第15話 帰り道にて
story teller ~夏木光~
放課後の特別教室棟3階。その建物の1番端にある非常階段で、ワタシは待ち合わせをしていた。
待つこと数分、昼休みにメッセージを送った相手。秋川は扉を開けて外に出てきた。
「すまん、少し遅くなった。SHRが長引いてさ」
「別に気にしないで。急に呼び出したのはワタシだし」
ワタシが伝えると、目の前の男は聞いてくる。
「それで、話っていうのは?もしかして告白か?」
「なわけないでしょ。」
「そうだよな。まぁ雰囲気的にじゃない事はわかってたけど」
発言はふざけているが、秋川の表情はここに来た時からずっと真面目なままだ。
「遠回しに聞くのは嫌だから、端的に聞くけどさ。月の事を聞いて回ってるらしいけど、なにが目的?」
「やっぱ、夏木さんの耳にも入ってたか。」
秋川は気まづそうに頬をかく。
「でもごめん、話せない。」
「話せないって何?月の事狙ってるわけじゃないの?」
ワタシは少し口調が強くなる。
「なるほど・・・ 。誓って言う。違う。」
「じゃあなんなの?」
「太陽の為だ。太陽が傷つかないようにする為だ」
四宮が傷つかないように?どういうこと?
「四宮となんの関係が・・・」
「これ以上は答えられない。ほんとにすまない。でもオレも聞きたいことがある。答えられなければ答えなくてもいい」
「聞きたいこと?」
「答えによってはもう春風さんの事を聞いて回ることはしなくて済むかもしれない」
ワタシはどんな質問が来るのかと唾を飲む。
「春風さんは太陽の事をどうおもってるんだ?」
******
story teller ~四宮太陽~
俺は春風さんと住宅街を歩いていた。
夏木さんの家は春風さんの家よりも近く、先に送り届けたので今は春風さんと2人だ。
「今日はほんとにありがとう!」
「それならよかった。母さんと星羅がごめんね」
「ううん、星羅ちゃんも可愛くて楽しかったよ!ご飯もご馳走様!」
そう言った春風さんは笑顔だったので、きっと本心だろう。
「ゲーム楽しかったし、次は涼と秋川くんも一緒に出来たらいいね」
「そうだね。みんなで遊べたらいいね」
「うん!他にもみんなで色んなところ行けたらいいなぁ」
そう言いながらその場でくるりと回る春風さん。
履いているスカートがふわりと上がって、白い太ももが見えて目を逸らしてしまう。
「ん?四宮くん?どうしたの?」
「う、ううん、なんでもないよ。あはは」
俺が誤魔化すと、首を傾げている。
凄く可愛いけど。
話しながら歩いていると、春風さんの自宅付近に着く。
「送ってくれてありがとう。もう近いからここまでで大丈夫だよ」
「うん、わかった。こちらこそありがとう。それじゃまたね」
そう言って来た道を戻ろうとすると、服の裾を掴まれる。
「えっと、春風さん?」
「あっごめんなさい。その、えっと」
何かを伝えたいのか、俯いて顔を伏せて言い淀んでいる。その間も服の裾は掴まれたままなので、どうしたのだろうと言葉を待つ。
「あのね、RPGのゲームがまだ途中でしょ?」
そういえばそうだと思い、そうだったねと返す。
「だからね、その、また続き、やりに行ってもいいかな?今度はそのぉ、、、1人で」
「えっ!?あっ、うん、全然。空いてる日ならいつでも大丈夫だよ。母さんたちもまた連れてきてって言ってたし」
「ほんと!!あっ、えっと、ありがとう。えへへっ」
俺の返事を聞くと、顔を上げ、春風さんが笑顔を見せる。
「引き止めて、ごめんね!それじゃまた!」
「うん、それじゃあ」
俺は春風さんに手を振り、来た道を戻る。
1人でと言われた時はドキッとした。
春風さんは俯いていたので、表情はわからないが、髪の間から見えた耳が赤い気がした。
もう暗いから、きっと俺の見間違えかもしれないけど。
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