第48話 悩み
story teller ~星羅の彼氏~
1学年上の先輩に呼び出され、俺は先輩の住むアパートの下で待っていた。
「よぉ優希」
階段を降りてきた先輩は俺に声をかける。
中学3年生にして、髪の毛を金に染めていて、眉も細い。上下セットのスポーツメーカーのジャージを着ており、いかにもヤンチャしてますという風貌だが、根は優しい人だ。
元々サッカー部に所属していた繋がりで、今もこうして定期的に会う仲である。お互いに辞めてしまったが。
「こんばんわ、先輩」
俺は先輩に頭を下げて挨拶すると、少し移動しようぜと言うので、アパートのそばにある公園まで移動する。
2人でベンチに座ると、先輩はポケットから封筒を取り出す。
「ほれ、お前にって預かってたやつ。いくらか抜いたけどな」
先輩から受け取った封筒の中身を確認すると、1万円札が大量に入っている。
「ありがとうございます。けど俺なんもしてないのに、いつも貰っちゃっていいんですか?」
「俺もよくわかんねぇけど、お前に渡せって金城さん、あーっと、先輩に言われてるんだよ」
金城という名前に聞き覚えがないので俺の知らない人なのだろう。
誰がなんの為に渡してくるのかわからないが、中学生ということもあり、バイトも出来ない身としては嬉しい限りではある。
「でも羨ましいぜ。俺もそんな大金欲しいなぁ。お前に渡さなかったことがバレたら、先輩に詰められるからちゃんと渡すけどな」
「じゃあ今からなんか食べます?俺が奢るなら別に問題ないですよね?」
俺がそういうと、良いのか!と目を輝かせる。
いつもお世話になっているし、元々貰ったお金なので使いまくっても問題ないだろう。
******
story teller ~四宮太陽~
俺と春風さんは星羅を迎えるため、自宅とは逆方向に向かって歩いていた。
ちなみに、春風さんは校区(学区)が違うため、星羅とは違う中学校に通っていたらしい。
「何回か近くは通ったことあるけど、ちゃんと行くのは初めてだから、少しワクワクするね」
「俺もこっちに引っ越してきたのは、高校入学直前だから初めて行くんだよね」
スマホの地図を頼りに2人で並んで歩く。
いつも帰る時は途中までは夏木さんがいるので、最初から2人きりなのは、知り合ってすぐ、一緒に帰った時以来だ。
2人きりと言うことを意識しだすと、少し緊張してくる。
なるべく意識しないようにしなければ。
雑談しながら歩き、目的の中学校が見えてくると、正門の前に星羅が立っているのが見えた。
向こうもこちらに気づいたらしく、小走りで近づいてくる。
「こんばんわ、月さん!なんでお兄ちゃんと一緒なんですか?」
俺には目もくれず、春風さんに話しかけている。
「こんばんわ、星羅ちゃん。実は四宮くん、星羅ちゃんのお兄さんから色々話聞いちゃって」
「そうなんですか。」
先程までの笑顔が消え、少ししゅんとなる。
もしかして、春風さんにも怒られると思っているのだろうか。
そんな星羅の様子を見て、春風さんは焦ったように続ける。
「あっ、えっと、お説教しに来たんじゃなくてね。私でよかったら話聞こうかと思って。もしかしたら星羅ちゃん、なにか悩んでるのかなって」
「悩み・・・ですか?」
「そう。帰りが遅いのとか色々。四宮くんや陽子さんに理由が話せないのはなにか悩んでることがあるのかと思ったんだけど違った?」
春風さんは星羅の目線に合わせるように、少し屈む。
「悩みというか。・・・そのうまくは言えないんですが、聞いてくれますか?」
その言葉に、春風さんはうんと頷く。
自分の部屋で、春風さんと2人きりで話がしたいということで、俺たちは1度帰宅する事にした。
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