第60話 バイク
story teller ~四宮太陽~
俺はすぐに通話に出る。
「もしもし」
「こんばんわ、太陽くん。ちょっと報告があってね」
「なんですか、今急いでるんです」
「なんとなくそうじゃないかと思ってた」
そういうと横山架流は話し始めた。
まとめるとこういうことらしい。
中学生グループが、女の子とHが出来て、更にお金が貰えるという事で、その女の子が待つ部屋に向かっているらしい。
情報源は中学生グループの内の1人。偶然にも横山架流の後輩で、直前で怖くなり逃げ出し、横山架流に相談したらしい。
横山架流は、その相談してきた後輩から貰った、女の子の写真を俺に送ってくれた。
複数人写ってるうちの真ん中。間違いなく星羅だ。
「星羅。妹です」
「やっぱりか。花江ちゃんにも確認したら、直接会ったのは数回しかないけど、たぶんそうだって言ってたからね」
「架流さん。その部屋の場所って知ってますか?」
俺の問いかけに、地図を送るといって、すぐに送ってくれた。
「僕もすぐに向かうからさ。太陽くんも気をつけて来て」
「ありがとうございます」
俺はそう伝えて電話を切る。
地図で確認すると、ここから電車に乗らないといけない場所だ。遠すぎる。
堅治に地図を送り、ここに星羅がいるから向かって欲しいとメッセージを送る。
今いる場所から駅までも遠い、タクシーを使おうかと思ったが、こういう時に限って通らない。
焦りと不安だけが募っていく。
そして、またスマホが鳴る。
今度は善夜だ。ごめん、今は構っていられない。
俺は電話を無視して駅まで走り出すが、しつこく電話してくる。
少しイラッとしながら通話に応答する。
「ごめん、今急いでるから!」
繋がった瞬間そう伝えて、電話を切ろうとしたが通話口からはバタバタバタと風の音が聞こえた事で、少し戸惑う。
なんなんだと思っていると、風の音に混ざって、善夜の声が聞こえた。
「急いでるのは知ってる!グループチャットに送ってきた場所に星羅ちゃんがいるんでしょ!」
俺が堅治に送ったと思っていた地図とメッセージはグループチャットに送っていたらしい。
急いでいて確認してなかった。
「そうだけど!っていうか風の音がうるさい!」
「ごめん!急いでるから!今いる場所を教えて!」
「俺の場所を聞いてどうする!」
「ボクなら誰よりも早く、星羅ちゃんの場所に太陽を連れて行ける!」
______
今いる場所を伝え、善夜を待っていると、ブブブンという低い音が近づいてくる。
その音はどんどん近づいてきて、俺の目の前で止まる。
善夜はバイクで俺を迎えに来たのだ。
「バイク!?」
「夏休みに免許取ったんだよ。役に立つとは思わなかったけど」
善夜は驚く俺にヘルメットを渡し、後ろに乗れと合図してくる。
俺はヘルメットを被り、バイクの後ろに跨る。
「本当は免許取って1年経ってからじゃないと、2人乗りはダメなんだけどね。今はそんな事言ってられないから見て見ぬふりしてて」
バイクに装着された、スマホホルダーにスマホを装着し、地図を表示すると、アクセルを回す。
全身にすごい力がかかり、一瞬飛ばされそうになるが、なんとか耐える。
バイクには初めて乗るから、法定速度を守っているかはわからないが、すごく早い。そして運転がめちゃくちゃ上手い。天性の才能なのだろうか。
俺は飛ばされないように、善夜にしがみつく。
男が男にしがみついている姿はものすごくダサいかもしれないが、こうでもしないと振り落とされそうなのだ。
そうして必死にしがみついていると、少しずつスピードが遅くなり、気がつくと目的地に着いていた。
俺は急いでバイクを降り、すぐにアパートの3階に上がる。
302号室の前につくと、ドアノブを回すが、鍵がかかっていて開かない。
ドアを叩き、声をかける。
「星羅!俺だ!開けてくれ!」
すると中からお兄ちゃん?と声が聞こえ、鍵が開く。
俺が急いでドアを開くと、驚いた顔の星羅が立っていた。
俺は星羅を抱きしめる。
「お兄ちゃん!?ちょ、痛いから!離して!」
背中をバシバシと叩かれるが気にしない。
無事でよかった。本当によかった。
______
※この物語はフィクションです。
車両を運転する時は、道路交通法に従い、正しく運転しましょう。
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