第四百五十三話 まさかの冒険者

 翌朝、フランソワーズ公爵家の庭には昨日と同じマリアージュ侯爵家の馬車が停まっていました。

 もちろん、ヒルダさんが馬車から出てきました。

 僕は現地集合だと思っていたので、凄いビックリしちゃいました。


「今日は、モニカもターニャもパーティーの準備で動けないわ。だから、私が代わりに孫の面倒をみるのよ」


 ヒルダさんがチャーミングにウインクしてきたけど、確かに今日はモニカさんもターニャさんも更に嫡男のアレックスさんも忙しいので動けません。

 ウェンディさんとクリスちゃんは一緒に行くそうなので、ヒルダさんが引率する形になります。


「お母様、病み上がりなのだから気を付けて下さい」

「ふふ、大丈夫よ。レオ君の治療でバッチリ治っているわ」


 モニカさんが母親であるヒルダさんに釘をさしたけど、当のヒルダさんはワクワクって感じですね。

 今日はジェシカさん以外にも侍従がついていくそうで、みんな馬車の中に乗り込みました。


「行ってきます!」

「いってきまーす」

「気を付けてね」


 ウェンディさんとクリスちゃんが馬車の窓からターニャさんに手を振って、馬車は冒険者ギルドに向かいました。

 いつも通りに冒険者ギルドの馬車停留所に馬車を停めて、受付の手続きに行こうとしたときでした。


「さあ、みんなも降りるわよ。冒険者ギルドがどんなものか、実際に見てみましょう」

「「はい!」」


 おお、ウェンディさんとクリスちゃんもとっても良い返事をしています。

 二人とも、前から冒険者というものに興味があったそうです。

 ウキウキしている三人と共に、冒険者ギルドの中に入りました。


 ガヤガヤガヤ。


「わあ、多くの冒険者がいるわ。とっても活気があります!」

「凄いです! 凄いです!」


 早朝で多くの冒険者が詰めかけている光景を見て、ウェンディさんとクリスちゃんは大はしゃぎです。

 二人とも貴族令嬢だから、中々ない体験ですね。

 そして、ヒルダさんも普通に受付の列に並んでいます。

 えーっと、豪華なドレスを着た令嬢が三人も並んでいるので、冒険者がちょっとざわざわとしています。

 更に、僕もびっくりすることが起きました。


「すみません、受付をお願いします」

「私も、一緒にお願いしますわ」

「えっ、ひ、ヒルダ様?!」


 なんと、ヒルダさんも冒険者カードを取り出して受付に出してきました。

 これには、受付のお姉さんだけでなく、僕やウェンディさんやクリスちゃんもびっくりしています。


「ヒルダさんって、冒険者だったんですか?」

「ええ、そうよ。王女の時に、よく奉仕活動や魔物の駆除をしていたのよ」


 ヒルダさんはあっさりと答えているけど、一体どんな王女時代を過ごしていたんだろうか。

 そして、さらりとウェンディさんとクリスちゃんも冒険者登録しています。

 今日は、一種の非日常の体験だと思えばいいですね。

 すると、受付の奥からシシーさんが顔を覗かせました。


「これはこれは、ヒルダ様ではありませんか。今日は、黒髪の魔術師と一緒ですか?」

「ええ、そうよ。孫の面倒も見ようと思っておりますわ」

「随分と楽しみにしておりますね。お気をつけて下さいませ」


 シシーさんもニコリとして対応していたけど、どうもヒルダさんが冒険者だって知っていたみたいですね。

 何だか、凄いことになってきちゃいました。


「では、大教会に行くわよ。多くの人を治療しないとならないわ」

「「「はい!」」」

「アオン!」


 思わずみんな返事をしちゃったけど、もう完全にヒルダさんのペースになっちゃいました。

 この辺りは、元王族って感じかもしれません。

 僕たちは冒険者ギルドを出て、馬車に乗って大教会に向かいました。

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