第百八十二話 洞窟に潜んでいる盗賊
奥さんが応接室を出て直ぐに、村長さんが部屋に入って来ました。
おお、初めてみたけど頭がバーコードヘアだ。
「お待たせしました。おや、女性のパーティなんですな」
「正確には女性と男の子ですわ。力はありますのでご心配なく」
「はあ……」
あっ、村長さんは女性ばっかりのパーティだと知って明らかにがっかりしていたよ。
ちょっと失礼な人だね。
「とにかく話を聞かせて下さい。急ぎの対策がひつようなのでしょうから」
「そ、そうですな。どうも、森の中に大きな熊が現れたらしく、生息域を奪われた動物が畑を荒らしているのだよ。何とか動物は撃退したのだが、熊がどうしても倒せなくて困っているのだよ。街の男も怪我をしているんだ」
大きな熊が暴れているんだ。
それに、怪我をしている人もいるんだね。
「ここにいるレオ君は回復魔法が使えるので、怪我をした人を治療しますが如何でしょうか?」
「い、いやいや、応急処置は終わっているから大丈夫だ。心遣いありがとう」
おや?
イリアさんが治療の提案をしたら、何故か村長さんが慌てだしたよ。
しかも、村長さんの挙動がちょっとおかしいね。
取り敢えず僕達は森に向かう前に、馬車の所に行きました。
相変わらず村の中は静かで、馬車に乗客は誰も乗っていません。
僕は、御者の人に話しかけました。
「すみません、明日帰りの馬車はいつ出ますか?」
「うーん、そうだな、昼前にはこの村に着くから午後には出るぞ」
となると、明日の午後には村を出発しないとならないですね。
僕達は、急いで村から森に向かいました。
「今は周囲に誰もいません、大丈夫です」
村から離れて森の近くに移動してから、僕は皆に大丈夫だと伝えました。
「あの村長はクロで間違いないわね」
「ええ、そうね。あの村自体、何か怪しいわね。私達の事を、ずっと誰かが後をつけていたし」
僕の考えは、ユリアさんとイリアさんと一緒です。
あの村長さんはとても怪しいし、僕達をつけていた人も森の中に入っていきました。
「ちょっと待っていて下さいね。うーん、クマだと大きいはずですけど、大きな動物の反応は山の中にないです」
「そりゃそんなにも大きな熊だったら魔物化しているのは間違いないし、怪我するレベルじゃ済まないわ」
「となると、私達をつけてきた男が怪しいわね」
先ず間違いないのは、森での害獣駆除は嘘の依頼だという事です。
じゃあどんな目的で冒険者をおびき出したかは、村長さんか僕達の後をつけてきた人に聞くしかありません。
「ユマ、ハナ、ナナ、ここからは難しいミッションになるわ。人を切る事もあるでしょう」
「三人はどうする? 安全な場所に隠れている事も検討しないと」
まだ戦闘経験が無いナナさん達だから、身を守るだけで精一杯かもしれないね。
それでも、ナナさん達の決意は固かったです。
「一緒に行きます。どのみちどこが安全かも分からないですし、行くしかないです」
「分かったわ。でも、無理はしないでね」
ナナさんの決意に、ユリアさんはニコリとしました。
ここからは戦闘を考えて、身軽さを重視します。
全員武器と防具とポーションを身に着けて、不要な荷物は僕の魔法袋に入れます。
「獣道ができているわね。誰かがここを何回も通った跡ね」
「この道の先に、さっき僕達をつけていた人が向かいました」
「では、気づかれない様にちょっと回り道をしながら進みましょう」
僕達は、森の中を進んで行きます。
僕の探索魔法で、僕達をつけていた人の位置はバッチリ把握しているので、目印にはこまりません。
そして森に入ってから僅か十分程で、僕達をつけていた人の位置が泊まった場所に着きました。
「洞窟ね。明らかに怪しいわね」
「複数の人の反応があります」
「となると、この複数人で私達を襲うつもりだったのね」
とは言っても、ここからでは洞窟の中で何が起きているかは分かりません。
ここは、シロちゃんにお願いします。
森の中だから他にもスライムはいるし、シロちゃんが洞窟の中に入っても問題ないですね。
シロちゃんは、さささっと洞窟の中に入って行きました。
さて、どんな結果が出てくるかな?
すると、僅か数分でシロちゃんは僕達の所に戻ってきました。
「おかえり、シロちゃん。わあ、大変な事が分かりました!」
僕は、シロちゃんからの報告を聞いてビックリしちゃいました。
「盗賊団が村を襲って、村を占拠して嘘の依頼をしたんだって。僕達の事を森で襲って、お金とかを奪おうとしているみたいだよ」
「「「えっ!」」」
僕が小声で話をした内容に、ナナさん達はビックリしていました。
でも、ユリアさんとイリアさんはこの展開を予想していたのか、とても冷静でした。
「あと、洞窟の中に村から連れ出された女の人がいて、その、乱暴されていたって。僕達も捕まえて、乱暴するつもりらしいよ」
僕が言いにくそうに更に続けると、女性陣から怒気が漏れてきました。
あわわわ、ちょっと怖いよう。
怒気をまともに浴びちゃった僕とシロちゃんは、思わず抱き合ってふるふると震えていました。
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