第三百八十七話 久々の魔石への魔力充填作業
「ではバッツさん、後はよろしくね」
「おう、任せておけ。レオは明日もここでいいんだろう?」
「ええ、今週いっぱいは修理部で預かる事になりましたので」
へスターさんはお仕事があるので、ここでお別れです。
僕はベッツさんの後をついて行きながら、魔導具修理部署の奥に入っていきます。
「レオは治療施設にいた奴の治療を終えたって訳か」
「えっと、一人を除いて終えました」
「ああ、あの馬鹿か。昔から自信過剰な馬鹿な奴だよ。あんな奴は仲間の邪魔をするから、前線には不要だな」
席について最初に治療の事を話し始めたけど、ベッツさんも魔法を暴発させた魔法使いの事を知っていました。
それほど、例の魔法使いが起こした事件が大きかったんですね。
軍の裁定が必要な程らしいし、ベッツさんの話し方だと前にも事件を起こしていそうです。
では、さっそくお仕事を始めましょう。
「まあ、レオにやってもらう仕事はとても簡単だ。修理で外した魔石にひたすら魔力を注入すればいい。レオはこの作業の経験者だし、細かい説明は不要だろう」
そう言いながら、ベッツさんは魔石が大量に入った木箱を運んできました。
おお、ベッツさんの身体能力強化はとっても凄いんだ。
僕もシロちゃんも、思わずビックリしちゃいました。
ベッツさんは中年よりも少し年齢が上だけど、もう少し若かったらバリバリの前線で戦う兵だね。
僕とシロちゃんは、魔石が入っている箱と空箱が置いてある前に持ち運びできる椅子を持ってきて、さっそく作業を始めました。
「あっ、そうそう、適度に休めよ。どんな仕事も、やりすぎはよくねえ。程々にな」
おっと、去り際のベッツさんに注意されちゃいました。
僕は懐中時計型の魔導具のアラームをセットして、改めて作業を始めました。
シューン、シューン。
「久々の魔石に魔力を充填する作業だけど、前よりも楽にできる様になっているね」
僕はシロちゃんと談笑しながら、どんどん魔石に魔力を充填していきます。
楽に作業できる様になったのは、きっと日々の魔法の訓練のお陰だね。
こうして、僕とシロちゃんはアラームがなるまで作業を進めました。
ピピピピ、ピピピピ。
「おっ、ちょうど時間だな。レオも少し休め、甘いものを用意してあるぞ」
そして懐中時計型の魔導具のアラームが鳴ったタイミングで、ベッツさんが再び顔を出してきました。
他の隊員と共に、休憩スペースでちょっと休憩をします。
僕とシロちゃんの前には美味しそうなケーキが用意されていて、僕もシロちゃんも一気に食べちゃいました。
そんな僕とシロちゃんの様子を、主におっちゃん隊員と女性隊員がニヤニヤとしながら見ていました。
「しかし、レオは作業が早いな。もう二百を超える魔石に魔力を注入するとは」
「毎日魔法の訓練をしていたので、前に作業をした時よりも楽に作業できる様になりました」
「ほほう、そうかそうか。やはり日々の訓練は大切って事だな。俺も未だに魔法の訓練を毎日続けているぞ。継続は力なりだな」
物凄く甘そうなケーキを食べているベッツさんが、唇についたクリームを舐めながら僕に訓練の重要性を話していました。
僕も毎日魔法の訓練をするのはとても大切だと思うし、当たり前って思っていました。
だからこそ、僕もシロちゃんも少しずつパワーアップしているんだよね。
「今回事件を起こした馬鹿は、毎日の訓練を怠っていたよ。俺が前線にいる時から幾度となく注意したが、全く聞き入れなかった。だから、奴は魔力制御がかなり危うかった。今回の暴発事件も、ある意味起きたのは必然だろう」
「もしかして、自分は魔法の訓練の必要がないと思っていたんですかね?」
「だろうな。奴は強力な火魔法が使えるが、使えると正しく制御するのは全く違う。奴は、その認識を正しく持てなかった」
きっと事件を起こした魔法使いは、自分が魔法が使えると分かって自信過剰になっちゃったのかな。
ベッツさんがいくら言っても駄目だったって事は、他の人がどんなに言っても同じ結果になったんだろう。
僕は、砂糖をたっぷり入れた紅茶を飲むベッツさんを見てそう思いました。
というか、そんなに甘いものを食べていると病気になりそうだけど、ベッツさんは何故か物凄い健康体でした。
きっと鍛えられた軍人は違うって事なんですね。
こうして、休憩を挟みながら僕とシロちゃんは夕方の帰る時間まで魔石に魔力を充填する作業を続けました。
「よし、今日は終わりだな。明日は事務棟に着いたら直接修繕部の倉庫に来てくれ。道順は覚えているな」
「事務棟の直ぐ近くなので大丈夫です!」
「おお、そうか。じゃあ、また明日な」
こうして、久々の魔石への魔力充填作業は無事に終了しました。
僕とシロちゃんはベッツさんに見送られながら、事務棟に向かって歩いて行きました。
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