第93話 クリスマスイブ 2
story teller ~四宮太陽~
「さっきはすまなかった。改めまして、月の父の春風紅葉です」
「いえ、お気になさらず。四宮太陽といいます。よろしくお願いします」
桜さんの言う通り、少しすると紅葉さんは動き出し、そのタイミングで改めてお互いに自己紹介をする。
「それで、月とお付き合いしているそうだが」
「あっ、はい。お付き合いさせて頂いております」
「そうか、娘をよろしく頼む」
なにか厳しいことを言われると思ったが、そんな事もなく、少しほっとする。
「お父さん!それじゃ結婚するみたいじゃん!やめてよ!」
「なんだ、結婚しないのか?」
「するけど・・・ってそうじゃなくて!」
月が紅葉さんの言葉を焦って注意する。
今サラッとなにか言ってた気がするが、意識すると緊張してしまうので、気にしないようにしよう。
「じゃあお父さん、出かけましょうか」
「そうだな。私たちが居ても邪魔なだけだし、そろそろ行くか」
桜さんに呼ばれ、紅葉さんは立ち上がる。
俺たちに気を使って2人で出かけるらしい。
みんなで再度挨拶をすませ、2人を見送る。
残された俺たちは、雑談しながら途中だった食事を進める。
「善夜と夏木さんは明日なにするんだ?」
堅治が善夜と夏木さんに話を振る。
2人はそれぞれ自分のお皿に食事を取り分けながら、答える。
「ボクは特に予定はないし、家にいるかな?」
「ワタシも家にいるかも」
もしかしたら2人も遊ぶのかもと思ったが、そんな約束はしてないらしく、暇を潰す予定らしい。
俺と同じことを思ったのか、2人の返事を聞いて、堅治が提案する。
「2人で遊びにいけばいいんじゃないか?」
「そんな事言われても、ワタシと車谷は付き合ってないし、カップルだらけの中出かけても虚しくなるだけじゃん」
「そ、そうだよ、クリスマスに一緒にってハードル高いよ」
堅治の提案に、善夜は顔を輝かせたが、夏木さんの言葉を聞いてしゅんとなる。
頑張れ善夜。
「いい案だとおもったんだけどな」
「堅治くん。2人には2人のペースがあるんですよ」
「涼、話聞いてた?付き合ってないし、その予定もないから」
夏木さんが遠回しに善夜を振っている。夏木さんはそんなつもりないかもしれないけど、善夜がものすごく悲しそうな顔してる。あとで慰める事にしよう。
「太陽くん、実はね、お母さんたちからクリスマスプレゼントでゲームを貰ったの。みんなで出来るパーティゲームなんだけどね、部屋から取ってきてもいい?」
月は俺に確認をとり、いいよというとパタパタとリビングから出ていく。
ゲームを買って貰えたのが嬉しいのか、めちゃくちゃ笑顔だった。
部屋から戻ってきた月は、両手でしっかりとゲームの箱を持ち、じゃーん!とみんなに見せている。
子供みたいで微笑ましい。
「これみんなでやろ!ちゃんと全員分のコントローラーも買ってもらったんだよ!いいでしょ!」
めちゃくちゃ嬉しそうな顔をしている。
訂正しよう。子供みたいじゃない、子供だ。そんなところも可愛いけど。
リビングのテレビにコードを繋ぎ、ゲーム機をセットする。
月はみんなに色とりどりのコントローラーを渡していき、ゲームを起動する。
赤い帽子の人が出てくるパーティゲームが始まり、キャラクター選択をする。
俺と堅治の選んだキャラが被り、ジャンケン大会が始まったり、冬草さんはゲームが苦手で勝てなかったり、月が俺ばっかり狙ってきたりと、みんなでワイワイしながら一通りゲームを楽しんだ。
「みんなでやると楽しいね!太陽くんのお家でやったゲームも楽しいけど、あれとは違った楽しさだね」
ほんとに楽しかったようで、満足した顔をしている。
またやろうねと伝えると、太陽くんのお家でもやりたいと言ってくる。
「もちろん、うちで良ければいつでもおいでよ」
とは言っても、学校の時は毎朝来ているから今更なのだが。
「そろそろプレゼント交換する?」
夏木さんが俺たちに向かって聞いてくるので、そうしようかと返し、用意したプレゼントを手に取る。
それぞれのプレゼントに番号を振り、ルーレットアプリで番号をセットし、順番に回していく。
俺のプレゼントは2番で、月のプレゼントは1番。
どうせなら月のプレゼントが欲しい。
まずは月がルーレットを回す。
スタートと押し、針が回ってるのを何度か見てから、ストップを押す。
針はゆっくり速度を落とし、5番に止まる。
5番は冬草さんからのプレゼントだ。
「涼からのだ!」
全員プレゼントが行き渡ってから、同時に開けようとなっているので、月は中身が気になってソワソワしている様子だ。
その後、みんなも順番にルーレットを回し。
それぞれプレゼントを受け取る。
俺は善夜からのプレゼントだった。
ちなみに、俺のプレゼントは夏木さんが受け取り、月のプレゼントは堅治が受け取っている。
俺たちはせーのでラッピングを剥がしていく。
俺の受け取ったプレゼントはモバイルバッテリーだった。
これは素直に嬉しい。実用性があるので普段使いが出来る。
善夜にありがとうと伝えると、安物だけど使ってと言っていた。
月が受け取ったのは、男女兼用のストライプ柄のマフラーだった。
開けてから早速首に巻いている。
モコモコして暖かそうだ。
俺からのプレゼントは有名ブランド店のチョコレートの詰め合わせだ。
夏木さんがみんなに配って食べる事になった。
自分があげたプレゼントを自分で食べるのは、少し変な気分だが、口に入れた瞬間に味が広がり、すごく美味しい。
月からは、敷くタイプの電気毛布だった。
なにそれ、めちゃくちゃ欲しい。
普通に自分用で今度買おう。
こんな感じでみんなであれもいいなこれもいいなと盛り上がりながら、楽しい時間を過ごした。
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