第四百八十六話 卑劣なことをする者たち

「おい、領主はどこにいる?」

「お、お、お、お、応接室におります……」


 ビクターさんが途中で会った侍従にゴルゴン侯爵の居場所を聞いたけど、まるで不良みたいな迫力だった。

 そして、応接室と執務室などに乗り込む班に分かれ、僕はビクターさんとバッツさんとともに応接室に向かった。


 バン!


「ゴルゴン侯爵はいるか!」


 応接室のドアは鍵がかかっていなくて、ビクターさんがドアを蹴破るみたいな勢いで勢いよく開けた。

 すると、応接室にはあのゴルゴン侯爵とよく似た若い男性、それに横に大きい中年と若い女性がいた。

 更に、この前グレッグちゃんと一緒にいた時に会った小さな女の子もいた。

 小さな女の子は、何が何だか分からないのか、僕に普通に手を振っていた。

 というか、この部屋は香水臭くてたまらないんだけど……

 ビクターさんとバッツさんも、思わず顔をしかめてしまった。


「ゴルゴン侯爵、並びに嫡男と両夫人に対する捕縛命令が出された。素直に縄に付くがよい」

「けっ、誰が素直に従うか。そもそも、俺よりも年下の国王が俺に命令できるはずはない!」


 ビクターさんが捕縛命令書を突きつけても、ゴルゴン侯爵はとんでもない言い訳をしていた。

 というか、年齢に関係なく国王陛下か一番偉いはずなんだけど。

 ゴルゴン侯爵は、本当に自分勝手な貴族なんですね。


「では、実力行使に出る。バッツ、レオ君、シロちゃん、やってくれ」

「はっ」

「はい!」


 ビクターさんも思わず溜息をつくレベルのグダグダだけど、ここで引き下がる訳にはいきません。

 僕とシロちゃんは既に魔力を溜めていたし、バッツさんも力を溜めていました。


 シュッ、バキッ!


「グギャー!」


 ズサー、ドスッ。


 先ず、バッツさんが身体能力強化を使ってゴルゴン侯爵に一気に近づき、顔面を思いっきり殴りつけた。

 壁に激突しているけど、ゴルゴン侯爵は生きているかな?

 そして、僕とシロちゃんも一気に魔力を解放した。


 シュイーン、ズドドドドーン!


「ゴフッ……」


 ドサッ。


 嫡男目掛けて、エアーバレットとホーリーバレットを乱射します。

 まともに魔力弾を受けた嫡男は、その場で崩れ落ちた。

 すると、目の前で二人を倒されたゴルゴン侯爵夫人と嫡男夫人がとんでもない行動に出た。


 シャキン!


「こ、こ、これ以上、近づくな!」

「この子の命が、どうなってもいいのか!」

「えっ?」


 何と、ゴルゴン侯爵夫人が背後から女の子を押さえつけ、嫡男夫人が女の子にナイフを当てていたのだ。

 自分の孫と娘の命を使ってまで逃げようとするなんて、どう考えてもまともじゃない。

 僕とバッツさんは、一気に動きました。


 シュッ、バシン、バシン!


「「ガハッ!」」


 ドサッ。


「えっ、えっ?」


 ゴルゴン侯爵夫人と嫡男夫人は一瞬にして吹き飛ばされ、その隙にシロちゃんが女の子をビクターさんの側に連れてきた。

 一瞬の早業なので、女の子も全く訳が分からないみたいだ。

 でも、これで主犯の制圧完了です。

 気絶している四人を兵が拘束して運んでいくけど、四人とも横にとても大きいから担架に乗せるのがとても大変です。

 苦労しながらも、何とか連行していきました。


「普通、こんなに小さな女の子を人質にとるのか? あいつらは、本当に救いようのない馬鹿どもだな」

「自分勝手なことばかり考えていたから、他人の命なんてどうでもいいのでしょう。例え、それが幼い身内だとしても」


 ビクターさんとバッツさんは未だに馬鹿な事をした人たちにぷりぷりしているけど、僕とシロちゃんはその間も女の子の側にいた。

 なんというか、呆然としているみたいだ。


「えっと、僕はレオです。このスライムはシロちゃんだよ」

「マヤはマヤなの」


 マヤちゃんはまだ三歳にもなっていなくて、現状に追いついていないみたいだ。

 でも、気になったのは、例え酷いことをされても両親には違いないのに、連行されても止める雰囲気も泣くこともないことだ。

 うーん、これは何か裏がありそうです。

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