第7話 日課の約束
story teller ~夏木光~
ワタシの親友は恋をしている。
一目惚れしたらしい。
「普段は一目惚れされる側なのにね」
遅刻者が記入する日誌に言葉を落とす。
今日はその相手と一緒に帰ると言っていた。
入学式の日、全ての日程が終わり、教室からクラスメイトが出ていく中、中学からの親友の月は、ワタシのもとに駆け寄ってくる。
光、聞いて、聞いて!
嬉しそうとも、照れくさそうとも見える顔。
ワタシはその顔を知っている。
あぁ、この子は恋をしたんだとすぐにわかった。
ワタシから見たその男の子。
同じクラスの四宮太陽はいたって平凡。
ルックスも普通。
鍛えられてる訳でも、だらけきったでもない体つき。
学力はまぁ入学した当初は分からなかったし、今でも特に興味は無い。
それでも月はその男の子に恋をした。
顔、身長、雰囲気など、その子の全てが
別にワタシも人の好みに口出しはしない。
月が好きならそれでいいと思う。
いつも一目惚れしたと、顔や周りの評判で判断して告白されている親友。
だから自分はちゃんと四宮の中身を知った上で告白したいと言っていた。
ワタシにそう言ってみせた月の顔は
ならワタシは応援しよう。
この子の初恋を。
******
story teller ~四宮太陽~
春風さんとの楽しい帰り道。
学校からは俺の家の方が近かったけど、自分の自宅を通り過ぎて、春風さんを自宅付近まで送り届けてから来た道を引き返す。
帰り際に、春風さんに言われた言葉を頭の中で繰り返し思い出す。
「明日、TOPPO4のライブ配信があるでしょ?もしよかったら一緒に通話しながらみたいなーなんて。ダメ、かなぁ?」
上目遣いに聞いてきた春風さんにみとれながら、いいよと返した。
春風さんはぱぁっと周りが明るくなるくらい笑顔になり、ありがとう、楽しみにしてると言っていた。
その時少し顔が赤くみえたのはきっと夕日のせいだろう。
俺はこの嬉しさを誰かに共有したくて、足早に自宅へ向かう。
______
自宅に着くと、ただいまとリビングに居るであろう母さんに声をかけ、階段をのぼり自室に入る。
ポケットからスマホを取り出し、メッセージアプリの通話機能を使って堅治に電話をかける。
何回か呼出音がなり、もしもしと堅治の声が聞こえた。
〈もしもし、堅治。今電話大丈夫?〉
〈おう、大丈夫だけど。なんかあったのか?〉
〈なんかあったというか、今日、春風さんから一緒に帰らないかって誘われてさ。〉
今日あったことを堅治に話す。
春風さんが教室にいなくて焦ったこと。同じ趣味があったこと。その趣味で明日通話をすること。そしてそれが嬉しいこと。
堅治は相槌をうちながら俺の話を聞いていたが、昼休みと同じように心配そうな声で俺に言う。
〈ほんとに大丈夫か?〉
〈大丈夫だよ、春風さんが俺を好きになる訳ないし。それに俺も春風さんは可愛いと思うけど、異性として好きかって聞かれるとそういう訳じゃないと思うし。〉
〈・・・それならいいんだが。昼休み言ったように、なにかあればすぐに言えよ?〉
〈わかってるよ。ありがとう〉
堅治は俺の事をほんとに心配してくれている。それが素直に嬉しい。
その後も堅治と他愛ない話を30分くらいして通話を終了する。
そういえば最近惚気けてこないけど、彼女さんとは上手くいってるのかな?
つい最近までは会えば惚気け、メッセージでも惚気け、通話でも惚気け、だったのに、この2週間近く惚気を聞いていない。
「今回は話聞いてもらったし、次は堅治の惚気けでも聞こうかな」
あまり深く考えずに、次にしようと思っていた。
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