第47話 私が聞いてみる?

story teller ~春風月~


 誕生会が終わったあとも、私はネックレスを1度も外さずに鏡の前で何度もネックレスを確認する。

 四宮くんが選んでくれたネックレス。

 私の為に選んでくれたプレゼント。

 三日月の飾りがほんとに可愛くて、見た瞬間お気に入りになった。


「嬉しいなぁ」


 もちろん、みんなから貰ったプレゼントも嬉しい。

 みんな私の事をたくさん考えて選んでくれたのだろう。

 私は暖かい感情を胸に感じながら、お風呂に入るため、ネックレスを首から外す。


 そういえば、箱を開いてネックレスを見た時に、四宮くんが名前を呼んでくれた事を思い出す。

 選んだ理由を話してる時だから、仕方なく呼んだのかもしれないがそれでも不意打ちだったからドキドキした。


「また名前呼んで欲しいな」


 鏡の中の自分に問いかけるように、ポツリと呟いた。


 ******


story teller ~四宮太陽~


 3時限目の現国の時間。

 教科書を忘れたという春風さんに教科書を見せるため、机をくっつけて授業を受けていた。


 俺はぼーっと黒板を眺めながら、授業とは関係ない事を考えている。

 昨日も一昨日も、星羅は出かけていて帰ってきたのが遅い時間だった。昨日にいたっては午後10時を過ぎてから帰ってきたので少し注意をすると、うるさい、お兄ちゃんには関係ないと言われたのだ。

 やっぱりなにか、俺には言えないことをしているのではないかと思ってしまう。


「四宮くん?」


 葛原の件もあるが、一応しっかり帰ってきてはいるし、様子を見る感じ、そっちの心配はないような気もする。

 そうなるとやはり、星羅が自分からよからぬ事をしているのではないか、でも星羅はそんなことをするような子じゃない。でもなぁ。

 心配と不安。星羅への信頼と疑い。こんな感じで考えが堂々巡りしている。


「四宮くん!」


「へぁ!?」


 春風さんに小声ながらも力の入った声で急に話しかけられ、変な声が出る。

 現国の教科担任に、四宮くんどうしました?と言われ、なんでもないですと慌てて返す。


「なに?」


「さっきから呼んでるのに反応がないから」


 呼ばれていたことにも気づかないくらい考え込んでいたらしい。


「なにか考え事?」


 俺の様子を見てそう思ったのか、春風さんは私でよければ聞くよ?と言ってくれる。

 俺は最近、星羅の帰りが遅かったり、外でご飯を食べてきて、友だちにお金を出してもらっている事を話す。


「葛原の件もあるから、心配なんだけどさ、星羅も年頃の女の子だし、俺には話せない事とかもあるのかと思って。あんまり干渉しすぎるのもダメなのかなーとか考えててさ」


「そんな事があったんだね」


 そういうと春風さんは心配そうな顔をしている。


「まぁさすがに母さんも怒ってさ、今日は俺が帰りに迎えに行くことになってるんだ。当分は外出禁止にするって言ってたから少し可哀想だなとは思うけど」


「そうなんだ。でも陽子さんも心配だから怒ったんだろうし、仕方ないよね」


 怒られた事への反抗もあるのだろうが、母さんにそこまで言われても、誰と遊んでるとか遅くなる理由を話すことはなかった。

 なにか隠してることでもあるのかもしれない。


「うーん。」


「どうかした?」


 なにか考えるように顎に手をやり、ノートに視線を落とす春風さんに俺が問いかけると、四宮くんの家庭のことだから迷惑かもしれないけどと言ってから続ける。


「今日の帰り、私も一緒に星羅ちゃんのお迎えに行っていい?私が星羅ちゃんに話聞いてみようと思って」


「全然迷惑じゃないよ。むしろいいの?」


「うん!もしかしたら、家族だから言えないって事もあるのかなって」


 星羅は会ったばかりの春風さんにすごく懐いていように見える。それなら確かになにか話すかもしれない。

 そう思い、春風さんにありがとう、よろしくお願いしますと伝える。


「もしなにか聞けたら四宮くんと陽子さんにも報告するね」


「うん、とっても助かる」


 俺は少し気分が楽になり、改めて、ありがとうと伝えてから授業に気持ちを戻す。

 頼りになる友だちがいてよかった。

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