第26話 意識
story teller ~春風月~
今日は部屋に四宮くんを招く日。
昨晩何を着るか考えていたので、床に服が散らかっていた。
緊張であまり眠れなかった目を擦りながらベッドから起き上がり、1階へ降りる。
「お母さん。今日はみんな来るから部屋には来ないでね?」
前もってみんなが来ることを伝えてあるが、再度忠告する。
「男の子もくるんでしょ?変なことしたらダメよ?」
「光たちも来るんだからそんな事しないよ!」
「じゃあ光ちゃんたちが来なかったらするのかしら?」
「そういう意味じゃないから!もう」
茶化してくるお母さんに対して、頬をふくらませる。
お母さんがいるから万一にもありえないが、四宮くんがみんなより先に来たとしたら、いい雰囲気になったりしないかなとは考えたが。
そうなったとしてもたぶん恥ずかしさでその雰囲気を壊すと思う。
顔を洗ってから部屋に戻り、床に散らかった服をクローゼットに片付けていく。
その後、机にメイク道具を広げて、いつもよりも気合いを入れてメイクしようと意気込んだ。
******
story teller ~四宮太陽~
沈黙を破るようにインターホンが鳴り、待ってましたとばかりに春風さんが立ち上がる。
「四宮くんはちょっとまっててね!」
たぶん、俺と2人きりなのが気まずかったのだろう、バタバタと階段を降りる音がする。
部屋で待っていると、案内された夏木さんと冬草さんが入ってくる。
「四宮が一番乗りだったか」
「そうだね、予定より早く着いちゃって」
「月と2人で変なことしてないよね?」
「してないから!」
確かに、2人きりでドキドキはしたけど、なにかをするような度胸は無い。
夏木さんは春風さんをみて、はーあと呆れたような顔をしている。その後春風さんになにかを耳打ちすると、春風さんの顔が赤くなる。
「何言ってるの!そんな事出来ないし!」
そんな反応を見て、夏木さんは笑いながらローテーブルのそばに座る。それにならって冬草さんも座り込む。
「どうします?秋川くんたちがまだですが、先に勉強始めますか?」
「そうだね。先に始めちゃお!私は飲み物用意して持ってくるね!」
「ありがとう」
部屋をでる春風さんを確認してから、夏木さんは俺に質問してくる。
「でさ、四宮はあんなに可愛い子と部屋で2人きりなのに、なにもしなかったの?」
「いやいや、友だちだしなんもしないでしょ」
俺の返答に対して、友だちねぇと言いながら勉強の準備を始めだす。
「うーん、でも私から見ても月は可愛いと思いますし、正直男の子なら部屋で2人きりだと意識したりしませんか?」
冬草さんまでなにを言ってるんだと思うが、意識しなかったと言えば嘘になる。
春風さんはめちゃくちゃ可愛いと思うし、部屋で2人きりはさすがに意識する。
「まぁ俺も男だし、高校生だし、正直女の子と部屋に2人きりは意識するけど、やっぱり友だちだし手を出したりとかはしないよ」
学年で1番可愛い春風さんと、友だちになれた事が既に奇跡だと思う。手を出したりすれば、今の関係も壊れるだろうし、そんな事にはなりたくない。
「じゃあさ、逆に月からなにかしてきたらどう思う?」
「いやいや、そもそも春風さんから俺になにかする事はないでしょ」
俺の返事を聞いて、2人が頭を横に振る。
えっ、俺なんかまずいこと言った?
「こりゃダメですねぇ、涼さん」
「そうですねぇ、光さん」
顔を合わせて、2人にしかわからない会話をしている。なにがダメなんだ。
そうしていると、部屋に春風さんが戻ってきた。
みんなの前にお茶を置き、俺の横まできて、1拍置いてから座る。
テーブルの向こう側に座る夏木さんたちが、おー!と歓声を上げるが、なにが起きているんだ?
「は、早く勉強しちゃお?」
テーブルに勉強道具をひろげた春風さんは早速教科書と睨めっこしている。やる気があるのはいい事だと思う。
15分くらいみんなで教え合いながら勉強していると、インターホンが鳴り、春風さんが立ち上がって部屋を出る。
階段の下から、お邪魔しますと2つの声が聞こえたので、堅治たちが来たのだとわかる。
2人が部屋まで案内され、自己紹介が始まった。
「初めまして。寄宮花江と申します。急な申し出にも関わらず、参加を許可して頂きありがとうございます。太陽くんはお久しぶりです」
中学の卒業式以来なので、約3ヶ月ぶりに会う。
少しパーマのかかったナチュラルボブの黒髪で、真っ白なワンピースを着ている。お嬢様って感じの雰囲気が全身から出ていた。
「久しぶり、花江さん」
俺が短く挨拶するのに続き、各々自己紹介をしていく。
自己紹介が終わると春風さんは今来た2人のお茶を取りに部屋を出ていく。
これで全員揃ったので、春風さんが戻ってきたら勉強再開だ。
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