第17話 調査隊

story teller ~春風月~


 今日あったことを思い返しながら、布団の中でまたドキドキしていた。


 四宮くんとの帰り道。次は1人で行きたいと勇気を出して言った自分を褒めたい。


 あの時の顔はきっと見せられるような物じゃないが、俯いていたのでバレてはないはずだ。


「次に行く時は、なにか手土産持っていかなきゃ」


 今回は直前まで緊張していたので忘れていたが、本来はなにか持っていくべきだったと反省していた。


 陽子さんとも星羅ちゃんとも仲良くなれてよかった。

 陽子さんには是非とも、四宮くんの好きなハンバーグの作り方を教えてもらいたい。

 次会った時に教えてもらえたりして。


 なんて期待してみる。


「よく考えたら、陽子さんも同じ苗字だから、四宮くんの事名前で呼んだ方が良かったかな」


 ふとそんなことを考えて、口に出してみる。


「太陽・・・くん」


 誰が聞いているわけでもないのに恥ずかしくなる。

 布団を頭まで被り、きっと赤くなっている顔を隠す。


 私はほんとうに四宮くんの事が好きなんだな。


 自分の初恋を改めて自覚してしまい、今夜はなかなか寝付けそうになかった。


 ******


story teller ~四宮太陽~


 昼休みも終わりに近づき、教室に戻る途中。

 堅治と別れてから、俺は感じていた違和感を口にする。


「堅治と夏木さんってなにかあったのかな?」


 俺のそんな言葉に対して、春風さんと冬草さんも同じことを思っていたようで。


「私も思ってた、最近遊ぶ時もお昼の時も、全然喋らなかったり、距離を置いてるように見えるよね」


「そうですね。お互いに離れるように座ったり、目も合わせないように見えます。」


 やっぱり、2人もなんとなくそう感じていたらしい。


「でも私、光からなにも聞いてないし、みんなからみたら普通なのかと思って気にしないようにしてた」


「私も月と同じです。」


「俺も堅治からはなにも聞いてないな」


「今日も、みんなでお昼食べよってなったのに、急に、他のクラスの友だちと食べることになったとか言っていなくなるし」


 3人で3階前の廊下に立ち止まり、話し込む。


 すると階段から夏木さんが上がってくるのが見えた。


「あっ夏木さん」


 俺が声をかけると、春風さんと冬草さんも振り向き、夏木さんに視線が集中する。


「えっ、みんなしてなにしてんの?」


「えーっと、、、」


 今話題に出てた本人が来たことにより、俺たちは固まってしまう。


「今日、急にお昼断ったし、なんかあったのかなーとと思って」


「別にとはなんもないよ」


「それならいいんだけど」


「もう昼休み終わるから、早く教室戻んないと」


「そうですね、戻りましょう」


 そうやりとりして俺たちは教室に戻る。


 自分の席につき、次の授業の準備をしていると、ポケットのスマホが鳴る。

 確認すると春風さんにグループチャットに招待されていたので、参加を押す。俺と春風さん、冬草さんの3人グループのようだ。


('MOON' やっぱり光変だったよね?)


('すず' 私もそう思います。なにも言ってないのに、秋川くんとはって言ってましたし。 )


('SUN' 確かに。)


('MOON' この3人でさ、調査隊を結成しようよ!)


('SUN' 調査隊?)


('すず' なんですかそれは?)


('MOON' 光と秋川くんになにがあったのか調べるの!そろそろ球技大会もあるし、その時は別クラスの秋川くんの事もみんなで応援したいじゃん?それに来月から夏休みもあるし、みんなで遊びたいし。あの2人が変なままは嫌だなーって)


 それもそうだ、と思い春風さんを見ると、目があい、笑顔を向けてくる。


('MOON' 2人からしたら余計なお世話かもしれないけど、せっかくみんな仲良くなってきたから、出来ることなら光と秋川くんも仲良しになって欲しいから)


 春風さんは俺たちとの関係を大切にしてくれているんだと思う。


('SUN' わかった、なにが出来るか分からないけど、話し合って協力しよう)


('MOON' 題して、光と秋川くん、仲良し大作戦!なんちゃって)


('すず' 不謹慎ですが、作戦とかいうと少し楽しそうですね)


 あの2人になにかがあったと決まった訳ではないが、こうして、俺たち調査隊は結成されたのだった。

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