第43話 お願い
story teller ~寄宮花江~
「わざわざ学校を休んでまで、太陽くんの家まで行ったんですか?」
「うん、行ったよ。」
「まだ噂程度なのに」
「噂になる事自体が問題なんだよ。そもそもなんもなければ噂になる事もないしね」
架流さんはそう言うが、逆に太陽くんを不安にさせてしまう可能性もあるのだ。
「そもそも、なぜそこまでするんですか?1回会っただけなのに」
「1回会ったからだよ。僕は彼の事好きだし。あっ、人としてね?」
僕がほんとに好きなのは花江ちゃんだけだよと言っているが聞き流す。
私が黙っているからか、彼は続けて話す。
「納得してない顔してるね。まぁ理由があるとしたら、友だちの為に行動できる人だからかな。僕は葛原に関わってから同級生の友だちはいなくなっちゃったから友だちが欲しいんだよ。太陽くんには言わないでね、恥ずかしいから」
彼はわたくしたちよりも1つ上の高校2年生だ。
葛原に関わり、サッカー部のエースだったにも関わらず女性関係で部を追い出され、ある事ない事噂になり、同級生から嫌われているらしい。
「ま、友だちがいないおかげて花江ちゃんに毎日会えるからいいけどね。」
「わたくしとしては門限までの短い時間をあなた以外とも過ごしたいのですが」
「そう言いつつ毎日会ってくれるじゃん」
拒絶するように言うが、わたくしもこの人の隣は居心地がいいのは認める。
葛原を通して知り合わなければもっといい友人になれていただろう。
******
story teller ~四宮太陽~
横山架流に会った次の日の昼休み。俺たちはいつもの中庭で昼食を食べていた。
「あのさ、話そうか迷ってたんだけど、昨日、横山架流に会った。」
俺の言葉を聞き、堅治が少し固まる。
「なにかされたのか?」
「いや、忠告に来たって言ってた」
「忠告?」
春風さんが口に入れたご飯を飲み込み聞いてくる。
俺は昨日の横山架流と話した内容をみんなに伝える。
「また葛原か」
夏木さんはその名前を聞いて少し怒っているように見える。
「星羅ちゃんになにかあったらやだな」
「その・・・四宮くんの妹さんに・・・ですか」
星羅にあった事がある春風さんと夏木さんは心配そうにしているが、冬草さんはまだ会ったことがないのでピンと来ないようである。
「横山架流もまだそうと決まったわけじゃない的なこと言ってたけど、警戒はしといた方がいいって」
「確かにな。あいつの事だからやりかねない」
堅治は俺以外で唯一葛原の事を知っているから、3人よりも不安になっているのかもしれない。
「みんなに話したのは、そんな事があったって言う報告と、少しお願いがあって」
「お願い?」
「なにか出来ることある?」
「うん、今は俺が注意して、星羅の様子を見ることしか出来ないけど、もしなにかあったら協力して欲しい。」
俺はそういうと頭を下げる。
「もし、葛原が星羅になにかしてきた時、俺だけだときっと後手に回る。なによりも葛原が出てきた時に俺は萎縮して何も出来なくなる」
俺は頭を下げたまま続けた。
すると春風さんから頭を上げてと言われる。
「もちろん協力するよ!そんなのお願いされなくても勝手に協力するに決まってる!」
「これ以上その葛原って人になにもさせないし」
「四宮くんの妹さんには会ったことないですが、四宮くんの為ならなんでもしますよ」
「当たり前だろ」
4人は俺に笑顔でそう言ってくれる。
この人たちが友だちでよかったと心から思う。
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