第五百八十九話 ヨーク伯爵との会談
ということで、改めて応接室でヨーク伯爵と二人の子どもと話をすることにしました。
なお、屋敷の中が正妻と側室に組みしたものを捕まえていてドタバタしていたけど、特に気にしないことにしましょう。
「改めて、レオ君にお礼を言おう。私の命を救ってくれて、本当にありがとう」
「よ、ヨーク伯爵、顔を上げて下さい。僕は、いつも通り目の前で苦しんでいる人を治療しただけです」
「ははは、あれだけの治療なのにいつも通り治療しただけとはおそれいった。だからこそ、レオ君が黒髪の天使様として町の人から羨望を集めているのだろう」
ヨーク伯爵は機嫌よく笑っているけど、僕としては目の前の人を助けなきゃって思っただけです。
二人の子どもも部隊長さんも、思わずおーって拍手をしていました。
「そして、我が家の汚点を見せて申し訳ない。あの二人は嫁いだ時は大人しかったのだが、我が領が裕福なのもあったのか段々と派手な生活を好むようになった。そして、子どもが生まれたらどっちが権力を握るかしか考えなかった。より贅沢をするためだろうな」
ヨーク伯爵がため息をつきながら経緯を話してくれたけど、金品を手にして人が変わっちゃったんだね。
すると、二人の子どもが俯きながらぽつりぽつりと話し始めました。
「お母様、大っ嫌いです。いつも勝手なことを言って、僕のことを殴ってきて……」
「勉強ばっかりさせてきます。お前は次の領主なのだからと、何時間も何時間も……」
「二人とも、本当に済まなかった」
ヨーク伯爵は、涙をポロポロと流す息子をきつく抱きしめました。
本人は領主として忙しく働いていて、中々子どもたちと接する機会がなかったそうです。
無理矢理にでも時間を作れば良かったと、ヨーク伯爵はかなり悔いていました。
暫くの間、応接室には二人の息子の嗚咽が響いていました。
そして、落ち着いたところで再びヨーク伯爵が話し始めました。
「レオ君には、我が家の問題を解決した報酬を払わないとならないな。別途冒険者ギルドで支払おう」
「あのその、もうブラウニー伯爵から治療の依頼を受けていますし、陛下からも命令をうけてますので大丈夫です」
「そうはいかない。陛下とブラウニー伯爵ともよく話をして、レオ君に報酬を渡さないと私の気が済まない。これは、ヨーク伯爵としての謝礼だ」
もう何だか分からなくなっちゃったので、偉い人同士で決めてもらいましょう。
そして、その後は僕についての話になっちゃいました。
実は子ども二人は僕よりも一つ上で、自分より小さな子どもが活躍しているなんて信じられなかったそうです。
でも、目の前で僕が回復魔法を使ったのを見て、本当に凄いのだと分かったと言っていました。
更に、僕が普段どんな勉強をしているのかと聞かれたので、あの本を魔法袋の中から取り出しました。
「レオ君、これはちょっと難しすぎるよ。まだ、息子にもやらせることはできない」
「なにこれ? 難しくて全然分からないよ……」
「見ていると、頭が痛くなっちゃうよ……」
うん、僕も皆さんと同じ意見です。
こんな難しい問題を勉強しないといけないなんて、官僚って本当に凄いと思うよ。
その後も、色々なお話をして屋敷を後にすることになりました。
「レオ君、本当にありがとう。私が復帰したからには、当分跡継ぎ争いは起こることはない。時間をかけて、息子と向き合うようにするよ」
「「ばいばーい」」
こうして、ヨーク伯爵と二人の息子の見送りを受けながら僕たちは宿に戻りました。
色々解決して、ホッと一安心です。
「シロちゃん、ユキちゃん、ピーちゃん、色々見つけてくれてありがとうね」
「アオン!」
「ピィ!」
もちろん、大活躍だった皆にお礼をいうことも忘れません。
特に、ユキちゃんは治療でも大活躍だったもんね。
定時報告でも、各所からお疲れ様ってねぎらいの返信がありました。
これで、後はセルカーク直轄領に向けて進むだけですね。
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