第45話 兄の心配
story teller ~葛原未来~
「優梨愛ちゃん、今日もよかったよ」
「わたしも気持ちよかったよ」
わたしは自分の体にかかる汚いものをティッシュで拭う。
目的のためなら自分の体も差し出すが、おじさんの相手だけは少し億劫だ。
「こんなおじさんのがいいなんて、優梨愛ちゃんも物好きだな」
「だって若い人はテクニックがないから。それに比べて加藤さんは上手だから、とても気持ちいいもん」
わたしは思ってもないことを口に出しながら、加藤の横に眠る。
加藤はわたしを抱き寄せるとキスをしてくる。
気持ち悪いが我慢しなければ。
わたしの口が解放され、息を我慢していたため、バレないように呼吸を整え、加藤に今回の目的をお願いしてみる。
「あのね、加藤さん。少しやって欲しいことがあるの」
「なんだい?なんでもいってごらん?」
この男は会社の社長で、金だけは持っている。
そのため、大抵のお願いは聞いてくれるのだ。
「1つ部屋を用意して欲しいの。どんな部屋でもいいから」
「お易い御用だよ。すぐに用意するよ。」
そういうと加藤はスマホで部屋を探し出す。
ほんと男ってちょろい。
******
story teller ~四宮太陽~
無事に春風さんへのプレゼントを選び終え、自宅に帰る。
「ただいま」
俺が靴を脱ぎ、1度部屋に戻ろうとするとリビングから母さんがやってくる。
「おかえり。ねぇ、星羅知らない?」
「ん?知らないよ?」
「まだ帰らないのよ」
既に時計は午後9時を周り、外もとっくに暗くなっている。
俺はスマホを確認するも、特に連絡も入っていない。
「母さんにも連絡ないの?」
「連絡も来てないし、メッセージ送っても既読もつかないのよね」
まだ補導される時間ではないとはいえ、普段なら午後8時頃には夕飯に合わせて帰って来ている。
少し心配になり、電話をかけてみるがでない。
「俺がかけてもでないね」
「なにかあったのかしら」
一応もう少し待ってみて、10時を過ぎたら俺が探しに行くことになったが、星羅は9時半頃に帰ってきた。
「ただいま」
「帰ってくるの遅くないか?なにしてたんだ?」
リビングに入ってきた星羅に対し俺がそう聞くと、友だちと遊んでたとのこと。
「遊ぶのはいいけど、母さんも心配してたんだからあんまり遅くなるなよ」
「わかってるよ」
星羅は不機嫌そうにそういう。
母さんが台所から星羅に声をかける。
「ご飯温めてたべちゃいなさい」
「ご飯は食べてきたからいいよ」
「食べてきたってどこで食べてきたの?」
「友だちと外で食べた」
そういうとリビングを出ていく。
部屋に行ったのだろう。
横山の話もあり、心配にはなるが、無事に帰ってきたので、一先ず安心だ。
「あの子、最近外でご飯食べてくること多いんだけど、お金はどうしてるのかしら」
ここ最近は春風さんたちと遊びに行くことが増えたので出費が激しかったりするが、俺は基本的にお金を使わない。
なので必要であれば、単身赴任中の父さんに連絡し、用途を伝えて、自分名義の口座に振り込んでもらえるが、星羅は結構金遣いが荒い。その為星羅のみおこずかい制なのである。
本人は俺と同じようにして欲しいと言っていたが、そんなことをすると散財するのは目に見えている。
「一応俺からも確認してみるよ、なるべく早く帰ってこいっても伝えとくし、母さんは心配しないで」
「ありがとう。私から色々言うよりは太陽から言った方が聞くかもね。あんたたち仲良いし」
俺はリビングを出て、2階に上がり、星羅の部屋の扉をノックする。
「俺だけど、ちょっといいか?」
「なに?」
部屋の中から声が聞こえ、その返事を入っていいととり、扉を開けて部屋に入る。
星羅はベッドに寝っ転がりスマホをいじっている。
「最近外でご飯済ませることが多いみたいだけど、お金はどうしてるんだ?」
「友だちが出してくれる」
「出してくれるって、毎回だしてもらってるのか?」
「そうだよ。優しいし」
だとしても毎回出してもらうのは違うだろと思う。
俺は葛原の件よりも、他の事が心配になる。
「お前もしかして、その友だちいじめてたり、無理やり出させたりしてないよな?」
俺の言葉に不機嫌を隠すことなく星羅は返答してくる。
「は?そんなことしてないし、相手が出すっていってだしてくれてるんだからいいでしょ。そもそも、もしそうだったとしてもお兄ちゃんには関係ないし」
「いや、もしそういうことしてたら関係あるだろ。こっちは心配してるんだ。帰りも遅いし」
もう出てってよとこちらを見ることも無くいってくる。
「いいか、外で食べるにしても母さんか俺にちゃんと連絡しろ。あと早く帰ってくること。イジメとかそういうのは絶対するなよ」
「もう、わかったってば。早く出てってよ!」
怒り気味にそう言ってくるので俺は仕方なく部屋を出る。
ほんとに分かってるのかな。
あんまり口出ししたくないが、変なことしてなければいいけど。
俺はそう思いながら自室に入った。
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