第55話 衝撃の告白
story teller ~寄宮花江~
わたくしは自室のベッドの中で、架流さんと通話をしていた。
「今日はどこにいってたのですか?メッセージも全然見てくれないですし」
「ごめんね、寂しかった?ちょっと探偵ごっこをしてたんだ」
「寂しくなんかないですよ」
そうは言うものの、堅治さんと別れてからほぼ毎日一緒にいて、メッセージのやりとりをしているので、急にそれが無くなると少し物足りない気持ちになる。
ちなみに、架流さんはわたくしと堅治さんが別れてからは、体を求めてこなくなった。
その代わり、好きだとか大切だとか言ってくる。
そういう事は、体を求める前に言ってきて欲しかったと思いながら、嬉しくなる自分がいるのも確かだ。
「それで、探偵ごっこと言うのは、葛原さん関係ですか?」
わたくしがそう聞くと、そうだよと答える。
「わたくしになにか出来ることはないですか?例えば、体を使った潜入捜査的な事とか。」
「何言ってんの?そんなのさせるわけないじゃん」
わたくしは冗談のつもりで言ったが、架流さんは、いつもとは違う本気の声でそう言ってくる。
「花江ちゃんは、葛原には関わらなくていいよ。あいつの事だから巻き込んでくる可能性もあるし。危ないことはさせられない」
わたくしが黙っていたからか、いつもの口調に戻っている。
この人はホントにわたくしの事を大切に思っているのかも。もしそうなら、少しだけ心を許してもいいような気がする。
******
story teller ~四宮太陽~
朝起きて、リビングに行くと星羅は既に、朝食を食べていた。
不機嫌そうにパンをかじる星羅に話しかける。
「なんで、朝から不機嫌なんだ?」
「お兄ちゃんのせいだし」
俺は訳が分からず、どういうこと?と聞き返すも無視されてしまう。
さっさと朝食を食べ、いってきますも言わずに星羅は登校してしまった。
「母さん、なんかあったの?」
俺は星羅の様子が気になり、ソファに座り、朝の情報番組を見ている母さんに話しかける。
「彼氏と別れなさいって言ったのよ」
「えっ、なんで」
「だって、葛原さんと繋がってる人なんでしょ?」
母さんの返答に驚く。
確かに繋がってはいるが、めちゃくちゃ間接的にだ。
別れろは言い過ぎな気がする。
「いや、繋がってるって言っても間接的にだし、直接会ったからわかるけど、優希くんはいい子だとおもう。お金のこともちゃんと反省してるように見えたし」
「私は会ったことないし、人は見かけによらないこともあるでしょ。葛原さんがいい例じゃない」
確かにそれはそうかもしれないが。それでも別れろは言い過ぎだと思う。
俺が母さんに話したから星羅は俺に対して怒っていたのだろう。
母さんには黙ってた方がよかったかもしれないと思ってしまう。
______
昼休み、俺はみんなをいつもの中庭に集めてから、昨日の夜、横山架流からきたメッセージの事を話した。
「やっぱり、葛原さんが関わってたんだね」
「うん。でもいくら考えてもお金を渡す理由がわからなくて」
「あの葛原の事だから、なにか考えがあるんだろうけどな。例えば、お金を渡すこと自体が目的ではないとか」
堅治の発言に対し、どういうことだ?と俺は聞き返す。
「いや、すまん、そこまではわからん。でもあいつならそんな回りくどいこともやりかねない」
「よくわかんないけど、葛原ってのがムカつく事は確かだね。こんな回りくどいやり方しか出来ないのかよ。四宮、なんかあればすぐにいってよ。力になるから」
夏木さんの発言に、みんなも頷く。すごく心強い。
横山架流はまだ少し信用出来ないが、今は情報を集めてくれている。俺は頼れる人がたくさんいる事に嬉しくなる。
「じゃあ今日は、星羅ちゃんを迎えに行くんだよね?」
「うん。まぁ怒ってたし、わかったとは言ってくれなかったけど、一応迎えに行こうと思ってる」
俺が春風さんにそう答えると笑顔で提案してくる。
「じゃあさ、みんなでお迎えにいかない?優希くんも!そしたら四宮くんも安心できるし、星羅ちゃんも優希くんと遊べるし!」
確かに、みんなが居てくれたら何かあっても対処出来るだろうし、星羅も優希くんと遊べる。
母さんは嫌がりそうだけど、やっぱり星羅と優希くんを別れさせる判断をするのはまだ早い気がする。
「私だけ星羅ちゃんに会うの初めてですが、私も行っていいのですか?」
「別に大丈夫でしょ。秋川の彼女って紹介するからさ」
少し遠慮がちに聞いてくる冬草さんを、夏木さんが茶化す。
顔を真っ赤にしてまだ彼女じゃないですと言っている。
まだって事はこれから彼女になるのだろうか。
あとついでに、堅治も恥ずかしそうにしてる。
俺たち全員でくるから、優希くんも一緒に遊べるか聞いてみてと、星羅にメッセージを送ると、OKと指で丸を作り、ウィンクしている可愛いキャラクターのスタンプが送られてくる。
朝は不機嫌だったのに、優希くんと遊べるとなると機嫌がよくなったのだろうか。
みんなでどこに遊びにいくかと話をしていると、中庭に続く扉から男子生徒がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
なんだろうと思っていると、俺たちの目の前で立ち止まる。
「あ、あの夏木さん!」
「へっ?ワタシ?」
夏木さんは、まさか自分に話しかけてくるとは思っていなかったようで驚いた表情になっている。
「はい!お食事中にすみません!」
「いや、別にいいけど、どうしたの?」
夏木さんは箸を置き、緊張しているように見える男子生徒の返答を待っている。
「にゅ、にゅうぎゃく、す、すみません!」
「いや、落ち着いて。ちゃんと聞くから」
男子生徒は1度目を閉じ、深呼吸をしてから、俺たちの目の前にも関わらず、衝撃の言葉を口にした。
「入学してからずっと好きでした!付き合ってください!」
夏木さんは驚いた表情を浮かべている。
いや、夏木さんだけじゃなくて、俺たちもだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます