第四百六十一話 パーティーの準備は順調です

 フランソワーズ公爵家に到着し、僕は馬車を降りて屋敷の中に入ります。

 すると、綺麗なドレスに着替えたクリスちゃんとユキちゃんが僕を出迎えてくれました。


「ただいま、クリスちゃん」

「お帰りなさい、おにいさま」

「アオン!」


 クリスちゃんは薄いピンクのドレスを身につけていて、髪の毛も綺麗にセットしてあります。

 ユキちゃんも、クリスちゃんのドレスと同じ色のバンダナを首に巻いています。


「あれ? シロちゃんは?」

「シロちゃんは、アレックスお兄様のお手伝いをしているよ」


 シロちゃんはとっても真面目だから、大変なアレックスさんの側にいるんだ。

 すると、クリスちゃんとユキちゃんが僕の手を引っ張ってどこかに連れて行きます。


「凄いんだよ! パーティーだよ!」

「アオン!」


 パーティー会場として使われる二階の広間に僕を案内したいみたいで、階段も勢いよく登って行きます。

 そこにあったのは、今朝までの広間とは全然違う光景でした。


「わあ、テーブルもいっぱい並んでいて、とっても凄いです!」

「凄いよね!」


 パーティー自体は夕方からだけど、テーブルには白いクロスがかけられていて、花瓶に花も飾られています。

 窓とかもピカピカに磨かれていて、床も丁寧に掃除してあります。

 そういえば、庭も綺麗に刈り揃えていましたね。

 本当にご苦労さまです。

 そして、紙を手にしながらアレックスさんが色々なところを確認していました。

 アレックスさんの肩にはシロちゃんが乗っていて、触手で紙を指してアレックスさんに確認していました。


「レオ君、お帰り。シロちゃんを借りているよ」

「アレックスさん、ただいま。シロちゃん、頑張ってね」


 アレックスさんだけでなく、シロちゃんもフリフリと僕に合図をしています。

 シロちゃんも、張り切って準備を手伝っていますね。

 ちょうど昼食の時間だというので、僕たちはアレックスさんも連れて食堂に向かいました。


「あら、レオ君帰ってきたのね。お帰りなさい」


 食堂では、ウェンディさんが早めの昼食を食べていました。

 あれ?

 ウェンディさんは、いつものドレスを着ているよ。

 よく見ると、アレックスさんも普通の服を着ています。


「早めの昼食を食べ終えた者から、パーティー用の服に着替えるのよ。もう既に、クリスは昼食を食べ終えているわ」


 そっか、昼食を食べた際に服が汚れちゃダメだから、ウェンディさんとアレックスさんは普通の服を着ているんだ。

 因みに、モニカさんとターニャさんは昼食を食べ終えて着替えている真っ最中です。

 クリスちゃんは僕の横に座って、みんなと一緒にお喋りをしていました。

 パパパッと昼食を食べ終えて、ウェンディさんとアレックスさんも着替えに行きました。

 入れ替わりで、着替え終えたモニカさんとターニャさんが食堂に顔を見せました。


「レオ君、お帰りなさい。食べ終わったら、手伝ってくれる? 早い人は昼過ぎからやってくるわ」

「えっ、パーティーは夕方からですよね?」

「お母様は、間違いなく早く来るわ。お父様は夕方になるから、別便で来るでしょう」


 モニカさんは思わず溜息をついているけど、ヒルダさんの性格を考えると絶対にあり得ますね。

 そして、本当に二時前にニコニコとしたヒルダさんがやってきました。

 まだウェンディさんとアレックスさんが着替え途中だったので、僕とクリスちゃんが対応する事になりました。


「レオ君、騎士爵叙爵おめでとう」

「ありがとうございます」

「これで、レオ君も立派な貴族の仲間入りね」


 騎士爵は一代限りの名誉爵位だけど、本人は貴族として扱われるそうです。

 そして、ヒルダさんはビックリすることを言ってきました。


「そうそう、謁見の後で詰め寄ってきたあのゴルゴン侯爵を言い負かしたんだってね。小さな男の子が大貴族の当主に怯まずに立ち向かったと、一気に貴族の間で広まっているわ」

「ええー! 本当ですか?」

「本当よ。黒髪の天使様は、貴族になられても勇気のある方だと色々と言われるでしょうね」

「おにいさま、カッコいい!」

「アオン!」


 クリスちゃんとユキちゃんはこの話を聞いて大喜びしているけど、僕は謁見の後の件がそんなに広まっているとは思ってもいませんでした。

 どうも多くの貴族があの場面を見ていて、それが官僚や軍人はたまた使用人まで広まっているとヒルダさんは言っています。

 これは大変なことになると、僕のテンションは落ちてしまいました。

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