第二百五十二話 指名依頼の治療です

 という事で、今日明日はフレアさんとミシャさんと共に治療院で治療を行います。


「フレアさん、ミシャさん、今日は宜しくお願いします」

「こちらこそ宜しくね」

「意外と治療以外にもやることがあるのよ」


 僕達は冒険者ギルドで手続きをしてから、治療院へ歩いて向かいます。

 フレアさんとミシャさんは治療院でのお手伝いをしたことがあるので、僕の付き添い中でも仕事があるそうです。

 何はともあれ、先ずは教会に行って挨拶をします。


「おはようございます、今日は宜しくお願いします」

「レオ君、こちらこそ宜しく頼むよ。無理をしない様にね」


 あらら、挨拶をしたブラッドリーさんに注意されちゃった。

 僕が魔法切れで倒れちゃったのを、ブラッドリーさんも知っていたんだね。

 今日は、僕もシロちゃんも魔力を使い過ぎない様に気をつけないとね。

 では、早速治療院に行って治療開始です。


 ぴかー!


「はい、これで良くなったと思いますよ。どうですか?」

「おやおや、胸の苦しみがすっかり良くなっているよ。坊や、ありがとうね」


 いつも通りに、大部屋に入院している人から治療をします。

 そこまで重症者はいないし、スムーズに治療を進めていきます。

 勿論、急ぎすぎないようにお喋りをしたりします。


「改めて見るけど、レオ君って本当に手際が良いわね」

「もう、ベテランの治癒師ね。笑顔で接しているし、患者もつられて笑顔になっているね」


 今日は午前中に第一治療院、午後は第二治療院で治療をするので、慌てないようにします。

 空いたベッドの片付けとかを、シスターさんに混じってフレアさんとミシャさんも手伝っています。

 こうして、一時間かけて大部屋の治療は完了です。

 次は、重症者がいる個室です。


 シュイン、ぴかー!


「はい、大丈夫ですよ。痛くないですか?」

「凄い、全く痛くない! 黒髪の魔術師の治療が、こんなにも凄いなんて!」

「治ったばっかりですから、リハビリ頑張って下さいね」

「ああ、ありがとう。よし、前よりももっと鍛えるぞ!」


 足を骨折していた兵も、自分の足が治ってやる気も復活したみたいですね。

 この分なら、リハビリも頑張ってやるね。

 でも、何だろう?

 僕もシロちゃんも、いつもよりも魔力を制御して回復魔法ができているよ。

 そのおかげで、いつもよりも魔力消費が抑えられました。

 昼食はミシャさんのお家で食べる事になったので、ついでに聞いてみよう。


「間違いなく、身体能力強化の魔法を練習している成果よ。身体能力強化の魔法は、微細な魔力の制御が必要なの」

「細かい魔力制御が上達したから、必要な魔力消費量も抑えられたのよ」


 おお、そういう事なんだ。

 じゃあ、身体能力強化の魔法を練習すれば、もっと魔力制御が上手になるね。

 僕もシロちゃんも、もっと頑張ろうってやる気になったよ。

 お腹いっぱいで気合十分になった所で、第二治療院に向かいます。


 キラリーン!


「すげー、腕のヤケドがあっという間に治ったぞ!」

「もう大丈夫ですよ。お大事にして下さい」

「おう。いやあ、黒髪の天使様の魔法はすげーな」


 第二治療院の大部屋は、比較的怪我人が多かったです。

 それでもやる事は変わらないので、次々に治療していきます。


「病人でも怪我人でも、レオ君の魔法は変わらないね」

「あんな小さい子にニコニコとしながら治療されるんだから、おっちゃんもデレデレと締まりの無い顔をしているわ」


 フレアさんとミシャさんは、包帯をまき直したりシーツを綺麗に敷き直したりしていました。

 こうして大部屋での治療は終わり、再び個室での治療です。


「レオ君はいつでも笑顔で治療していて、とっても素晴らしいわ」

「体だけじゃなくて、気持ちも元気になってもらおうと思っています。僕もウキウキした方が気持ち良いので」

「だから、レオ君が治療をした患者も良い笑顔なのですね」


 付き添いしてくれたシスターさんにも、僕とシロちゃんは褒められちゃいました。

 やっぱりニコニコした方が、元気にもなるよね。

 こうして重症の患者も、あと一人になりました。


「う、うぅ……」


 最後の一人は右手首から先を失っていて、体中に包帯を巻いていました。

 とっても苦しそうにしていて、これじゃポーションだけじゃ良くならないね。


「よし、最後だからシロちゃんも頑張ろう!」


 僕もシロちゃんも、気合を入れて魔力を溜め始めました。

 今日はまだまだ魔力も残っているし、手首から先の再生なら全然大丈夫です。


 シュイン、シュイン、シュイン、シュイン。


「えっ、こ、これはなに?」

「こんなにも複数の魔法陣が発動するなんて……」


 重症者の周りに複数の魔法陣が発動したので、フレアさんとミシャさんはとっても驚いていました。

 でも、このくらいの魔法ならまだまだ大丈夫です。


「じゃあ、治療しますね」


 シュイン、シュイーン!


「「わっ!」」


 重症者を中心にして、眩しい光が病室を包みます。

 フレアさんとミシャさんも、顔を手で覆って光を防いでいます。


「すう、すう」


 そして光の奔流が止むと、手首から先も無事に再生して安らかに寝息をたてる兵の姿がありました。


「よし、もう大丈夫ですね。暫くリハビリを頑張って下さい」

「はい、分かりましたわ。ありがとうございます」


 ついてきてくれたシスターさんは前回の治療の時にもいたので、僕が治療した後も普通に対応していました。


「れれれ、レオ君、今、何という魔法を使ったの? て、手が、再生したわ……」

「えっ? 普通の回復と聖の合体魔法ですよ。ミシャさんにも使いましたよ」

「いやいやいや、レオ君が私に使った魔法とは全くレベルが違うわ。全く別物の魔法よ」


 うーん、どうしよう。

 フレアさんとミシャさんが、ちょっとパニックになっちゃったよ。

 時間が経つと何とか落ち着いてくれたけど、まだ信じられない表情をしていたよ。


「改めて、レオ君の魔法がとんでもないものだって理解したわ」

「あり得ない事を見てしまったから、思わず叫んでしまったわよ……」


 フレアさんとミシャさんは何とか納得してくれたけど、まだ信じられないみたいですね。

 でも、もしかしたら明日も重症者の治療するかもしれないから、慣れて貰わないとね。

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