第11話 四宮家 1
story teller ~夏木光~
目の前の男に対して、手にした服を見せるもう1人の親友をみてワタシは気づいた。
何度も恋する女の子の顔を見てきた。だからわかる。
あっこの子も恋をしたんだと。
確かに今一緒にいる男は俗に言うイケメンの部類だと思う。
でも昼休みに初めて会ったはずだし、どのタイミングで?とは思うが、同じ学校だし、もしかしたらどこかで見かけて一目惚れという可能性もある。
だが先程まではそんな顔はしていなかったはず。
まぁともかく、月と四宮を2人きりにする事には成功した。向こうもどうなっているか気になるが、今は目の前の男に気を配ろう。
この男はここ最近、月の事をなにやら聞いて回っているらしい。他クラスの知り合いの女子を通して、そんな話がワタシの耳に入ってきた。
こいつも月を狙っているとしたら、涼本人も気づいていない気持ちを傷つける可能性がある。
涼にはワタシと同じ経験をして欲しくないし、なにより親友2人を守るためにはワタシが警戒しないといけない。
******
story teller ~四宮太陽~
6月に入り、最初の土曜日。
俺は朝早く起きて部屋の掃除をしていた。元々そんなに汚れてないが、念の為である。
妹の星羅に朝からうるさいと言われたが、どうせ出かけるだろうし、気にしないでおく。
母さんは起きた時には既にいなかったが、きっと趣味友と出かけているのだろう。
一通り掃除が終わり、ゆっくりしていると、玄関の呼び鈴がなる。
急いで階段を降り、玄関を開けると、春風さんと夏木さんが立っていた。
「よ、ようこそ」
「こんちゃ、入っていい?」
「もう、光ってば、人様のお家に入るのにそんな態度はダメでしょ?」
ショッピングモールに行った日以降、あの5人で遊びに行くことが増えた。
基本的に放課後にファミレスに行ったり、公園でだべったりではあるのだけど。
今日は、春風さんが前から気になっていたゲームを俺が持っているということでやってみたいという話の流れになり、家に来てもらった。
もちろん、堅治と冬草さんも誘ったが、2人は用事があるとの事で、今日は春風さんと夏木さんと俺の3人だ。
「おじゃましまーす。えっと、四宮くん、親御さんはいる?挨拶したほうがいいよね?」
「母さんは起きたら既にいなくて、父さんは単身赴任で他県にいるから、大丈夫だよ?」
そう伝えると、そうなんだ。わかったと春風さんは返してくる。
「俺の部屋、2階の手前の部屋だから先に上がってて。飲み物とか持っていくから」
俺は春風さんと夏木さんに部屋の場所を教え、リビングに飲み物と少しのお菓子を取りに行く。
準備をして部屋に戻ると、ベッドの下を覗き込む夏木さんと、それを慌てて止めようとする春風さんがいた。
「ちょ、ちょっと夏木さんなにしてるの!?」
「えっ?男子高校生だし、やらしい本でも持ってるかと思って」
「光!ダメだよ、四宮くん困るし、他のところに隠してるかも知れないでしょ」
うん、俺がそういう本を持っている前提で話が進むんだ。まぁ残念ながらそういうのは全て別の場所に隠してあるが。
ちぇーなんもないのかよーといいながら座り直す夏木さん。
俺は前もって出していたローテーブルの上に用意したジュースとお菓子を起き、床に座る。
「四宮くん、飲み物とかありがとう」
「いえいえ、気にしないで」
あの春風さんが俺の部屋にいると思うと緊張してくる。その春風さんの横には座りながらも部屋中を見渡す夏木さんがいるからまだマシだけど。
「四宮って意外と部屋綺麗にしてるんだね。もしかしてわたし達が来る前に掃除した?」
俺に聞いてくる夏木さんに悟られないように、そんな事ない、元々綺麗だしと返す。
「んで、今日はなにするんだっけ?」
「えっと、春風さんがゲームしたいんだよね?」
「うん!いつも実況で見てるだけだけど、自分でもずっとやってみたくて!」
めちゃくちゃ笑顔で目を輝かせている春風さんが可愛い。やばい、超可愛い。
そう思っていると、夏木さんがこっちを見てニヤニヤしている。
可愛いとか思ってるのバレてるんじゃないかと恥ずかしくなり、俺は立ち上がって前もって机に出していたゲームソフトを春風さんの前に差し出す。
「一応、春風さんがやってみたいって言ってたゲームのシリーズなんだけど、一通り持ってるからさ。どれからやりたいとかある?」
「これってストーリーとか続いてるの?もしそうなら最初からやってみたいんだけど」
「特にストーリーとかは繋がってなくて、それぞれで完結してるから、どれからやっても問題ないよ?」
「うーんとね、じゃあこれやってみたい!」
目の前に並ぶゲームソフトのうち、1つを春風さんが指さす。俺はそのソフトを取り、部屋にあるモニターの電源とゲーム機の電源を入れる。
ゲーム機にソフトを入れると、タイトル画面が表示される。
「はい、これで準備完了。あとはこのコントローラーで操作できるから」
そう言って俺は春風さんにコントローラーを渡す。
コントローラーを受け取った春風さんは目を輝かせて、画面を見つめる。
そんな春風さんの横顔を見ながら、嬉しそうな顔の夏木さんをみて、ほんとに仲がいいんだなと思った。
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