第16話 学校での噂
story teller ~四宮星羅~
朝から隣の部屋がうるさい。お兄ちゃんは何をしてるんだ。
お兄ちゃんの部屋のクローゼットは私の部屋の壁の向こう側なので、クローゼットの開け閉めの際には少し音が響く。
部屋を出ると、お兄ちゃんの部屋が空いていて、何やら掃除をしているようだった。
「お兄ちゃん、朝からうるさい」
一言お兄ちゃんに文句を言ってから階段を降りる。
今日は友だちと遊ぶ約束があるので、急いで準備を始める。
______
時刻は昼過ぎ。
駅に付き、着いたよと友だちにメッセージを送り、改札を出て駅前で待つことにする。
「星羅ちゃん・・・?」
壁にもたれてスマホを見ていると声をかけられる。
友だちが来たのかと思い、視線を上げると、そこには会いたくない相手が立っていた。
「人違いです。」
私はそう伝えてまたスマホに視線を戻すも、立ち去る様子がない。
この状況で友だちが来てもめんどくさいな。
「あの、なんですか?」
目の前の相手に、スマホを見たまま質問する。
すると相手は少し私に近づく。
「やっぱり、星羅ちゃんだよね。久しぶりだね」
ああ、ほんとにめんどくさい。久しぶりにここに来て、なぜこの女に会わないといけないのか。
「そうですね。」
私は冷たく返すものの、相手はそれに気づいてないのか、私の横に来て、同じように壁にもたれる。
「太陽くんは元気?」
「ええ、お陰様で。」
「そっか、よかった」
どんな神経をもっていれば、よかったなんて言葉が出てくるのか。
次の瞬間、この言葉も表情も全て造り物の女はありえないことを言ってくる。
「太陽くんに会いたいって伝えてくれる?」
色々と言い返しそうになるが、休日の駅前。人が多いので必死に堪える。友だちにやっぱり、駅前のカフェに入ってるとメッセージを送り、女に向かってただ一言。
「伝えるわけないじゃないですか。」
そう言葉を残し、私はその場から立ち去った。
******
story teller ~四宮太陽~
月曜日。俺は登校するやいなやクラスメイトに囲まれる。
「四宮!お前、春風さんとはどういう関係なんだ!」
「土曜日の夜に2人で歩いているのを見たって人がいるぞ!」
「付き合ってるのか!?」
「休日に一緒に居たってことはそういうことなのか!?」
「みんなちょっと待ってくれ、別に付き合ってないから」
否定するが、クラスメイトの勢いは止まらない。
「でも最近よく一緒に帰ったり、昼休みに一緒にいたりするらしいじゃないか!」
「学校では、クラスメイトだからで説明できるが、休日一緒に居るってことはやっぱり付き合ってるんじゃないのか!?」
この状況。素直に遊んでましたって言うと、火に油を注ぐ気がしてどうしたものかと悩んでいると。
「あのさー、月と四宮は別に付き合ってないよ?最近ワタシとか涼も含めて遊んだり、仲良くしてるってだけ」
夏木さんが来て、助け舟を出してくれる。
「そうなの?じゃあ土曜日に四宮と春風さんが一緒にいたって話は?」
「その日も、ワタシと月と四宮で遊んでの帰り。ワタシの方が家が近かったから先に帰って、その後四宮が月を送ってただけ」
「なるほどな。夏木がそう言うならほんとの事か。」
「まぁ休日に春風さんと遊べてるだけ羨ましいが。けっ!」
夏木さんが説明すると、俺を囲んでいたクラスメイトたちは捌けていく。
「夏木さんありがとう。助かった」
「別に。ほんとの事を言っただけだし。それにあのままだと月にまで色々言う人がいそうだったからね」
それでも助かった事には変わりないので、お礼を伝える。
夏木さんの言い方的に、俺と春風さんが恋人と勘違いされるのは迷惑って事だろう。
次からは気をつけないと。
「あーあと四宮、今日もお昼みんなで食べる?」
「ん?まだ誰からもなにも言われてないけど、そうする?」
「わかんないけど、月にあとで確認してみる」
「わかった」
夏木さんとの会話を終えると、俺は自分の席に戻る。
その日の昼休み、みんなで食べるということになったが、夏木さんは来なかった。
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