第百三十二話 危険な道中?

 いよいよ四日目の朝です。

 今日はちょっと危ない所を通るっていうから、僕も十分に気をつけないといけないね。

 昨晩はイリアさんと一緒に寝ていたけど、抜け出してシロちゃんと一緒に訓練を行います。


「あれ? シロちゃんも魔力が上手に循環できる様になったね」


 昨日よりも、シロちゃんが上手く魔力を扱えるようになったよ。

 このままいけば、シロちゃんが魔法を使える日もきっと近いね。

 僕も、ちょっとワクワクしました。


「「うーん」」


 そろそろ、ユリアさんとイリアさんも目が覚めそうだね。

 僕も着替えをしようっと。


 カラカラカラ。


「ここから暫く森の側を通る。充分に注意して進んでいくぞ」


 馬車便は、いよいよ街道の両側が森になっているエリアに突入していきます。

 僕達も、一緒に乗り合わせている人も緊張してます。

 そんな中、御者が僕達に質問をしてきました。

 よく見ると、御者の人も冒険者みたいに筋肉ムキムキの人で腰に剣を下げているよ。


「丁度冒険者が乗り合わせているが、この中で一番強いのは誰だ?」


 御者の質問に、ユリアさんとイリアさんだけでなく冒険者も僕の事を指さしてきました。

 同乗者の家族は、僕の事を見てビックリしています。


「小さな魔法使いか、黒髪の魔術師ってのは知っているか?」

「もしくは、教会だと黒髪の天使だな」

「その噂の子どもが、このレオだ」

「おお、このスライムを連れた子どもがか? はは、そんなすげー冒険者が同乗しているな」


 御者が笑いながら行ってくるけど、僕は魔法を使えるだけでまだまだ強くないと思うよ。

 すると、一緒に乗っていた家族が僕の事をキラキラとした目で見てきました。

 え、え、一体なんだろう?


「あの、アマード子爵領の先代様を救ったって本当でしょうか?」

「教会に駆け込んだ重病の子どもを治療したって、この話も本当でしょうか?」

「え、ええ、本当ですよ」

「「凄い、天使様は本当にいたんだ」」


 あの、今度は僕の事を神様みたいに拝んでいるんですけど。

 冒険者達はくすくすと笑っているし、小さな子どもとシロちゃんは良くわからない表情をしているよ。


「あ、あの、探索魔法に何か引っかかりました。戦闘準備をしないと」

「ふふ、一生懸命に誤魔化しているわね」

「そうね。さっさと終わらせて、話の続きをしましょうね」


 タイミング良くオオカミの反応が現れたので、ユリアさんとイリアさんはニコニコとしながら準備を始めました。

 くそう、絶対にからかわれているなあ。

 そう思いながら、僕も準備を始めます。


「流石は二つ名持ちだな。あっという間に戦闘が終わっちまったぞ」

「すごーい、かっこいい!」


 御者の人と小さな子どもが、終わったばかりの戦闘を喜んでくれています。

 結局十頭のオオカミが現れたけど、僕がエリアスタンで痺れさせて他の人がトドメをさして終了です。

 血抜きも、シロちゃんが順番で行いました。

 なので、オオカミと遭遇して僅か十分後には、旅は再開しました。


「ここまで簡単に討伐を終えるとなると、やはりレオの魔法の効果が絶大だからだな」

「俺等も、オオカミにトドメをさす位しかやる事がないもんな」

「ノーリスクハイリターンというのは、まさにこういう事だな」


 冒険者達も、オオカミとの戦闘が簡単に終わって上機嫌です。

 誰も怪我をしないのは、とっても良い事ですね。

 その後もオオカミとツノウサギの襲撃があったけど、ノーダメージで切り抜けます。

 僕も、まだまだ魔力はたっぷりとあります。


「いやはや、実際にレオ君の魔法を見ると噂よりも凄い事が分かるな」

「そうね。素材を傷つけない様に、それでも確実に獲物を動けなくしているわ」

「すごーい、おにーちゃんすごーい!」


 僕は安全を考えて戦っているけど、同乗している家族も僕を褒めてくれます。

 僕も素早い相手はエリアスタンで一気に無効化して、動きの遅い相手にはエアバインドで確実に動きを封じます。

 エリアスタンは魔力を溜める手間もあるから、別の方法も考えないとね。


「うん? 前で戦闘が起きているぞ。ありゃ、俺たちよりも先に出た馬車だな」

「ええ、大変だ。助けないと!」


 と、ここで非常事態発生です。

 僕たちよりも先に出発していた馬車が、沢山の魔物に囲まれていました。

 あれって、もしかしてゴブリンじゃないかな?

 僕達の馬車も、急いで向かいます。


「「「キシャー!」」」

「くそ、数が多いぞ」

「助太刀するぞ!」

「助かった」


 どうもその場所に乗っている冒険者の数も少なくて、更に怪我もしながら戦っています。

 ここは、確実にエアバインドでゴブリンの動きを止めます。

 エリアスタンは、皆がダメージを受けちゃうもんね。


「えーい!」

「ギョギョ?」

「その調子だ。確実に動きを止めていけ」


 僕は、馬車の上からエアバインドを使ってゴブリンの動きを止めます。

 その間に、馬車から飛び降りたユリアさんとイリアさんに冒険者達がゴブリンを確実に仕留めていきます。


「ふう、これで終わりですね。直ぐに治療しますね」

「あ、ああ、ありがとう」

「助かったよ」


 二十匹はいただろうゴブリンも、あっという間に片付きました。

 皆がゴブリンを解体してシロちゃんが吸収している間に、僕は怪我をした人の治療を行います。

 馬も怪我をしていたから、一緒に治療をします。


「こりゃ、ちょっと異常な数のゴブリンだな」

「ああ、まさかこんなにも多くのゴブリンが現れるとは思わなかったよ」


 僕達の御者の人が助かった御者の人と話をしているけど、一度に二十匹を超えるゴブリンが現れるのは稀なんだって。

 そういえば、昨日現れたゴブリンも五匹だったもんね。

 さて、念の為にもう一回探索魔法をかけてっと。

 あっ、これはマズイかも。


「四十匹を超える何かの反応が、こちらに向かってきています。もう、直ぐに来ます」

「「「はあ!?」」」


 僕の発した言葉に、全員がビックリしてしまいました。

 まだ戦いは続きそうです。

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