第92話 クリスマスイブ 1
story teller ~四宮太陽~
クリスマス当日は、それぞれカップルで過ごす事となり、前日のイブはみんなでクリスマスパーティを行うこととなった。
場所は月の家、付き合ってからは初めて来るので少し緊張する。
インターホンを押し、中に通されると、玄関で月が迎えてくれた。
家の中だからか、白のTシャツに、レザーのミニスカートを履いていて寒そうに見える。似合ってるけど。
「いらっしゃい!太陽くん!みんな来てるよ!」
どうやら俺が1番最後らしい。
俺が玄関で靴を脱ぐと、月は突然俺を抱きしめてくる。
最近の月は急にくっついてきたり、甘えてきたりするので少し慣れてきたが、それでもドキドキする。
「どうしたの?突然」
「リビングに行くとみんないるから、今のうちにと思って」
なるほど。可愛いな。
俺は月の背中に腕を回し、思ったよりも華奢な体を抱きしめる。
すると俺の胸の中で、えへへと笑いながら、頬をスリスリして甘えてくる。
なにこれ、やばいんだけど。
俺は必死に理性を保ち、そろそろ行こうと言うと、月は少し物足りなさそうにしていたが、大人しく離れてくれた。
心臓が危険なくらい脈を打っている。
俺たちがリビングに入ると、みんなが待っていた。
何してたんだよと言われるが、そんなの言えるわけない。
既にテーブルには、月のお母さん、桜さんが用意してくれた料理が並んでいて、月の誕生日の時同様に凄い豪華だ。
俺は月に案内された席に座ると、月も俺の隣に座る。
そして俺が座った位置から、リビングの隣。襖が開いているその先に畳の部屋が見えるのだが、そこにヤクザ風の男の人が座っており、こっちを見ている。
えっあれ誰?なんかずっと俺の事見てるけど、なに怖い。
俺はその人から目が離せず、その人も俺を凝視してくる。
俺は視線はそのままに、隣に座る月の肩を叩く。
「月?あの人は?」
「あっ紹介してなかった。うちのお父さんだよ」
「お父さん!?」
俺はビックリして大きな声を出してしまう。
その声に驚いたのか、その場の全員が少し飛び跳ねる。
「ちょっと、びっくりさせないでよ」
「なんだよ太陽。大丈夫か?」
夏木さんと堅治が俺に向かってなにか言っているが、俺は月のお父さんに意識を集中しているため、なにも言うことが出来ない。
動かない俺を月が、ほらおいでと引っ張り、畳の部屋の前まで連れていく。
「お父さん、この人が私の彼氏の四宮太陽くんだよ」
「は、初めまして、四宮太陽といいます。よろしくお願いします」
俺は頭を下げて挨拶するも、返事がない、すぐ挨拶に来なかった事を怒っているのかと不安になり、頭を上げることが出来ない。
すると月が近づき、お父さん?と何度か呼ぶか、それにも反応が無い様子。
恐る恐る顔をあげると、月がその人の肩をポンと叩く。
「この人が私のお父さんで、春風紅葉だよ。緊張で固まっちゃってるみたい」
固まってる?どういう事だ?
俺は月の言ってる意味がわからず、頭に疑問が浮かぶ。
すると桜さんがやって来て、気にしないでと言う。
「この人小心者だから、四宮くんを見て固まっちゃったのよ。ほっといたらそのうち動くから、みんなとご飯たべてきていいわよ」
桜さんの言葉に従うように、月が俺を先程の席まで引っ張っていく。
えっ、あの人ほんとに動かないんだけど、ほっといていいの?
俺の心を読んだかのように、堅治が教えてくれる。
「俺と善夜もさっき挨拶したら、同じように固まってたんだけど、少ししたら動き出したから大丈夫だと思うぜ」
それなら大丈夫なのか・・・?
俺の不安をよそに、みんなはご飯を食べ始める。
桜さんはケーキもあるわよ〜と冷蔵庫からケーキを取り出して持ってきてくれる。
俺は、少し離れた場所から感じる視線を浴びながら、ご飯を食べた。
美味しいはずなのに、味がしなかった。
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