第56話 怪しい部屋
story teller ~光に告白した男子生徒~
昼休みの教室。
ボクはクラスの中心人物である、八代くんたちとご飯を食べていた。
いつもは1人でご飯を食べているが、今日は一緒に食べようと声をかけてきてくれた。
「なぁ、車谷って好きな人いるの?」
「えっ、ボク?」
「おう。車谷ってそういうの興味あるのかなと思ってよ」
ボクにも一応好きな人はいる。1組の夏木光さんだ。
入学してすぐの頃、廊下で友だちと話している時の笑顔を見てから、夏木さんの事が頭から離れなくなっていた。
みんなは夏木さんと一緒にいる、春風さんの方が可愛いというが、ボクは夏木さんも素敵だと思う。
彼女は1組、ボクは3組なので、別のクラスだし、関わりはないけど、たまに見かけるだけで満足している。
「・・・一応いるけど」
「まじか!誰?俺たちの知ってる人?」
「う、うん。知ってると思う」
誰?と興味津々で聞いてくる、八代くんに素直に答えたのが間違いだった。
今すぐ告ってこいよと言われたのである。
気弱なボクが断れるわけもなく、ご飯の途中にも関わらず、夏木さんを探して校内を歩き回った。
******
story teller ~四宮太陽~
俺たちは突然の告白に、驚き、固まってしまう。
いや、告白自体はいいが、それを俺たちの前でやった事に驚いたのだ。
「あっ、すみません。迷惑でしたよね」
俺たちがなにも言わないことに不安を覚えたのか、男子生徒は慌てている。
「いや、迷惑・・・ではないんだけどさ。場所を選ぶとかできなかった?」
夏木さんの言葉で気づいたのか、すごく恥ずかしそうにして、しゃがみこんでしまう。
夏木さんは、隣に座る春風さんに弁当を渡し、男子生徒の前に同じようにしゃがみこむ。
「あっごめん。ほんと迷惑とかじゃないから。ね、みんなも迷惑とか思ってないよね?」
夏木さんも少し戸惑い、俺たちに同意を求めてくるので、みんなで迷惑じゃないよと伝える。
「すみません。みなさんの前で、食事の邪魔までしてしまって」
「ほんと大丈夫だから、とりあえず座りな?」
男子生徒は夏木さんに促され、堅治の横に座った。
______
夏木さんに告白した男子生徒は、
メガネをかけた、少し細めの体型で、髪の毛が肩まで届きそうなくらい長く、前髪で顔の半分が隠れている。
それ前見えてるのかな。それにめちゃくちゃ暑そう。
「オレたちの目の前で告白するのには、確かに驚いたけど、お前逆に勇気あるよ。オレは気に入ったぜ」
堅治は車谷の肩をバシバシ叩きながら、楽しそうにしている。
車谷はめちゃくちゃ萎縮してるけど。
「それで、光はなんて返事するの?」
車谷本人がいるにも関わらず、春風さんはめちゃくちゃ目を輝かせて光に聞いている。
冬草さんもおろおろしているが、興味津々なのが顔に出てる。
やめてあげて、車谷がもう死にそうな顔になってるから。
「いや、まぁなんていうか、気持ちは嬉しいけど、車谷の事なにも知らないし、付き合うことは出来ない。ごめんなさい」
普段は強気な夏木さんも、今回ばかりは車谷に気を使っているのか、ほんとに申し訳なさそうな顔をしている。
「い、いえ、振られるのはわかってましたし、大丈夫です」
そうは言うが、今にも泣きそうな顔をしている。
なんか車谷をめちゃくちゃ励ましたい。
「なにも知らないなら、これから知っていけばいいじゃん」
「どういうこと?」
発言の意図に気づいていない春風さんに、堅治はだからさと続ける。
「車谷と友だちになればいいんだよ。一緒にお昼食べたり、遊びに行ったり」
堅治はきっと車谷を応援したくなったのだろう。
俺も応援したいし。
「あっ、それいいかも!」
春風さんも嬉しそうだ。たぶん、夏木さん以外はいいねそれと思っている。
「そうしようよ!さすが秋川くんだね!涼の事もっと知ろうと頑張ってるだけあるよ!」
「そ、それは今関係ないだろ!」
春風さんにそう言われ、堅治は恥ずかしそうにしている。
車谷にも、えっ、秋川くんと冬草さんってそういう関係なんですか?と聞かれている。
「ごめんごめん。それで光はどう思う?」
春風さんに聞かれ、顔を隠しながら、いいんじゃない?と答えている。
たぶん告白されたこと自体は嬉しいけど、振った手前、答えにくいのだろう。
恥ずかしさが顔に出てて、バレないように隠しているのだ。
はい、また夏木さんに睨まれた。ほんとナチュラルに心読むよなこの人。
そして、俺たちは新しい友だち?が出来たのだった。
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