第四百十二話 王都に向けて出発

 昼食後は、準備をして玄関に並びます。

 今度は、僕がフランソワーズ公爵家のところに並びました。

 そして、バーボルド伯爵家の人々に挨拶をします。


「一ヶ月間、お世話になりました」

「こちらこそ、色々と世話になった」

「直ぐに依頼で来るだろうが、元気で過ごすんだよ」


 僕はペコリと頭を下げてから、ネストさんとダンビルさんと握手をしました。

 更に、イストワールさんとシャンティさんとハグをしました。

 そして、フランソワーズ公爵家の馬車に乗り込みました。


「ありがとうございました!」

「「「「元気で」」」」


 僕は、馬車の窓からバーボルド伯爵家の人々に手を振りました。

 また直ぐ来る予定なので、バイバイは言いませんでした。

 そして馬車は順調に進み、バーボルド伯爵領の街から街道に進みました。


「すー、すー」

「ふしゅー、ふしゅー」


 すると、街道に出て直ぐにクリスちゃんとクリスちゃんが抱っこしているユキちゃんがお昼寝を始めちゃいました。

 一人と一頭が抱き合って寝ていて、とっても可愛いですね。


「ふふ、クリスはレオ君に会うのが楽しみで、朝早く起きていたのよ」

「そうなんですね。僕はクリスちゃんとは王都で会うと思っていたので、いつも通りに起きました」

「レオ君は、本当にしっかりしているわね。旅では、前日にしっかりと寝るのが基本ね」


 ターニャさんがクリスちゃんとユキちゃんを膝枕して頭を優しく撫でていたけど、僕も旅をする時はいつも早く起きていたもんね。

 あっ、あの事をギルバートさんに確認しないと。


「ギルバートさん、一週間前に街道でオオカミ型の魔物が出たみたいですけど、行きは大丈夫でした?」

「問題なかったよ。バーボルド伯爵からも報告を受けていたから、念の為に護衛は増やしているがね」


 良かった。

 対策をしているみたいだし、何かあっても僕とシロちゃんがいるもんね。

 でも、別のトラブルが発生しました。


「お館様、貴族の馬車を盗賊が襲っております」

「確認した。行けるものは行ってくれ」

「「「はっ!」」」


 ちょうど王都まであと一時間というところで、貴族の馬車が襲撃されているところに遭遇しました。

 すると、シロちゃんがぴょーんと騎馬隊の馬に飛び乗りました。

 シロちゃんも、護衛の騎馬隊と一緒に現場に行くみたいですね。


「念の為に、馬車に魔法障壁を展開します」

「おお、頼む。レオ君の魔法障壁を打ち破る者は、横黒には殆どいないだろう」


 ギルバートさんの許可も貰ったので、僕は馬車を取り囲むように魔法障壁を展開します。

 その間に、騎馬隊が盗賊に襲われている馬車に追いつきました。


 ズドーン、ズドーン、ズドーン。


「ほほう、これは凄いのう」


 魔法障壁を展開しているので馬車の窓を開けても大丈夫なんだけど、シロちゃんの聖魔法が派手に炸裂していますね。

 もしかしたら、敢えて派手に魔法を撃っているのかもしれません。

 僕達の馬車が到着する頃には、盗賊は全員捕まっていました。


「念の為に探索魔法をかけます。あっ、街道の茂みに誰かいます」

「よし、数人で確認する様に」

「「「はっ」」」


 茂みにも誰か隠れていたけど、あっという間に捕まりました。

 フランソワーズ公爵家の護衛って、とっても強いんですね。

 その時、僕はとある事に気が付きました。

 急いで馬車から駆け下ります。


「シロちゃん、合体魔法を使おう!」


 馬車を引く馬と馬車の護衛が切られていて、かなりの重傷を負っていました。

 放置すれば、間違いなく死んじゃいます。


 シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!


 僕とシロちゃんは、順番に怪我人と馬を治療していきました。

 こうして、周囲の確認が終わった頃には怪我人の治療も済ませました。

 周囲の安全も確認できたところで、ギルバートさんも馬車から降りてきました。

 ターニャさんは、未だにクリスちゃんとユキちゃんがお昼寝中なので馬車の中に乗っています。


「報告いたします。盗賊は十名で、全て捕らえました。その、レオ様のスライムがあっという間に盗賊の懐に潜り込み、一気に昏倒させました」

「そうか、ご苦労。怪我人も治療できたみたいだな」


 ギルバートさんも、上手く盗賊を制圧できて満足そうに深く頷いていた。

 そして、馬車の中から中年の夫婦が降りてきた。

 この馬車に乗っていた貴族夫婦ですね。

 ギルバートさんも、直ぐにどの貴族か気がついたみたいです。


「これはこれは、ブランフォード卿ではないか。ご無事で何よりだ」

「フランソワーズ卿、助けて頂き感謝する。この人数が一気に奇襲し、かなり不利だった」


 男性は少し白髪の混じった赤髪で、女性は薄いグリーンの髪でした。

 あれ?

 ギルバードさんが、男性をブランフォード卿って言ったけど、もしかして……


「あの、横から失礼します。もしかしてライサさんのお父様ですか?」

「おお、ライサは私の末の娘だ。うん? 君はもしかして……」


 どうやら、男性は僕の存在に気がついたみたいです。

 でも、ギルバートさんが僕の事を紹介してくれました。


「この子は、レオ君だ。『黒髪の魔術師』もしくは『黒髪の天使様』と言った方が、分かりやすいかな?」

「その、シークレア子爵領でライサさんにお世話になりました」

「「黒髪の天使様! あの奇跡を起こされるという!」」


 あ、あれ?

 僕としてはライサさんのご両親だからもっと気楽に接することができるかなと思ったら、何故かブランフォード子爵夫妻は膝を着いて手を組んで祈り始めちゃった。

 突然の事で、僕もシロちゃんも思わずぽかーんとしちゃいました。

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