第五百三十九話 砦修復用のレンガを作ります

 翌日から本格的に活動を始めることになったのだけど、昨日重傷者を全部治療しちゃいました。

 なので、軽傷者だけなので僕の出番は無くなっちゃいました。


「ユキちゃん、頑張って皆を治療してね」

「アン!」


 中等症くらいまでしか怪我人がいないので、今日はケイトさん、カーラさん、マイアさんとともにユキちゃんも治療を行います。

 治癒師がこれだけいれば、全然大丈夫だそうです。

 アイリーンさんはお父さんである司令官のハーデスさんと打ち合わせがあり、僕とシロちゃんはさっそくある作業を行います。


「おう、じゃあ、この大きさでレンガを作ってくれ」


 昨日話のあった、陣地の補修で使用するレンガを作ります。

 予備のレンガもあるけど、一回僕とシロちゃんが作ったレンガが使えるか確認するそうです。

 レンガのサンプルも貰ったので、さっそく作って行きます。

 この基地には補修用のレンガを作るための道具もあるので、それを使っていきます。

 先ずは、材料の土と水をよく混ぜ合わせてっと。


 シュイーン、ぐちゃぐちゃぐちゃ。


「均一になるように、よくかき混ぜてくれや」


 兵の指示通りに、大きな器に入ったレンガの元を念動で良く混ぜ合わせます。

 普通はかなりの力作業だけど、僕とシロちゃんならあっという間に出来上がります。

 いきなりレンガの形を作るのかと思ったら、このまま寝かせる必要があるそうです。

 なので、ここからは既に寝かせてあったレンガの元を使います。


「それじゃあ、どんどんと成形していくぞ!」


 レンガの大きさが決まっているので、その大きさになるようにシロちゃんと一緒にどんどんと念動で作っていきます。

 レンガも、長いのと短いの二つの大きさがあるんですね。

 どんどんと作ったら、今度は乾燥させていきます。


「ひび割れないように、一気に水分を抜く事はしないでくれ」


 ここからは、僕が行っていきます。

 なので、シロちゃんにどんどんとレンガの元を作って貰います。

 でも、水魔法の応用で水分を抜いていくので、もしかしたらユキちゃんにも出来るかもしれないね。

 こうして、乾燥されたレンガがどんどんとできていきます。

 こうなったら、今度はレンガを焼いていきます。

 といっても、火魔法で直接燃やすのではなく、火魔法の応用で空気をとっても熱くしていきます。

 レンガ作り専用の窯があるので、その中に乾燥したレンガをどんどん積み込んでいきます。

 ある程度レンガを積み終えたところで、いよいよ作業開始です。


「最初は少し低めの温度にして、少ししたら高温にしてくれ」


 ふむふむ、いきなり高温じゃ駄目なんですね。

 レンガ作りって、中々奥が深い作業です。

 まずは、熱いんだけどそこまででない温度にしてっと。


 シュイン、ブワッ。


 暫く良い感じで窯の中の温度を一定に保って、暫くしたら一気に温度をあげていきます。

 うん、これは魔力制御のとってもいい勉強になります。

 レンガの中心部まで上手く熱が通るようにしながら、温度を一定に保ちます。

 こうして、レンガに充分熱が通ったら、あとは冷ましていきます。

 何とか割れずに、良い感じにできたね。


「ふむ、これは良いな。何よりも煙が出なくて相手にレンガ作成中だと気づかれないで済むぞ」

「あっ、ハーデスさん!」

「相手に何かを察知されると、奇襲を受けることがある。とはいえ、レンガを大量に運んでくるのはとても大変だ。そういう意味でも、今回のレンガは非常に役に立つだろう」


 ハーデスさんのお墨付きを貰えるかは、今回のレンガの出来にかかっているそうです。

 でも、壊れたところは修復用に急いで作った品質の落ちたレンガを使っていたので、間違いなくそれよりも質は良いだろうと言っています。


「しかし、シロちゃんもそうだけどレオ君は本当に器用に魔法を使うな。この先の成長がとても楽しみだ」


 ハーデスさんが、ニコリとしながら僕の頭を撫でてくれました。

 僕としては、訓練にもなっているから全然平気なんだよね。

 それに、ものを作るのってやっぱりすきなんだよなあ。

 もうお昼の時間になっていたので、昼食を食べてからレンガの出来を確認する事になりました。

 そして、バッチリとハーデスさんのお墨付きをもらえました。

 予備のレンガもたくさんあっていいそうなので、午後もレンガ作りを進めることになりました。

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