第243話 名案

story teller ~春風月~


 いつもなら太陽くんや秋川くん、車谷くんも一緒に昼食を取るのだが、今日は別々。

 と言うのも、穂乃果ちゃんと純奈ちゃんから、八代さんの事で話があるとの事なので、たまには女子会をしたいと太陽くんに嘘をついて、秋川くんたちに連れ出して貰った。


「なるほどね。じゃあ内海と八代を会わせるわけにはいかないか」


「でも穂乃果ちゃんが代わりにと言っても、そんなに上手くいくのでしょうか?そもそも返事が返ってこないことには始まりませんし」


「私が獅子王くんから聞いた話から思うに、たぶん返事は来ないと思う」


 穂乃果ちゃんと純奈ちゃんから昨日の話を聞いて、純奈ちゃんがもう会えないと言うのは納得したが、涼のいうように、穂乃果ちゃんから八代さんにDMを送ったとして、返事が来ないことには意味がないし、恐らく返事は返ってこないはずだ。


「って事はもう、双子の弟の方を当たるしかないかな?」


 光の意見に賛成である。私たちと同級生で、八代という苗字は1人しか知らない。明文と武文、言われてみれば名前も文繋がりで似ているし、兄弟だと思う。


「でも、八代くんとは同じクラスだから、話を聞こうとすると太陽くんに勘づかれちゃわないかな?」


 そう、同じクラスだからこそ、私と光が話を聞くのが早いのだが、逆を言うと、同じクラスだからこそ、太陽くんがいて聞づらいのだ。


「四宮にバレないように接触か・・・」


「私がタイミングを見て話を聞いてみましょうか?私なら2組ですし、移動教室の時とかに堅治くんと一緒に八代くんを捕まえれば問題ないかもしれません」


「・・・・・・涼さん、ちょっと待ってください」


 涼の提案を穂乃果ちゃんが止める。いい案だと思ったが、なにかダメな部分でもあったのかな?


「今は八代・・・、弟さんに接触するのは控えた方がよくないですか?涼さんに話しかけられたとか弟さんが教室で話題に出した時点で太陽先輩にバレるリスクもありますし、もし接触するなら、太陽先輩に全てを話してからか、もしくは穴原さんを襲ったのがお兄さんの方なのか、それとも弟さんの方なのか、それがわかってからがいい気がします」


 確かにとは思う。けれども、太陽くんに全てを話してしまうと、今まで隠れてコソコソしていたのが無駄になるし、穴原さんを襲ったのがどっちか確かめるために接触したいのにそれがわかってから接触となると堂々巡りになってしまう。


 なんだか全然上手くいかず、どんよりとした空気が辺りを包み込む。


 そんな空気の中、あっ!と声を上げたのは純奈ちゃんだった。


「それならさ、文化祭の時に八代弟から話を聞けばいいんじゃないか?」


「文化祭で?」


「そう!文化祭は一般の人も入場出来るし、その場のノリとテンションで話しかけたフリをすれば怪しまれないんじゃないか?それに、八代弟が葛原と繋がってるならなにかアクションを起こしてくるかもしれない。でもあたしたちの内の誰かが八代弟を捕まえとけばそれも阻止できるかも!」


 名案だ!と思った。文化祭の雰囲気の中でなら、誰が誰かに話しかけても怪しまれることはほとんどない。


 それに、もしかしたら葛原さんが訪れるかもしれないし、八代くんと繋がってたら2人が接触する可能性もある。


 文化祭まで後3週間。その間、他に出来ることも探してみよう。

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