夫です。でも、数日は様子を見て下さい」

「こんな大怪我を負った冒険者を治すなんて。ここに、黒髪の天使様を立ち会わせて頂いた神に感謝します」


 治療も上手くいったので、僕は立ち上がろうとしました。


 ふら。


「あれー」


 がし。


「レオ君は、今日魔法の使いすぎよ」

「日中から頑張っていたもんね。ゆっくりと休まないと」


 僕は立ちくらみみたいになっちゃったけど、ユリアさんとイリアさんが咄嗟に腕を掴んでくれました。

 確かに、今日はちょっと頑張りすぎちゃったかもしれないね。

 僕は、ユリアさんとイリアさんと手を繋いで冒険者ギルドに戻っていきました。


「おお、帰ってきたか」

「その様子じゃ、ちょっと疲れているみたいだな」


 冒険者ギルドに戻ると、買取の手続きを終えた冒険者が待っていてくれました。

 ここにいないもう一人が、宿の予約をしてくれているそうです。

 今日も、頑張ったご褒美でちょっと良い宿に泊まります。


「この後、宿に行ったのが帰ってきたら、冒険者を集めて守備隊と話し合いだ」

「まあ、ゴブリン対策の事だろうな」

「それは間違いないですね。そして、守備隊はレオ君の力を必要としています」

「とはいえ、レオ君はまだ幼い子どもです。無理は禁物ですね」


 僕はゴブリン討伐は全然大丈夫だけど、他の人がボクに無理をさせないでと思っているのは嬉しいなあ。

 とはいえ、何とかしないと皆が大変な思いをするもんね。

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