第27話 仲良し?

story teller ~とある人物~


 少し眉が動くのをわたしは見逃さなかった。


 人の気持ちは変わるものだから


 その一言で気持ちが揺らいだのだろう。

 思い通りになるかはわからないが、それならそれで別の手を使えばいい。


「ねぇ、この写真の女の事調べてくれない?」


 わたしは自分のスマホを、隣で寝ている男に向ける。


「この女誰?新しいおもちゃ?」


「ううん、かな」


「ふーん、けど調べるにしても、少しくらい情報がないと難しいよ」


「通ってる学校ならわかるよ」


 そういって男のスマホ宛に学校名を送る。


「この学校なら中学の時の知り合いがいるから聞いてみるよ」


「ありがとう」


「それで、見返りは?」


「いつも前払いであげてるでしょ」


まぁあなたも道具なんだけど。

 そう思いながら、わたしは男に跨った。


 ******


story teller ~四宮太陽~


 勉強を初めて早くも2時間が経過していた。

 みんなで勉強会なんて初めてだったが、わからないところを教え合いながらするのは、自分の復習にも繋がるので、意外といいもんだなと思った。


 それよりも意外だったのは、予想よりも冬草さんが勉強出来ない事だった。

 テストの順位が低いのは前もって聞いていたが、全教科壊滅的だったのである。


「うう、テストなんてなくなればいいんです。別に英語なんて出来なくても海外に行かなければいいし、数学が出来なくても、足し算と引き算ができればいいんです」


 こんな事を言ってしまうくらいには。

 うなだれて、いつものニコニコ笑顔が今にも泣きそうな顔になっている。


「ま、まぁそんな事言わずに。テストはなくなりませんし、頑張りましょう?」


 そんな冬草さんに勉強を教えているのは、花江さんだった。

 最初は、同じ学校のメンバー(春風さん除く)で1番中間テストの順位が高かった堅治が教えることになったのだが、花江さんがわたくしが教えると言い出したのだ。

 学校が違うので、授業の進みが違うから大変ではと言っても、頑なに譲らなかった。

 堅治が女の子に教えるのが嫌だったのだろうか。


「ただ、そうは言ってもやっぱり、学校が違うので授業内容自体が違いますね。わたくしたちの学校では習わないところですね。」


 花江さんの通う学校は私立の名門校であり、頭のいい人が多いと聞く。


「やっぱり同じ学校だし、秋川くんが教えた方がいいのかな?」


「そ、それは迷惑になると思います!」


 春風さんの言葉で、冬草さんが遠慮する。


「そうですよ!わたくしでも教えられますし、問題ないと思います!」


 冬草さんの言葉に同調するように花江さんも声をあげる。2人はお互いを見つめ合い、ニッコリ笑っている。いつの間にか仲良くなったのかな?


「いや、別にオレは迷惑じゃないし、オレが教えてもいいけど?」


 堅治、それはやめた方がいい。冬草さんと花江さんの2人から睨まれてるぞ。気づけ。


 そんな様子をみて、夏木さんははぁーとため息を吐いている。


「じゃあわかった。ワタシが教えるから。今までもそうしてきたし、涼も問題ないでしょ?」


「私はそれで問題ないです。むしろその方がいいです。ね?寄宮さん」


「そうですね。その方がやりやすいかもしれないです。ね?冬草さん」


 雰囲気とか言葉遣いが似ているからか、仲良くなっているみたいだ。類は友を呼ぶってやつ?


「あのさっきから気になってたんだけど」


 夏木さんと花江さんが座る位置を交換している間に、俺の横に座る春風さんに声をかける。


「チラチラ見てくるけど、なんかわからないところあるの?」


「えっ、みみみ、見てたっけ?たぶん、む、無意識だと思う!ごめんね!」


「あー、いや、それならいいんだけどさ」


 そういって春風さんは教科書を立てて、顔を挟む。

 それじゃ教科書見れないでしょ。

 耳が赤いけど、部屋が暑いのかな。


 人の部屋だし空調を勝手に調節するわけにもいかず、とりあえず様子を見ることにする。


 その後は休憩中にトランプをしたり、お菓子を食べたり、お喋りをしながら楽しく勉強会を終えた。

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