第28話 夏休みの予定
story teller ~夏木光~
ワタシは少しヒヤヒヤしていた。
秋川の彼女の寄宮さんが涼の勉強を見ると言い出したからだ。
明らかに寄宮さんの態度はおかしかったので、涼が秋川の事が好きなのがバレているのかと思った。
だが、意外にもしっかりと教えてるし、涼の事を嫌っているようにも見えない。
涼の方は明らかに意識しているが。
ワタシとしては涼の恋を応援したい。
涼本人がワタシたちに気持ちを隠しているから、表立って協力することは出来ない。
出来ることなら涼にチャンスが巡ってきて欲しい。
だけどこのままいけば涼は確実に傷つく。親友なら、諦めろと言うべきなのだろう。
そんなどちらとも言えない感情で涼の事を守るなんて、おこがましいにも程がある。
涼もバカじゃない。きっと諦めなければいけない事くらいわかるはずだ。
諦める為に、今日もちゃんと参加したのだろう。体調不良など、いくらでも嘘をついて逃げることも出来たはずだから。
涼の気持ちを考えると胸が苦しくなる。
今日の今日じゃなくても、諦めた方がいいとちゃんと伝えよう。
そしてその時は一緒に泣こう。
******
story teller ~四宮太陽~
テストも無事に終わり、順位が発表される。
俺たちの学校では、順位が張り出されるのは各教科と総合点数の上位5人までである。
それ以外の人は担任から配られる小さな紙に記入されている。
今回はみんなで勉強したおかげか、順位が上がり、42位だった。特に数学は前回よりも解けたので嬉しい。
休み時間になると、春風さんたちが俺の席の周りに集まってきた。
「四宮くんは何番だった?」
「総合で42位だったよ。春風さんたちは?」
「私は7位だったよ!もう少しで上位組だったのに」
悔しそうにしているが、7位でも大分凄いと思う。普段授業中もしっかりと受けているからか、勉強会の時も問題集をスラスラと解いていたし。
「ワタシは44位だったよ。四宮に負けたの悔しいんだけど」
「あはは、次も負けないように頑張るよ」
そういうと夏木さんに肩を殴られる。力が入ってないから痛くはないけど。
「冬草さんはどうだった?」
「赤点はしっかり回避しました」
少しドヤ顔してるけど、ようは順位は聞かないでくれってことかな。でもうちの高校は期末テストで赤点を取ると夏休みに補習になるため、そうならなかっただけでも結果オーライなのだろう。
「それでね!四宮くん!」
顔をキラキラさせた春風さんが身を乗り出してくる。
「夏休みにさ、みんなで海にいかない?寄宮さんも誘って!」
いいねと言いかけて想像する。
海ってことは水着って事だよな。春風さんの水着。やばい、超見たい。どんな水着なんだろうか。
「うん、いいと思う。超見たい。」
口に出ていた。
「四宮キモイ。」
夏木さんの視線がなにか気持ち悪いものを見ているようで痛い。
春風さんは気づいてないのか、えっ、四宮くんはキモくないよ!?と言ってくれている。
冬草さんは、うん、夏木さん程じゃないけど引いてるみたいだ。
「で、でも海ってどこの海に行くの?近くに海はないけど」
俺たちの住んでる街は近くに海はなく、海に行くためには電車に乗って少し遠出しなければならない。
「四宮くんの地元は?確か海があるよね?」
春風さんの言うように、俺の地元は確かに海がある。
俺はこの街の生まれではなく、この高校を受験する事にした時に、引っ越してきたのだ。
堅治は俺と同じ高校に通うために、わざわざ毎朝早く家を出て約1時間も電車に乗っている。
「うん、そうだけど」
「四宮くんの地元も見てみたいなと思ったんだけど、ダメかな?」
「うーん、でも花江さんも誘うならその方がいいかも」
地元にはあまり行きたくなかったが、まぁ大丈夫だろうと考える。花江さんはお嬢様なので門限が午後5時なのだ。それなら地元の方が長く遊べると判断する。
「じゃあみんなで計画立てないとね!」
今年の夏休みはきっと楽しくなる。
まだ学校は数日残っているにも関わらず、今から夏休みが楽しみだった。
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