第四百七十五話 炊き出しの列を乱したもの

 翌朝、僕たちは準備を済ませると馬車に乗り込んで王城に向かいました。

 昨日ぐっすりと寝たので、体調もバッチリです。

 シロちゃんとユキちゃん、それにジェシカさんも体調は回復したみたいですね。

 王城に着くと、お隣の軍の施設に案内されました。


「わあ、沢山の食料が集まっていますね」

「当面の分となっております。申し訳ありませんが、レオ騎士爵様にはあと数回荷物を運んで頂く可能性があります」


 いつも治療の時に担当してくれる兵が食料が保管されている所に案内してくれたけど、大量の荷物を一気に運ぶのは僕とシロちゃんの得意技だから問題ありません。

 現に沢山あった荷物も、一瞬で収納完了です。

 今日は軍が現地の人との交代も兼ねて護衛に付いてくれるそうで、早速ポール男爵領に向けて出発しました。


「今日も沢山人が集まりそうですね」

「昨日も、『もっとないか』と言っている人がおられましたので。これだけの食料があれば、十分に足りるはずです」


 ジェシカさんが苦笑しながら答えてくれたけど、そんなに沢山の人が炊き出しに来ていたんだ。

 今日はどうなっているかなとポール男爵領に着いたら、教会前が凄いことになっていた。


「わあ、すごい人だかりです! 昨日以上かも」

「これはあまり良くないですね。直ぐに準備をいたしましょう」


 僕たちは馬車から降りると、魔法袋とアイテムボックスから食料を取り出しました。

 急いで仕込みを始めている横で、僕たちも治療を始めました。

 余りにも殺伐とした雰囲気なので、聖騎士や軍に護衛して貰いました。

 それでも、順番取りで喧嘩を始める人もいたりと、あまり良くない雰囲気です。

 そんな中、聖騎士が拘束した人を僕の所に連れてきました。

 何かあったのかな?


「黒髪の天使様、こいつを鑑定してもらえませんか?」


 何だろうと思いながら、僕は直ぐに拘束されている人を鑑定しました。

 すると、ある結果が出てきました。


 シュイン、もわーん。


「えーっと、あれ? 犯罪組織の人っぽいです。ニューラ男爵の家臣とも出ています」

「やっぱりか。ニューラ男爵はゴルゴン侯爵にくみする者で、きっと仲間が捕まったので嫌がらせをしているのかと」


 えー!

 なんでそんな酷い事をするんですか。

 人が並んでいるところで暴れて、混乱させようとしているんですね。

 これには、僕もプンプンです。

 直ぐに王城に連絡をするらしいので、反省して欲しいですね。

 その後も聖騎士や兵が拘束した人を鑑定しつつ、治療を進めます。

 一時間もすれば暴れる人が殆ど捕まったので、炊き出しに並ぶ人も落ち着きを取り戻しました。

 ようやく、落ち着いて炊き出しと治療ができるね。

 すると、昼前に今日軍を指揮していたナンシー侯爵が教会にやってきました。


「レオ君、朝は大変だったみたいだね。王城に連絡したら陛下が激怒して、ニューラ男爵家への捜索を指示した上でゴルゴン侯爵一派を呼び出したみたいだ」

「僕も、陛下の気持ちは分かります。とても大変な時なのに、勝手な事をしているんですから」

「普通はそう考えるが、奴らは自分勝手な事をするからね。恐らく、奴らは当面は謹慎になるだろう」


 ナンシー侯爵もとっても怒っているけど、本当に大人しくして欲しいですね。

 その後は本当に何事もなく、夕方まで無事に炊き出しと無料治療が終わりました。

 でも、もう半分の食料がなくなっちゃったので、明後日にはもう一度食料を取りに行かないと駄目です。

 そして、今日は教会の宿泊できる部屋に泊まることになりました。


「その、黒髪の天使様にお出しする食事ではないかもしれませんが……」

「僕は冒険者でもあるので、全然問題ないですよ。普通に、町の食堂とかでも食事をしていましたし」

「アン!」


 夕食時に教会のシスターがかなり恐縮しながら料理を運んできたけど、僕は全然気にしません。

 シロちゃんやユキちゃんも美味しそうに食べているし、僕もあっという間に完食しました。

 生活魔法でみんなを綺麗にして就寝なのですが、ここでちょっとしたトラブルが。


「レオ様、本日は私がお世話をしますので」

「いやいや、私がお世話をしますわ」

「いいえ、私です」


 寝る時の世話を誰がするかで、屋敷からきた侍従がヒートアップしていました。

 これには、ジェシカさんも苦笑いです。

 でも、今日も沢山の人を治療したので、魔力が足りなくて眠気が限界です。

 こうして、まだあーだこーだやっている侍従を尻目に、僕はシロちゃんとユキちゃんを抱きしめながら一足先に寝ちゃいました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る