第49話 星羅の部屋にて
story teller ~四宮星羅~
私は自室の扉を開き、月さんにどうぞと伝える。
急な事だったので、掃除をすることも出来ず、少し散らかっているのが恥ずかしい。
これなら普段から片付けるよう心掛けておけば良かった。
「失礼します」
月さんは丁寧な口調でそういうと、私の部屋に入ってくる。
「散らかっててごめんなさい」
「ううん、私の部屋より綺麗だから大丈夫だよ」
そう言われるが、部屋の中を見られるのは落ち着かない。なんも変なもの置いてなかったよね。
「早速だけど、最近帰りが遅いって聞いたんだけど、なにかあったの?」
私の用意したクッションの上に座り、私が答えやすいようになのか、優しい表情で答えるのを待っている。
「えっと・・・それはですね」
いざとなると少し恥ずかしい。
彼氏と少しでも長くいたくてなんて言いにくい。
それでも、お兄ちゃんやお母さんに話すよりはマシだろう。
私は恥ずかしいのですがと一言伝えてから、続ける。
「・・・彼氏と少しでも一緒にいたくて」
私は恥ずかしさで顔が赤くなるのが分かる。
私の言葉をきくと、月さんが嬉しそうに笑っている。
「えっ!彼氏が出来たんだ!」
「ちょ、ちょっと!月さん声が大きい!」
月さんは手で口を抑えながら、ごめんねと言うと、小声で聞いてくる。
「それで彼氏さんとはどうやって付き合ったの?やっぱり彼氏さんから告白してきたの?それとも星羅ちゃんから?」
「ちょっと月さん。話が逸れてます」
身を乗り出して聞いてくる月さんを片手で制しながら注意する。
月さんはこういう話が好きなのかな。
また今度聞いてもらおう。あとお兄ちゃんとの話も聞きたい。
「興奮しちゃってごめんね。えっと、彼氏さんと少しでも長く一緒に過ごしたくて、帰りがおそくなってるんだね?」
「は、はい。そうです。」
「確かにそれは、恥ずかしくて四宮くんや陽子さんには話しずらいね」
月さんは納得したように頷く。
「あとね、最近外でご飯を食べてくることが多くなったって話も聞いたんだけど、そっちの話も聞かせてくれる?一応、友だちに出してもらってるらしいっていうのは聞いてるんだけど、それは、その彼氏さんがお金を出してくれてるってことだよね?」
「はい。その通りです。私はおこずかい制なので毎月使えるお金が限られてて、そしたら優希くん、あっえっと、彼氏が毎回出してくれてます」
「その彼氏さんも星羅ちゃんと同い年だよね?」
月さんの問いかけに対し、そうですと答える。
このあと来る質問もなんとなくわかっていて、どう答えたらいいのか少し悩むが、素直に答えることにする。
「中学生じゃバイトも出来ないし。彼氏さんの家は物凄くお金持ちとかそういう感じ?」
「一般家庭です。1度家に遊びに行った時もお金持ちって感じではなかったですし、彼氏本人も普通の家だって言ってました」
「じゃあ毎回お金を出せるほど持ってるはずがないよね?安いもので済ませたとしても、会う度に出すとなるとなかなかの金額になると思うんだ」
月さんの言う通りである。ここ最近は毎日のように会っていたし、その度に出してもらっている。ご飯だけならまだしも、ゲームセンターや映画、お菓子などのちょっとした買い物でも優希くんが出してくれている。
全て合わせるとなかなか所ではなく、大きな金額になっている。
「私も申し訳ないから出さなくていいって伝えたんですが、俺が出したいから出してるだけで気にしなくていいよって言われるんです」
「うーん・・・、そのお金ってどこから持ってきてるとか聞いたことある?」
「はい、1度だけですけど・・・」
私はそこで黙ってしまった。
私でさえ、もしかしたら危ないお金なのかもと思っているのだ。私よりも年上の月さんがそう思わないわけが無い。
目を合わせて話すのが少し怖くなり、顔を俯かせてしまう。
「彼氏さんはなんて言ってた?」
そんな私に、優しい声色でそう聞いてくる。
きっと私が答えやすいように、威圧的にならないように気をつけているのだろう。
「・・・・・・先輩からもらってるって言ってました」
「先輩?」
「はい。仲のいい先輩から貰ってるらしいです。その先輩も最近知り合った先輩から受け取ってるっていってましたけど」
そこまで伝えると、月さんの反応がなくなり、気になって顔をあげる。
月さんはなにか考えているようで、眉間に皺を寄せて難しい顔をしていた。
「月さん?」
「あっ、ごめんね。えっと、じゃあそのお金がどうやって作ったお金なのかっていうのは分からないんだね?」
「はい」
「どのくらいの金額を受け取ってるとかもわからない?」
「すみません、そこまでは聞いてなくて。でもたぶん相当大きな金額だと思います」
私もわかってはいる。よく分からないお金を使わない方がいいと優希くんに伝えた方がいいのだろう。
でもそうなるとお互いにお金のない中学生なので遊べなくなるかもしれない。
それはいやだと思ってしまう。
月さんは少し悩む様子を見せたあと、私に聞いてきた。
「今の話って、私から四宮くんに話してもいいかな?」
「えっ、それは」
「大丈夫。星羅ちゃんを怒らないでって伝えておくし、星羅ちゃんと四宮くんが話す時は私もそばにいるから」
「それなら。」
私の返事を聞くと、じゃあちょっと話してくるから待っててねと言って、月さんは部屋を出ていった。
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