第14話 四宮家 4

story teller ~夏木光~


 ワタシはお手洗いに行ってくると月と涼に伝えて席を立つ。


 トイレの個室に入り、ポケットからスマホを取り出して、メッセージアプリを立ち上げ、先日ショッピングモールに行った際に連絡先を交換した男のトーク画面を開く。


 まだ1度もやりとりをしていない、まっさらなトーク画面に文字を打ち込んでいく。


 あの男がなにを考えているかわからない。

 直接確認してやる。


 四宮の友だちということもあり、手を出してきたりはしないだろうが、相手は男だし、自分よりもずっと背も高い。それだけでも少し怖いと思う。


 でも2人を守るためなら


 ワタシはそう意気込んで、打ち込んだメッセージを送る。


 今日の放課後、話したいことがあるんだけど。


 まっさらだったトーク画面に初めてメッセージが浮かぶ。


 ******


story teller ~四宮太陽~


 母さんの提案で、春風さんと夏木さんの2人は俺の家で、晩御飯を食べて帰ることになった。


 母さんが料理している間どうしようかと思ったが、遊びに行っていた星羅が帰宅し、母さん譲りのフレンドリーさですぐに2人と打ち解け、女性陣は盛り上がっていた。


「お兄ちゃんも隅に置けないね〜。こんなに可愛い女の人を2人もうちに連れてくるなんてさ〜」


「いやいや、可愛いのは月だけで、ワタシは可愛くないよ」


「何言ってるんですか!光さんもとっても可愛いですよ!」


「そうだよ、光はとっても可愛いよ!」


「ちょ、2人ともやめて。可愛いって言わないで」


 星羅と春風さんの言うように、夏木さんも春風さんに負けず劣らず整った顔立ちだと思う。

 背中の中心まで伸びた綺麗な黄金色の髪で見た目で、よく男を睨みつけているらしく、少し近寄り難いイメージはあるが、夏木さんのほうが可愛いと言う声も学校で何度か耳にしたことがある。

 まぁその辺は好みの問題なのだろう。


 そんな少し怖いイメージの夏木さんが2人から可愛い可愛いと言われて照れる姿は、確かに少し可愛い。


 そんなことを考えながら3人のやりとりを見ていると、夏木さんに睨まれる。


 ナチュラルに心を読まないで頂きたい。


「太陽、星羅。ご飯できたからテーブルに運んでちょうだ〜い」


 キッチンから母さんに呼ばれると、春風さんと夏木さんが私たちもとソファから立ち上がろうとするのを 星羅が月さんと光さんはいいですよと制する。


 ダイニングにあるテーブルに料理を運び終わり、春風さんたちに声をかけてから、5人でテーブルを囲む。


 今日は俺の好物のハンバーグがある。


「遠慮しないでたくさん食べてね?」


「はい、ありがとうございます。いただきます」


「ありがとうございます。いただきます」


 春風さんたちに合わせて、俺もいただきますと言ったあと、真っ先にハンバーグに手をつける。

 やっぱり母さんのハンバーグは美味しい。


「ハンバーグは手作りだから、月ちゃんと光ちゃんのお口に合えば嬉しいんだけど」


「えっ!このハンバーグ手作りなんですか!?とっても美味しいです!」


「それならよかった、太陽の大好物なのよ」


 春風さんに美味しいと言われたのが嬉しいのか、要らない情報まで共有しだした。

 高校生になって、ハンバーグが好物というのは少し子供っぽいと思っていたので恥ずかしい。


 今度作り方教えてあげるわねとか春風さんに言ってるし。


 そんな母さんたちのやりとりを聞きながら、食事を進めていると、隣に座る星羅が耳打ちしてくる。


「で、お兄ちゃんは月さんと光さん、どっちを狙ってるの?」


「別に狙ってるとかじゃなくて、ただの友だちなんだけど」


「えー、ほんとかなぁ?私としてはどっちがお姉ちゃんになってもいいんだけどさ」


 星羅はそういうとイタズラっぽく笑う。


「そういうのじゃないから。それにそんなつもりないし、向こうも俺の事そういう風には見てないだろ」


 俺が否定すると、星羅はそうは見えないけどなぁと箸を咥えながら言う。

 なんで母さんも星羅もそっち方面に話を持っていくのか。


 でもまぁ今日のこの時間は賑やかで、嫌いじゃないなと思った。

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