第五百六十二話 いよいよ王都に帰還します
停戦発効から一週間が経ちました。
戦闘の気配は全くなく、落ち着いた雰囲気です。
というのも、やはり帝国側の陣容が全然整っていないそうです。
前、そして前の前の帝国指揮官が無茶をしたのもあり、帝国内も大変だそうです。
戦闘が起きないという点においては、王国側としてはとてもありがたいけど。
そして、戦闘が起きていないということで、僕たち治療班と一部の兵が王都に帰還する事になりました。
前日のうちに帰る支度をしてあるので、部屋を簡単に片付けて生活魔法で綺麗にすれば完了です。
準備が整ったところで、見送りに来てくれた人に挨拶をします。
「娘もそうだが、レオ君が来てくれて本当に助かった。ここまで王国有利で戦況を進められたのも、間違いなくレオ君とお友達のお陰だ」
ハーデスさんから、最大限の賛辞を貰いました。
今回は、僕よりもシロちゃんとピーちゃんの力がとても大きかったと思います。
僕は、治療以外だとレンガ作りばっかりやっていたね。
「後は私たちがキチンとやるから、レオ君も安心して帰ってね。私が王都に帰ったら、一緒にお茶をしましょう」
新たな治療班として部隊を率いるレイアースさんとも、ガッチリと握手をしました。
予定では秋くらいに王都に帰ってくるそうなので、レイアースさんともまた会って色々と教えてもらいたいです。
「レオ君はいつも残さず食べてくれるし、とてもいい子だよ。今度は違う場所で会おうね」
エラさんは、僕のことを思いっきり抱きしめてくれました。
戦場ではないどこかで、ゆっくりと偉い人たちの若い頃の話を聞きたいです。
兵とも別れの挨拶をしたけど、無事に王都で再会したいですね。
「よし、それじゃそろそろ行くぞ」
今回僕たちと一緒に王都に帰るブラウニー伯爵が、挨拶をしている人たちに声を掛けました。
そして、馬車に乗って出発するタイミングの時でした。
「帰還部隊に敬礼!」
ザッ。
ハーデスさんの掛け声を合図に、兵が一斉に敬礼をしました。
僕たちも敬礼して、それから手を振りました。
これからも頑張って欲しいと、切に願います。
そして、僕たちを乗せた馬車は一路サンダーランド辺境伯領の領都に向かって走り出しました。
そういえば、国境の基地に来る時は何とかしなきゃと思って周りの景色をよく見ていなかったけど、結構山がちなところだったんだね。
「アンアン!」
「ピー」
ユキちゃんとそのユキちゃんの頭の上に乗ったピーちゃんも、馬車の窓から景色を見ていました。
そういえば、ピーちゃんはこの国境の基地に向かう街道で保護されたんだっけ。
こうして元気になって、本当に良かったね。
シロちゃんも、窓枠にくっついて外を眺めていました。
そんな僕たちを、アイリーンさんたちも微笑んで見つめていました。
こうして、少しほんわかな気持ちをしながら、夕方前に無事にサンダーランド辺境伯領の町に到着しました。
僕たちを乗せた馬車は、そのままサンダーランド辺境伯家の屋敷の敷地に入って行きました。
なんだか、この屋敷に来るのも久しぶりですね。
そして、サンダーランド辺境伯であるボーガン様が玄関で待っていてくれました。
馬車を降りると、直ぐにブラウニー伯爵の号令が行われます。
「サンダーランド辺境伯、ボーガン様に敬礼」
ザッ。
僕もだけど、シロちゃんたちも可愛らしく敬礼していました。
そして、ボーガン様とブラウニー伯爵がガッチリと握手をしていました。
「この度の大義、誠にご苦労だった。ゆるりと休むが良い」
「ご配慮かたじけない。感謝申し上げる」
なんだか難しい言葉で挨拶をしているけど、これが大貴族同士の会話なのかもしれない。
そして、兵も全員部屋を用意しているそうなので、僕たちも屋敷の中に入りました。
すると、元気いっぱいな男の子がユキちゃんに抱きつきました。
「あー! ワンちゃんだ!」
「アオン!」
元気いっぱいなアンソニーちゃんが、ユキちゃんに笑顔で抱きついていました。
ユキちゃんもアンソニーちゃんをギュッてしているけど、国境の基地に行く前に仲良しだった一人と一匹は、会って直ぐにニコニコになりましたね、
ほっこりする光景に、兵も思わずニンマリです。
すると、慌てた様子のスーザンさんが小走りでやってきました。
「はあはあ、アンソニー、急に走り出さないの」
「はーい、ごめんちゃい」
「アオン」
スーザンさんにアンソニーちゃんとユキちゃんがペコリとしているけど、アンソニーちゃんもたくさん話せるようになったんだね。
すると、スーザンさんが僕たちに泊まる部屋について説明しました。
「皆さま、この後使用人がお部屋までご案内いたします。レオ君は、前と同じ部屋に行ってくれるかしら」
「分かりました。ユキちゃんはアンソニーちゃんといる?」
「アン!」
夕食まで部屋で待機になったけど、多分お風呂に入るのだろうね。
ユキちゃんはアンソニーちゃんと仲良く手を繋いでいるし、このままスーザンさんと一緒にいそうです。
ということで、僕たちも部屋に向かいました。
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