第91話 ボーリング
story teller ~春風月~
「春風さんって、四宮くんと付き合ってるの?」
「うん付き合ってるよ?どうして?」
「だって最近、毎日一緒に登校してるでしょ?今日なんて手も繋いでたし!」
隣の席の太陽くんは、登校後すぐにトイレに行ってしまった。それをいい事に、クラスの女の子たちが私を囲んで色々と聞いてくる。
別に隠すことでもないので、素直に話しているが、太陽くんは嫌がらないかなと少し考える。
「やっぱり四宮くんからアタックされたの?」
「えっと、私は最初から好きだったよ?告白は太陽くんからだったけど」
私の返答に、きゃーと黄色い声があがる。
なんだか、人に話すのは恥ずかしい。
「学年のアイドルが、四宮くんと付き合うことになるなんて、四宮くんもやるねぇ」
「でも四宮くんって優しいし、顔もカッコイイほうだよね」
その言葉に私は少し反応してしまう。
それを察したのか、かっこいいと言った女の子が否定してくる。
「別に四宮くんを狙ってるわけじゃないから安心してね!狙ってたとしても、春風さん相手じゃ無理だし」
そんな事はないと思うが、狙ってないのなら安心だ。
私はほっと安堵する。
「それで、どこまで進んだの?」
「どこまでってなにが?」
質問の意味がわからず、聞き返すと、私の耳に近づき、小声で聞いてくる。
「キスはした?それとももう最後までしたの?」
私は意味を理解し、顔が熱くなるのを感じる。
「ま、まだだよ!キスもまだ!」
「顔赤くなってる。可愛い〜」
「さっさとキスしちゃいなよ。春風さんならそのまま押し倒して最後までねだっても四宮くんも嫌がらないよ」
「な、何言ってるの!?そんな事しないよ!」
そう否定するが、したくない訳では無い。
まだ付き合って1ヶ月程なので、最後までは早いかもしれないが、キスはそろそろしたい。
というか、星羅ちゃんが部屋に入ってこなければできたタイミングはあったのだ。
その時のことを思い出し、私はまた顔が熱くなるのだった。
******
story teller ~四宮太陽~
終業式が終わり、冬休みに入る。
終業式の日は午前中だけの登校なので、昼過ぎには帰ることが出来る。
俺たちは中庭に集まり、これから遊びに行く予定を立てていた。
「モールはもう行き過ぎたし、他にどこか行く所あるか?」
「カラオケ・・・もよく行きますし」
「そうだ!ボーリングなんてどう?」
俺たちがどこに行くか迷っていると、善夜は今までにみんなで行ったことのない場所を提案してくる。
「いいかもね。ボーリングなら月も涼も彼氏とイチャつく事も無いだろうし」
夏木さんがそういうと、月と冬草さんはイチャついてませんと否定している。
自分で言うのもなんだけど、正直、俺と月、堅治と冬草さんはだいぶ人前でもイチャついてると思う。
特に、月は最近、遠慮なくくっついてくる。
「じゃあボーリング場に行きますか。ここから1番近いのは・・・」
夏木さんはボーリングが好きなのか、嬉しそうにスマホでボーリング場を調べている。
その横で、善夜も一緒になって覗き込み、ここはどう?とか話をしている。
なんだかんだで、2人もいい雰囲気なのかもしれない。
______
先程の予想は当たり、夏木さんはボーリングが好きなようで、よく家族で来ているらしい。
もちろん実力もあり、今この場にいる誰よりも高いスコアを叩き出している。
投げる度に、良くてストライク、悪くても7本前後は必ず倒している。
それに引き換え、俺と善夜、それから月は全然ダメで、ストライクが1度もとれない。
醜い最下位争いをしている。
俺が投げる番になり、自分のボールを取る。
そのままレーンに立ち、形だけは上手い人の真似をする。
すると、後ろから月が声をかけてきた。
「太陽くん。ここは彼女に勝ちを譲った方がいいと思うよ。ガターを希望します!」
既に月は全てのフレームを投げ終えており、俺が1本でも倒せば、最下位は月になる。
「月、譲りたいのは山々だけど、俺も情けない所を見せたくないんだ!」
既に情けない所を見せているが、せめて最下位は避けたい。
そう思い、ボールを投げる。
手から離れたボールは宙に浮き、ゴンッと鈍い音を立ててレーンをゆっくり転がっていく。
少しずつ左にズレていき、ピンのギリギリでガターに落ちる。
くそ、もう少しだったのに。
「太陽くん!ナイスだよ!」
「ナイスじゃないから!」
俺は月の発言に言い返し、次こそはと戻ってきたボールを手に取る。
そのまま再度レーンに立ち、ボールを投げる。
今度は離すタイミングがよかったのか、ボールが宙を浮かずに、レーンの上を真っ直ぐ進む。
そして、1番前のピンに当たったかと思うと、周りのピンも倒し、スコアボードにストライクの文字が浮かび上がる。
本日初のストライクが出たことで、俺のテンションは最高に上がる。
「やった!やっとストライク出た!」
「おめでとう太陽。凄いじゃん」
堅治は俺と一緒に盛り上がってくれるが、最下位争いをしていた、月と善夜は信じられないものを見たような顔になっている。
2人に対してドヤ顔をすると、睨まれた。
怖い。
その後もみんなで何ゲームか遊び、楽しむことができた。
俺は、次来る時までに練習を重ねようと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます