第46話 春風さんの誕生日
story teller ~四宮星羅~
自宅近く、私は人生で初めて出来た彼氏に送って貰っていた。
「優希くん、いつもありがとね。でもいつも奢ってもらうのは申し訳ないよ」
「気にしないで、俺が出したくて出してるだけだから」
私はおこずかい制なので、毎月使えるお金に限度があり、いつも優希くんに奢って貰っている。
優希くんはこう言っているが、正直申し訳なさが勝ってしまう。
「優希くんはどこからこんなにお金もってくるの?」
優希くんの家も一般家庭のはずなので、遊ぶ度に出せるほどおこずかいを貰っているはずはない。
「仲のいい先輩がいてね、その人からおこずかいだって言って渡されるんだ」
「それって大丈夫なの?危ないお金じゃない?」
「その人も最近知り合った先輩から貰ってるらしいから大丈夫だと思うよ」
私は不安になるが、優希くんが大丈夫と言うのなら大丈夫だろう。そう自分に言い聞かせた。
もう辺りも暗くなり、お母さんやお兄ちゃんからの電話も何度か来ている。
帰らなければいけないが、もう少し一緒にいたい。
「まだ帰りたくない。優希くんと一緒にいたい」
「ダメだよ、ちゃんと帰らなきゃ。また明日学校が終わったら遊びに行こ?」
「わかった。約束だよ?絶対だよ?」
「うん、約束」
私たちは指切りをして、それぞれ帰路につく。
また明日会える。そう思うと少し足取りが軽くなる。
******
story teller ~四宮太陽~
9月17日。春風さんの誕生日がやってきた。
「四宮くん、いらっしゃい。今日は月の誕生日に来てくれてありがとうね」
「こんにちは、桜さん。こちらこそ、お招き頂きありがとうございます」
俺は春風さんの家に入り、玄関で出迎えてくれた桜さんに挨拶をする。
「今日はたくさんお料理作ったから、たくさん食べて行ってね」
はいと答え、桜さんに続いてリビングに入る。
既にみんな揃っていて、俺が最後だったようだ。
「いらっしゃい、四宮くん。来てくれてありがとう!」
本日の主役と書かれたタスキを肩からかけ、鼻と髭のついたおもちゃのメガネを付けている春風さんをみて笑ってしまう。
「こ、これは光が持ってきて、それでつけてるだけだから!これダサいよね?」
恥ずかしそうに顔を赤らめているが、そんな物を身につけても春風さんの可愛さは全然変わらない。むしろプラスである。
「じゃあ四宮くんも来たことだし、お料理出しますよ〜」
「手伝いますよ」
「私も手伝います」
「太陽、オレたちも手伝おうぜ」
桜さんの作った料理をみんなで運び、テーブルに並べていく。とても美味しそうだ。
1番驚いたのはケーキである。見た目が完全にお店売られていても問題ないくらいの出来栄えである。
料理を並び終え、みんなでテーブルを囲む。
「四宮、はいこれ隣に回して行って」
俺は夏木さんからクラッカーを受け取り、横に座る堅治に渡す、堅治は更に横に座る冬草さんに回す。
全員にクラッカーが行き渡り、みんなで構える。
「それじゃあ、月、誕生日」
「「「「「おめでとう!!!」」」」」
一斉にパンパンパンとクラッカーを鳴らす。
「みんなありがとう!!」
そういうと目の前にあるケーキに刺さったロウソクの火をふっーと消していく。
消し終わった春風さんは笑顔で楽しそうだった。
まだメガネかけたままだけど。
その後みんなで桜さんの料理を食べ、トランプやボードゲームで遊び、プレゼントを渡す時がきた。
みんな各々が選んだプレゼントを渡していき、春風さんはその全てをその場であけていく。
夏木さんからはハンドクリーム、冬草さんからは春風さんが最近ハマってるらしいバンドのCD、堅治からは少し高いチョコレート。
俺が1番最後となり、手に持っている小さな紙袋を渡す。
「四宮くん、ありがとう!あけてもいい?」
「うん、いいよ」
俺に許可を取り、春風さんは紙袋から小さな箱を取り出す。
箱に結ばれたリボンを優しい手つきで解き、箱を開ける。
俺は自分の選んだものが正解なのかわからず不安になる。
「ネックレスだ」
「うん、三日月の飾りが可愛くて。それに春風さんの名前も'月'だったなと思って」
俺は少し恥ずかしくなり、視線を逸らしてしまう。
いつの間にか少し頬が赤くなった春風さんが、箱からネックレスを取り出す。
「とっても可愛い。ほんとに嬉しい。ありがとう四宮くん!大切にするね!」
「ありがとう、喜んでもらえてよかった」
嬉しそうにネックレスを首元に持っていき、その場で付けてくれた。選んだ側としてはその場でつけてもらえるのがすごく嬉しい。
そのあとも、みんなでワイワイと楽しみ、春風さんの誕生日を楽しく祝うことができた。
その間中、付けているネックレスを確認しては嬉しそうに笑う春風さんをみて、選んでよかったと心から思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます