第百四十五話 初めてのお魚料理

「では、私も戻り捜査に加わります」

「うむ、頼んだぞ」


 守備隊長さんは、僕達に挨拶をして残ったもう一人の部下とともに帰って行きました。

 さて、僕はどうしようかな?

 すると、チャーリーさんが、僕に話しかけてきました。


「レオ君、悪いが明日まで屋敷に残ってくれないか? クリスに万が一の事があった時に、傍に居てくれるととても助かる」


 確かに三歳の女の子が毒の影響を受けたとなると、とっても心配するよね。


「レオ君、私達の事は気にしなくて良いわ」

「明日の朝、また顔を出すわ」


 ユリアさんとイリアさんも明日来てくれる事になったので、大丈夫ですね。


「では、本日はここでお世話になります」

「済まないな。宜しく頼むぞ」


 という事で、今日はこの大きな別荘に宿泊する事になりました。


「では、私も冒険者ギルドに戻りますわ。冒険者にポーションの件で、注意喚起を行わないとなりませんわね」


 こうして、ギルドマスターとユリアさんとイリアさんは、冒険者ギルドに帰って行きました。


 ぐー。


「あっ……」

「そうか、もうお昼の時間か。ちょっと待ってなさい」

「はい……」


 玄関で皆を見送ったら、僕のお腹の音を聞いたチャーリーさんが直に昼食の準備を手配してくれました。

 僕はちょっと恥ずかしくて、顔を真っ赤にして俯いちゃったけどね。

 そして僕は、チャーリーさんと共に再び応接室に案内されました。


「しかし、レオ君は幼いのにとても良い魔法使いだ。いや、良い魔法使いに成らざるを得なかったんだな」

「もしかして、僕の出生を知っていますか?」

「軽くな」


 チャーリーさんは、ちょっと哀れむ目で僕の事を見ていました。

 偉い人だから、あの違法な人身売買の件を知っているんだね。


「違法人身売買の件は、王都でも大きな事件になった。違法人身売買に関与が確定した貴族は、かなり厳しい処罰を受けた」

「そうなんですね。幸いにして、僕はこうして元気にやっています」

「それが一番だ。そして、良い魔法使いに育ったのも、周りの人のお陰だな」


 チャーリーさんは、僕の話を聞いてウンウンと頷いています。

 

「レオ君が優秀な魔法使いとはいえ、まだ子どもだから大金をちらつかせてお抱えにしてしまえと考えている馬鹿な貴族もおった。しかし実際に会ってみて分かったが、レオ君は下手な貴族がお抱えに出来るレベルではない。アマード子爵と同じく、背中を支えてやるのが良いだろう」


 僕も、誰かのお抱えになって行動を縛られるのはちょっと嫌だなあ。

 僕はまだ勉強しないといけないし、色々な所に行ってみたいんだよね。


 コンコン。


「失礼します。昼食のご用意ができました」

「おお、そうか。レオ君、昼食にしよう」


 侍従さんが部屋の中に入ってきて、昼食ができたと教えてくれました。

 僕は、どんなメニューなのだろうとちょっとワクワクしています。


「わあ、お魚料理だ!」

「コバルトブルーレイク直轄領と言えば、やっぱり魚料理だろう」


 食堂に並んでいる料理を見てテンションがちょっと上がってしまった僕とシロちゃんを、チャーリーさんが微笑ましく見ていました。

 そして、僕は席に座ってチャーリーさんと一緒に昼食を食べ始めました。


「お魚を初めて食べたけど、旨味が凄くてとっても美味しいです!」

「そうか、それは良かった。遠慮なく食べてくれ」


 僕がニコリとしてチャーリーさんに話しかけると、チャーリーさんもニコリとしてくれました。

 シロちゃんにも小皿に取り分けてあげたけど、とっても美味しそうです。

 僕は、一気に昼食を食べちゃいました。


「お魚って、こんなに美味しいんですね」

「コバルトブルーレイクの魚は旨味が強くて、簡単な料理でも美味いぞ。他の地域の魚よりも美味いな」


 チャーリーさんが機嫌良さそうに話をしてくれたけど、コバルトブルーレイクのお魚だから美味しいんだ。

 僕もシロちゃんも、お魚が好きになっちゃいそうだよ。

 そして、ちょっとまったりしていたら、執事っぽい人が食堂に入ってきました。


「失礼いたします。守備隊から、急ぎの件で連絡が御座いました。代官邸に集まって頂きたいとの事です」

「分かった。恐らく、あの毒が混入していたポーションの件だろう。レオ君、すまんが一緒について来てくれるか?」


 僕は、チャーリーさんの問いかけに頷きました。

 僕もあの毒が混入したポーションがどうなったか、とっても興味があるもんね。

 チャーリーさんと僕は、身支度をして馬車に乗り込みました。

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