第二百三話 コバルトブルーレイクの街の最後の夜です

 そしてコバルトブルーレイクの街を出発する前日の夕方、僕は魔導具修理工房での作業を終えました。

 昨日今日はピンブローチ作りはしないで、シロちゃんと一緒にとにかく魔石に魔力を充填する作業に集中しました。

 現時点で魔力充填が必要な魔石は無くなったので、僕もシロちゃんもホッとしています。

 これで、冬もバッチリ迎えられるね。


「レオ君、最終日まで色々とありがとうね。お陰様で、溜まっていた空っぽの魔石が全て使える様になったわ」

「後は、俺達が頑張る番だな」


 ジュンさんも職人さんも、キラキラと光る魔石を手にしてニコリとしています。

 僕は魔導具の修理は出来ないし、やっぱり職人さんは凄いよね。

 すると、職人さんが僕の首から下げている懐中時計型の魔導具を指さしたよ。


「レオ、完了手続きしている間にその魔導具をメンテしてやる。今まで頑張ったご褒美だ」

「わあ、ありがとうございます」


 僕は魔導具を職人さんに預けて、その間にジュンさんに依頼完了の手続きをしてもらいます。


「はい、これで良いわ。手続き完了よ」

「俺の方も終わったぞ。大切に使っているから、ほぼ手入れする必要はなかったな」

「皆さん、ありがとうございます。いつかコバルトブルーレイクの街にまた行きたいので、その時は宜しくお願いします」

「ええ、待っているわ」

「きっとレオの事だ、直ぐに話題になって様子がわかるだろうな」


 僕とシロちゃんは、ジュンさんや職人さんにお辞儀をして魔導具修理工房を後にしました。

 ピンブローチ作りも学べたし、とっても良い経験になったよ。

 僕は夕暮れの街を歩いて、冒険者ギルドに向かいます。


「はい、受付完了です。併せて、出発の手続きも行いましたわ」

「マヤさん、ありがとうございます」

「こちらこそ、ありがとうね。新しい街でも、頑張ってね」


 僕は、たまたま空いていたマヤさんがいる受付で手続きをしました。

 これで必要な手続きも終わったし、後は宿に帰るだけだね。


「レオじゃないか。明日出発らしいな」

「はい、サンダーランド辺境伯領に行きます。アマード子爵領からコバルトブルーレイクの街まで一緒に旅をして、とっても楽しかったです」

「俺等も楽しかった。ゴブリンの群れを倒したのは、良い思い出になったぞ」

「俺等はまたアマード子爵領に行くが、レオも気をつけてな」


 僕はコバルトブルーレイクの街まで一緒に旅した冒険者にも挨拶をして、宿に帰っていきます。

 ゴブリンの群れと戦ったのは偶然だったけど、戦闘訓練にもなって勉強にもなったよ。


「レオ君、お帰り。お風呂入ったら、皆で夕食にしましょう」

「今夜は、フルールさんが美味しい夕食を用意してくれているわ」


 宿に着くとユリアさんとイリアさんが待っていてくれて、ナナさん達も一緒にお風呂に入りました。


「はふー」

「こうして、レオ君と一緒にお風呂に入るのも暫くお預けね」

「成長したレオ君が、どんな姿になっているか楽しみですね」

「はふーーー」


 ユマさんとハナさんと一緒に湯船に浸かっているけど、大きくなったらお風呂には一緒に入れないかも。

 僕としては旅の前のお風呂を堪能するのに、意識が集中しちゃってます。

 やっぱり、僕はお風呂がとっても好きだなあ。

 シロちゃんも、気持ちよさそうに湯船に浮いています。


「わあ、凄い美味しそう!」

「今日は腕によりをかけたわ。いっぱい食べてね」


 お風呂後に皆で食堂に向かうと、お肉料理や野菜炒めが並んでいました。

 フルールさんの料理はとっても美味しいから、僕もシロちゃんもニコニコです。

 ユリアさんとイリアさんも、美味しそうにお肉を食べていました。


「そういえば、ナナさん達って料理出来るんですか?」

「出来るよ」

「出来ますよ」

「簡単な物でしたら」


 おー、ナナさん達は料理が出来るんだね。

 村に行った時にユリアさんとイリアさんは炊き出しをしていたから料理が出来るのが分かっていたけど、ナナさん達も手伝っていたから料理が出来るんだね。


「僕も、いつかは料理を出来るようにならないと」

「そうね、レオ君は野営する可能性もあるし、料理は覚えていて損はないわ」

「簡単な物から覚えていけば良いわよ」


 僕もシロちゃんもふんすってやる気を見せたら、ユリアさんとイリアさんがニコリとしながら僕とシロちゃんを撫でてくれました。

 パンだけ食べてるだけじゃ、駄目だもんね。

 そして、食事が終わったら部屋に戻って明日の準備をします。

 直ぐに出発出来る様に、明日の着替えだけ用意して後は全部魔法袋に入れました。


「私も準備完了よ。しかし、魔法って本当に便利だわ」

「色々な物が、小さな袋に入っちゃいますよね」


 ナナさんは、盗賊退治で得た報奨金で魔法袋を購入していました。

 ナナさんは魔法使い用の魔法袋だから、そんなに高くないんだって。

 他の人も、量はそんなに入らないけど汎用の魔法袋を購入しました。

 それでも、あるとないとじゃ大違いみたいです。

 そういえば、僕の魔法袋ってどれだけの荷物が入るのかな?

 魔法使い用だから魔力量によるみたいだけど、そこまで入れた事はないもんね。

 あと、シロちゃんも魔法袋は使えそうだね。


「レオ君、最後の日だから一緒に寝ませんか?」


 僕とシロちゃんは、ナナさんと一緒のベッドに入りました。

 今までも何回か一緒に寝ていたけど、今日で最後だもんね。


「冒険者になるって思った時はとても不安だったけど、レオ君や色々な人に出会えて少し自信がついたわ」

「今はナナさんは立派な魔法使いですから、依頼にはもう困らないと思いますよ」

「そうね。最初使える魔法が闇魔法って知った時はどうしようかと思ったけど、今は魔法が使える事に誇りを持っているわ」


 もうナナさんは一人前の魔法使いだから、きっともっともっと活躍するね。

 僕とナナさんはもう少しだけ話してから、眠りにつきました。

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