第44話 プレゼント選び

story teller ~春風月~


「俺はこれにするから、春風さんはそっちにしなよ」


「じゃあそうする!ありがとう!」


 某有名コーヒー屋さんに新作が出たということで、私たちは街に繰り出していた。

 2種類出ている新作のうち、どちらにしようか迷っていたが、四宮くんの提案でそれぞれ片方ずつ頼むことにした。

 店員さんに注文し、横に逸れて商品を待つ。


「俺このお店初めてなんだよね」


「そうなの?」


「うん、なんかオシャレだし、俺みたいなのが入っていいのかなって」


「別に誰でも好きに入っていいんだよ」


「でも1人では入りにくいし、堅治と2人で来る訳にもいかないし」


 それを聞いて、四宮くんと秋川くんが2人でこのお店に入って、ドリンクを飲んでるところを想像して可愛いと思ってしまう。

 きっと2人ともガチガチに緊張しながら飲んでいるに違いない。


「なんで笑うの」


「えっ、笑ってた?」


 想像して無意識に笑ってしまっていたらしい、失礼だったかもしれない。

 2人で話していると、店員さんが完成したドリンクを渡してくれる。

 ありがとうございますと伝えてからドリンクを受け取り、窓際の席に座る。


「あっ美味しい」


 四宮くんはいただきますと1口飲んでから感想を口にする。


「見た目はめちゃくちゃ甘そうだなと思ったけど、意外とビターな味で結構好きかも」


「それならよかった。私のも美味しいよ」


 今回頼んだ商品は期間限定だが、気に入ってくれたようでよかった。それだけで誘ったかいがある。


「春風さんのも少し気になるなー。飲んだら頼んでみようかな。でもお腹冷えそうだな」


「1口飲んでみる?」


 うーんと悩む四宮くんに対して、私はよく考えずに思ったことを口にする。言った後にとんでもない事を言ってしまったと気づく。


「えっ、その、いいの?」


「う、うん・・・いいよ?」


 四宮くんは気づいてないのか、ありがとうと言うと私からドリンクを受け取り1口飲む。


「うん、これも美味しいね!」


「それならよかった」


「俺のも飲んでみる?」


「へっ!?・・・飲んでいいの?」


「うん、全然いいよ?気にしないし」


 気にしないと言いながらも、少し赤くなっている気がする。四宮くんも関節キスすることに気づいたのだろう。


「じゃ、じゃあ少し貰うね」


 そういってドリンクを受け取り、1口飲む。


「ありがとう、美味しいね」


 ドリンクを四宮くんに返してから顔を下に向ける。

 正直、恥ずかしさでドリンクの味は分からなかった。


 ******


story teller ~四宮太陽~


「四宮、いいの見つかった?」


「うーん、ほんとに残るものでいいのかな?」


 春風さんの誕生日の9月19日が近づき、俺たちはショッピングモールに、プレゼントを選びに来ていた。


 1度みんなで帰るふりをして再度集まったので、春風さんだけがいない。

 ショッピングモールに着いてからすぐに、冬草さんは堅治を連れて2人で他のお店に入っていった。

 アタックするとは言っていたが、最近の冬草さんはめちゃくちゃ積極的ですごいと思う。


「ねぇ夏木さん。春風さんの欲しいものとかなにか聞いてないの?」


「月って物欲ないからなー。欲しいものがあっても大抵自分で買っちゃうんだよな」


 俺は無難にお菓子とかがいいと言ったが、夏木さんに却下されてしまっていたので、悩んでいた。

 女の子への贈り物なんて久しぶりなので、わからない。

 変に気合いが入ったものをプレゼントして引かれても嫌だ。

 悩みながら、店内を歩き、一つ一つ見ていく。


「ワタシはこれにしよ」


 夏木さんはハンドクリームを手に取る。


「俺もそれ迷ってたのに」


「残念、早い者勝ちでーす」


 夏木さんに先を越され、余計に悩む。

 使い勝手のいいものの方が貰って嬉しいかもしれない。


「別に四宮のあげたいものあげればいいと思うけど?」


「でも、それで引かれたりしたらやだし」


「月って基本、人から貰ったものは何でも喜んでくれるよ?ワタシが悩んでたのは、月が貰って嬉しいかどうかじゃなくて、単にワタシがあげたいものが多すぎてだし」


「うーん、そう言われても」


 夏木さんに返答しながら棚を見ていると、三日月の飾りが着いたネックレスを見つける。

 春風さんの下の名前も月だし、飾りがキラキラしていて綺麗だと思った。

 俺がそのネックレスを手に取り、見ていると、後ろから夏木さんが覗き込んできた。


「おっ、いいじゃん。月に似合いそうだし」


「でも、こんなの貰って重くないかな?」


「さっきも言ったけど、月なら喜んでくれるよ。特に四宮からなら」


 それってどういう意味?と聞くも、さぁねとはぐらかされる。

 夏木さんもいいと思うって言ってたし、これにしよう。


 俺はそのネックレスをレジに持っていき、購入する。

 春風さん喜んでくれるといいな。

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