第2話 いつもの通学路

story teller ~春風月~


緊張から解放された私は、帰宅後すぐベッドへダイブしてそのまま寝てしまっていたらしい。

 電気を付けずに寝てしまっていたので、夕日が沈んだ部屋は薄暗くなっていた。

 壁のスイッチを押し電気を付けると、光にまだ慣れていない目を少し細めながら放課後の事を思い出す。


 帰ったら連絡するって言ったのに寝ちゃってた。

 今からメッセージ送っても迷惑じゃないよね、、、?


 部屋の時計の針は午後8時過ぎを指していた。

 高校生が寝るにはまだ早い時間だが、晩御飯やお風呂などで忙しいかもしれない。

 でもまたあとでっていってくれたし、大丈夫だよね?

 私はそう思い、メッセージアプリを立ち上げ、今日追加した男の子のトーク画面を開く。


('MOON' こんばんわ、今日は連絡先交換してくれてありがとう!よろしくね)


 帰りながら考えていた文を打ち込み、少し息を整えてから、心の中で 送っちゃえ! と勢いで送信ボタンを押す。


 送っちゃった。返信すぐ来るかな。


 期待と不安でいっぱいになる胸を落ち着かせながら、友だちやクラスメイトから届いていたメッセージに返信していく。

 四宮くんにメッセージを送ってから5分ほど経つが、未だ返信は来ない。


 時間も時間だし、家の事とか勉強とかで忙しいかもしれない。


 そう言い聞かせ、時間的に既に出来ているであろう晩御飯を食べるために私は部屋を出る。

 もちろんいつ返信がきてもいいようにスマホを片手に。


 ******


story teller ~四宮太陽~


 彼女、春風月は入学当初からみんなの注目の的だ。

 整った美人よりの顔立ち、肩より少し長い(ミディアムヘアというのだろうか)綺麗で手入れの行き届いた栗色の髪の毛。モデルなのでは?と錯覚するようなスタイル。

 そんな彼女は学年で1番可愛いとすぐに有名になった。

 人間関係も良好なようで、既にうちのクラスの中心になっていた。

 基本的には仲のいい数名と一緒にいるところをよく見るが、誰にでも気さくにあいさつをしたり、話しかけている。

 授業中に寝ているところを、先生に起こされたりしているが、サボったりしている訳ではないので、先生たちからの評判もいいらしい。

 噂によると入学してから1ヶ月しか経たないにも関わらず、既に10人前後から告白されたらしい。

 まぁ告白した人達は全員玉砕しているっぽいが。


 俺は朝の通学路を歩きながら、春風さんと昨日メッセージしたことを思い出していた。

 寝る直前だったこともあり、やりとり自体はすぐに終わったが、その事実が嬉しくもあり、少し夢の様にも感じている。

 春風さんの事が異性として好きとかではないものの、俺も男なので、学年1可愛いと言われている女の子とメッセージのやりとりが出来るのは素直に嬉しい。


 まぁ朝起きて、おはよう とメッセージが来てないかなーとか少し期待していたわけだが、世の中そんな都合よくできていない。


 少し残念に思いながら、自分にそう言い聞かせていると、既に学校の正門前まで来ていた。

 そのまま正門をくぐりると、後ろから声をかけられる。


「お、おはよ!四宮くん」


 振り向くとそこには昨日メッセージでやりとりしていた女の子、春風さんがいた。


「お、はよ、春風さん。」


 つい今さっきまで春風さんの事を考えていたので急に本人から声をかけられ、声がどもりそうになってしまった。

 不自然にならないように続けたけどおかしくないよな?


「おはよ、改めて昨日はありがとうね!」


「こちらこそ。今日は1人なんだ?」


「うん、光から寝坊したから先に行っててって連絡が来てたんだ。涼は家が逆方向だからいつも別々に来てるけど」


 光というのは俺と春風さんのクラスメイトで春風さんの親友の夏木光なつきひかりさんの事だ。

 春風さんと夏木さんは中学からの付き合いらしい。

 基本的に春風さんと夏木さんはもう1人の友だち、冬草涼ふゆくさすずさんと3人で一緒に居ることが多い。


「あ、あのね、良かったら教室まで一緒にいこ?」


「えっ、あっ、う、うん、いいよ」


 既に正門を通り過ぎてはいるが、なんとなくそのまま一緒に教室まで行くのかな?と期待していた為に、改めて言われて返事がおかしくなってしまった。


「えへへ、ありがとう!」


 俺の返事を聞いて嬉しそうに春風さんが笑う。

 その顔が少し赤くなっているように見えるが、今日は朝から日差しが強いのできっと暑さのせいだろう。

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