第三百十話 何やらきな臭い話が

 会議室に入ると、昨日会った人が待っていました。

 僕に気がつくと、その人はニコリとしてくれました。


「あっ、ワイアットさん、おはようございます」

「やあレオ君、おはよう。もうそろそろ他の者も来るから、席に座ってくれ」


 海軍司令官のワイアットさんが、会議室で待っていました。

 僕は大きなテーブルが置かれた会議室の、ワイアットさんの反対側に座りました。


「ザンギエフ君達も来てくれて助かった。造船の件もあるのだが、別件もあるんだよ」

「司令、別件ですか?」

「そうだ、荒海一家に関する件だ」


 おっと、何だかきな臭い話になって、僕とシロちゃんもビックリしちゃったよ。

 もちろん、ザンギエフさん達も真剣な顔をしていたよ。

 結構大掛かりな盗賊団なんだね。


 ガチャ。


「いやいや、待たせたな。おお、大きい保護者が四人もいるとは」

「工場長までくるとは、レオは特別扱いだな」


 遅れて部屋に入ってきたのは、茶髪の短髪に白髪が混じっている、如何にも職人さんって感じの人だった。

 工場長って言っていたけど、そんな人ともザンギエフさん兄弟は顔見知りなんだね。

 工場長もソファーに座って、話はスタートです。


「それでは話を始めよう。といっても、レオ君にやって欲しいのは変わらない、魔法を使って木材を加工する仕事だ。現場責任者がいるから、一緒に仕事して欲しい」

「そのスライムも魔法が使えるんだってな。できる範囲で手伝って貰うと助かるぞ」


 ワイアットさんと工場長が僕とシロちゃんに話をしてきたけど、仕事内容は変わらないみたいだね。

 僕だけでなく、シロちゃんもふんすってやる気になったよ。

 どちらかというと、ワイアットさんと工場長はザンギエフさん達に話があるそうです。


「レオ君も聞いて貰った方がいいな。実は、荒海一家がこの造船所で破壊工作をするといい、金を要求しているのだ。実際に、工場内で不可解な怪我人や事故が起きている」

「しかも、工場関係者しか知らない場所で事故が起きている。軍人も入って誰が犯人か探しているが、ザンギエフ達には、仕事をしつつ怪しい奴を見つけて欲しい」

「そいつは見逃せないな。何故荒海一家がここまで強硬に出ているかは、捕まえた奴に聞くしかないな」


 荒海一家は僕を捕まえてお金を奪おうとしていたけど、軍の造船所にも色々な事をしていたんだね。

 僕も、怪しい人がいないか気にするようにしないと。


「この件は、まだ信頼できる職員や冒険者にしか話していない。こちらの指示が出るまでは、周囲には黙っていて欲しい」


 ワイアットさんのお願いを聞いて、僕達はコクリと頷きました。

 でもワイアットさんのお願いは分かるけど、あの件に関してはどうしよう。


「ワイアットさん、僕が襲われたからザンギエフさん達が護衛についているのはどうしますか?」

「その件は目撃者も多くて公になっているから、周りに話しても問題ないよ」

「というか、俺達はそのレオのボディーガードだとアピールすれば、奴らも下手な事はしないかもな」


 警戒する対象は一緒だけど、別のアプローチからなら問題ないね。

 ワイアットさんの許可も貰ったし、その方向でいきましょう。


「じゃあ私は軍の施設に戻るから、レオも頑張ってね」


 ワイアットさんは、別の仕事があるので早々に帰っていきました。

 わざわざ僕の為に来てくれたんだね。


「じゃあ、早速仕事を始めるか。というか、お前らは宿の仕事があるだろうが。レオが心配だからって、全員で来る必要はないぞ。どうせお前らは仕事分かっているんだしな」

「「「「じゃんけんだ!」」」」


 あっ、工場長がザンギエフさん達に話しをしたら、ザンギエフさん達による熱いじゃんけん大会が始まっちゃったよ。

 僕もシロちゃんも工場長も、ただ成り行きを見守るしかなかったね。

 そして、数回のアイコの後に勝負が決着しました。


「お、俺は何故チョキを出したんだ……」


 床に崩れ落ちるほどガックリと項垂れていたのは、四男のヒョードルさんでした。

 でも、これは熱いじゃんけん大会の結果だから仕方ないよね。


「ほらほら、挨拶の時にはお前にも来て貰うぞ」

「……はい」


 思わず苦笑しながら工場長が崩れ落ちているヒョードルさんに話しかけていたけど、ヒョードルさんは中々立ち上がれませんでした。

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