第54話 横山架流からの連絡

story teller ~ある中学生~


 いつものように学校をサボって、友だちの家でダラダラとしていた。

 漫画のページをペラペラと捲るが、既に何度も読んでいるためつまらない。


「なー、斉藤。なんかする事ないのか?」


 部屋にいる5人のうちの1人が俺に話しかけてくる。


「なんもする事ねぇなー」


「彼女でもいたら、男だけで集まることなくヤリまくれるのに」


「彼女でもってどこで出会うんだよ」


「確かにな。俺たち学校すらいってねぇもんな」


 俺たちは中学生なので、学校以外だと出会いも限られる。

 だからといってSNSで出会うにしても、メッセージなどの過程もめんどくさい。

 男で集まるのがいやだといいながらも誰も行動しないのは、彼女が欲しいのではなく、ただ楽にヤリたいだけなのだ。


「そういえばさ、最近知り合った女子高生がいてさ」


 友だちのその言葉に、俺を含む他4人が反応する。


「女子高生?どこで知り合ったんだよ」


「向こうからDMが来てさ、めちゃくちゃ可愛くて、会いたいって言ったらすぐ会ってくれたんだよ」


「おお!」

「ヤッたのか?」


「いや、それがさ、スーツ着た男と一緒に待ち合わせ場所にきたんだよ。まじ焦った」


「大丈夫なのかよ」


 俺らは男と来たと聞いて、女子高生よりもそっちに興味が湧く。心配よりも話の続きが気になる。


「おう、別に普通の男の人だったんだけど、そいつにお願いされたんだよ」


「なにを?」


「なんか、俺とヤリたい女がいるらしくて、そいつとヤッて欲しいんだってさ。しかもヤッたあと金も貰えるらしい」


「まじかよ。羨ましい」


「まぁまだわかんねぇけどな。その女が俺とヤル準備が出来たら連絡するとかで、まだ連絡きてねぇし」


 めちゃくちゃ羨ましい。けど、それって大丈夫なのか?

 そんな上手い話あっていいのだろうか。

 俺はそんなことを考えるが、他の奴らは違うらしい。


「なんでお前だけそんな話になってんだよ!」

「そうだぜ、俺らも誘えよ!」


「だから今話しただろ。連絡きたらよ、みんなでヤろうぜ。まぁ俺がヤッたあとでよかったらな」


 そういってみんな盛り上がっている。

 斉藤はどうする?と聞かれ、その場の雰囲気に飲まれ、俺も参加すると言ってしまった。


 ******


story teller ~四宮太陽~


 自宅に帰ってきた俺は、星羅と一緒に母さんに今日の話をした。

 母さんは俺たちの話を聞いて、お金のことがちゃんと解決したのなら、星羅も外出は好きにしていいとの事。

 ただし、午後8時までには帰ってくると約束するならという条件付きではあるが。

 優しすぎる気もするが、自分たちでちゃんと解決したことで、信用してくれたということだろう。

 俺の方はまだ葛原の事があるから、少し心配ではあるが。


 自室に入り、スマホを確認すると、メッセージが届いているのに気づいた。

 メッセージを送ってきていたのは、俺が返事を待っていた相手。横山架流だった。


 横山架流からのメッセージにはこう書かれていた。

 お金は葛原が用意して、何名か経由した後、星羅の彼氏、優希くんに渡されていたこと。

 お金を渡す理由までは分かっていないが、中学生と繋がり、情報を集め、星羅と優希くんの関係を調べあげていたらしい。


 高校生にここまで出来るのかと思うが、葛原なら出来るかもしれない。

 葛原は見た目だけで言えば、とても可愛い。

 その見た目で、男を誘惑し、その見返りとして自分の望むものや情報を集めることも可能だろう。

 特に、思春期の男子高校生や男子中学生が相手であれば、も可能なはず。

 男から男を紹介してもらう。あるいはSNSを通してコンタクトをとれば、地道に星羅や優希くんの情報を集めることも可能だろう。


 なんにせよ、今は星羅と優希くんにはあまり出歩いて欲しくない。

 優希くんがお金を受け取らなくなることで、別の方向からアクションを起こしてくる可能性もある。


 横山架流にありがとうございますとメッセージを送り、星羅に話をするために、部屋を出る。


 星羅の部屋の扉をノックし、返事が返ってきたのでそのまま入る。


「星羅、明日は学校が終わったら迎えに行くから、学校で待っててくれ」


「なに急に?明日は優希くんと遊びに行くんだけど」


「当分は遊びに行くのはダメだ」


「意味わかんないんだけど。お母さんはちゃんと時間守るならいいって言ってたじゃん」


 急にダメだと言われ、星羅は当然だが不機嫌になる。

 もうちゃんと星羅にも伝えるしかないと思い、葛原の事を話す。


「は?余計意味わかんないんだけど。葛原さんがお兄ちゃんに手を出てくるならわかるよ?でも私と優希くんに手を出す理由がないじゃん」


「いや、あいつはそういう奴なんだよ」


「意味わかんない。もういいから出てって」


 そういって無理やり部屋の外に押し出される。

 部屋を出る直前に、明日は迎えに行くから絶対学校で待っててと伝えるが、きっと聞いていないだろう。


 部屋を追い出された俺は、そのまま1階に降り、母さんに、優希くんが受け取っていたお金は、葛原が用意したお金であったことを話す。


「葛原ってあの葛原さん?」


「うん、あの葛原だよ」


「どうして今頃?それにその優希くん?にお金を渡す意味がわからないのだけど」


 そこまではまだわからないと伝えると、母さんは意外にも冷静に、明日の朝私からも星羅にまっすぐ帰ってこいって伝えると言ってくれた。


 過去に、俺と葛原の間でがあったのだからもう少し取り乱すと思っていた。


 母さんが冷静でよかった。


 自室に戻った俺は、とりあえず今できることは終わったと気を緩め、眠りにつくのだった。

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